【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】

◆今年は1084頭が上場予定

 北半球は、夏から秋にかけてが1歳馬セールの開催時期で、秋が深まってくると、ミックスセールの開催時期となる。

 ミックスセールとは、現役馬、現役上がりの牝馬、繁殖牝馬、離乳の終わった当歳馬たちが上場される市場で、これらが混在しているマーケットもあれば、現役馬なら現役馬だけを、牝馬ならば牝馬だけをカタログに記載したセールも開催されている。

 この時季、最も大きな金額が動くのは牝馬のマーケットで、関係者やファンの注目はここに集まりがちだが、当歳馬の市場にも底堅い需要がある。

 当歳マーケットとしてはヨーロッパで最高の品揃えを誇るのが、11月28日・29日、12月1日・2日の4日間にわたって英国のニューマーケットで行われる「タタソールズ・ディセンバー・フォールセール」で、今年は1084頭が上場を予定している。

 当歳マーケットを取材する時の大きな楽しみの1つが、この世代が初年度産駒となる新種牡馬が、どのような仔を出しているかを見る点にある。

 2022年の春にヨーロッパでスタッドインしたフレッシュマンサイヤーの中でも、最も注目が高かったのは、アイルランドのクールモアスタッドにて種付け料6万5千ユーロで供用されたセントマークスバシリカ(父シユーニ)と、ニューマーケット近郊のダーラムホールスタッドにて種付け料5万5千ポンドで供用されたパレスピア(父キングマン)の2頭だった。

 仏国産馬で、G1英2000ギニー(芝8F)など2つのG1を制したマグナグレシアの半弟という血統背景を持つのがセントマークスバシリカだ。タタソールズ10月1歳市場にて130万ギニー(当時のレートで約1億8410万円)という高値でクールモアで購買され、エイダン・オブライエン厩舎から2歳7月にデビュー。初勝利を挙げるのに3戦を要したが、2歳最終戦となったG1デューハーストS(芝7F)を制し、G1で重賞初制覇を果たした。3歳時はG1ばかりを4戦。G1仏2000ギニー、(芝1600m)、G1仏ダービー(芝2100m)、G1エクリプスS(芝9F209y)、G1愛チャンピオンS(芝10F)をすべて制し、欧州年度代表馬の座に輝いた。

 同馬の初年度産駒は、タタソールズ・ディセンバー・フォールセールに14頭がエントリー。中でも、今年春に豪州でG1ランヴェットS(芝2000m)、クイーンエリザベスS(芝2000m)を連勝したドバイオナーの半妹となる上場番号982番の牝馬(父セントマークスバシリカ)、母がG1英オークス(芝12F6y)勝ち馬タレントという上場番号869番の牝馬(父セントマークスバシリカ)らは、購買者の熱い視線を浴びそうだ。

 一方、父キングマンの2世代目の産駒の1頭として生まれたのがパレスピアだ。こちらもタタソールズ10月1歳市場に上場され、60万ギニー(当時のレートで約9623万円)で購買されて、2歳夏にジョン・ゴスデン厩舎からデビュー。3歳夏まで無敗の快進撃を見せ、G1セントジェームズパレスS(芝7F213y)、G1ジャックルマロワ賞(芝1600m)などを制した。3歳最終戦となったG1クイーンエリザベス2世S(芝8F)では、道悪を克服できずに3着に敗れ初黒星を喫したが、この年のカルティエ賞最優秀3歳牡馬に選出されている。4歳時も現役で走り、G1ロッキンジS(芝8F)、G1クイーンアンS(芝8F)、G1ジャックルマルワ賞(芝8F)を制覇。この年も、カルティエ賞最優秀古馬の栄誉に輝いている。

 繋養初年度のパレスピアは、154頭に交配。今年生まれた初年度産駒から、11頭がタタソールズ・ディセンバー・フォールセールにエントリーしている。上場番号813番の牝馬(父パレスピア)は、G1スプリントC(芝6F)勝ち馬リージョナルの半妹。上場番号821番の牡馬(父パレスピア)は、母がG1サンチャリオットS(芝8F)など2つのG1を制したインテグラル。上場番号870番の牡馬(父パレスピア)は、G1シドニーC(芝3200m)勝ち馬ポラライゼーションの半弟と、こちらも良血馬揃いである。

 この他、G1英インターナショナルS(芝10F56y)など2つのG1を制したジャパン(父ガリレオ)、G1フォレ賞(芝1400m)など3つのG1を制したスペースブルース(父ドバウィ)、G1ジュライC(芝6F)勝ち馬スターマン(父ダッチアート)、G1ミドルパークS(芝6F)勝ち馬スプレマリー(父メマス)、G1仏2000ギニー(芝1600m)など2つのG1を制したヴィクタールドラム(父シャマーダル)らの初年度産駒も、タタソールズ・ディセンバー・フォールセールにスタンバイしている。

 カタログにはもちろん、新種牡馬産駒だけでなく、ドバウィ、フランケル、キングマンといったトップサイヤーたちの産駒も含まれている。

 今年のタタソールズ・ディセンバー・フォールセールにはさらに、シュヴァルグラン、ルヴァンスレーヴという、日本で供用されている種牡馬の産駒もエントリーしている。

 上場番号406番は、アイルランド産のシュヴァルグラン産駒。叔母に、プレサージュリフト、オールアットワンスといった重賞勝ち馬がいるファミリー出身だ。上場番号621番は、アイルランド産のルヴァンスレーヴ産駒。今年7月に福島の2歳未勝利戦(芝1200m)を制した後、中山のOPカンナS(芝1200m)で5着となったオンザヴィーナスの半弟にあたる馬だ。日本ブランドが、ニューマーケットでどこまで評価されるかにも注目したい。

(文=合田直弘)

【関連記事】