【文・構成:伊吹雅也(競馬評論家)=コラム『究極のAI予想!』】

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

◆7番人気以下の馬がほとんど上位に食い込めていない

AIマスターM(以下、M) 先週は東京新聞杯が行われ、単勝オッズ33.8倍(7番人気)のサクラトゥジュールが優勝を果たしました。

伊吹 お見事と言うほかありませんね。スタートはそれほど速くなかったものの、向正面で先行集団を積極的に追いかけ、6番手前後のポジションをキープしたまま3〜4コーナーを通過。ゴール前の直線に入ったところで一旦は内ラチ沿いから離れたものの、ホウオウビスケッツ(3着)の内にスペースがあることを把握したのか、すぐイン狙いに切り替えています。残り200m地点のあたりで単独2番手に躍り出ると、そのまま逃げ粘るウインカーネリアン(2着)もあっさりかわし、最後は逆に1馬身の差をつけて入線。陣営はもちろん、鞍上のR.キング騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。

M サクラトゥジュールは7歳にして重賞初制覇。3歳時のジュニアCで3着となった実績もありますが、3勝クラスを勝ち上がってオープン入りを果たしたのは5歳時の夏、オープン特別初勝利は6歳時の春でした。

伊吹 長期休養を挟んだこともあり、3歳時の年末に2勝クラスを勝ち上がってからしばらく足踏みしてしまったものの、オープン馬となった5歳時の秋以降はこれで8戦2勝4連対。加齢の影響をまったく感じさせず、むしろそこから着実にステップアップして重賞タイトルの獲得に至ったわけですから、本当に大したものです。今回は枠順や鞍上のファインプレイに助けられた印象もありますが、この時期のGIIIにしてはハイレベルなメンバー構成だったと思いますし、絶好のチャンスを活かして勝ち切ることができたのは、この馬自身にそれだけの地力があったからこそ。素直に評価して良いと思います。

M 東京以外の競馬場やもう少し長い距離のレースにも実績がある馬ですし、今後も目が離せませんね。

伊吹 3代母のサクラセダンは、自身の直仔に1988年の日本ダービーを制したサクラチヨノオーや同年の朝日杯3歳Sを勝ったサクラホクトオーが、後継繁殖牝馬の産駒に2002年秋華賞2着のサクラヴィクトリアや2003年皐月賞2着のサクラプレジデントらがいる名繁殖牝馬。私を含む中高年の競馬ファンにとってはおなじみの存在ですし、この牝系から令和の重賞ウイナーが出たというのは感慨深いです。もっとも、そういうノスタルジックな血統であることが多少なりとも影響しているのか、サクラトゥジュール自身は人気になりにくいタイプ。次走以降も実力を過小評価される場面が必ずあるはずなので、しっかりマークしておきましょう。

M 今週の日曜京都メインレースは、古馬中長距離戦線の有力馬や新興勢力が集う注目の一戦、京都記念。昨年は単勝オッズ2.5倍(1番人気)のドウデュースが優勝を果たしました。波乱の決着となった年もあるとはいえ、基本的には堅く収まりがちな印象があります。

伊吹 アフリカンゴールドが制した2022年に3連単67万9100円の高額配当が飛び出しているものの、2017年以降の過去7年に限ると、3連単の払戻金が2万円を超えたのはこの1回だけ。過去10年の単勝人気順別成績を見ても、人気薄の馬はあまり上位に食い込めていません。

M 単勝1番人気馬の成績は可もなく不可もなくと言ったところですが、上位人気グループの馬は総じて堅実です。

伊吹 単勝7番人気以下だったにもかかわらず3着以内となったのは、2022年1着のアフリカンゴールド(単勝12番人気)と2022年2着のタガノディアマンテ(単勝8番人気)だけでした。超人気薄の一発に期待するのではなく、点数を絞り込む方向で妙味ある買い目を構築しましょう。

M そんな京都記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、プラダリアです。

伊吹 話の流れ的にも妥当なところを挙げてきましたね。実績上位ですし、相応の支持が集まるはず。

M プラダリアは3歳時に青葉賞を、4歳時に京都大賞典を勝っている5歳馬。まだGIで馬券に絡んだことはありませんが、昨年の宝塚記念で優勝馬イクイノックスと0.4秒差の6着に食い込むなど、大舞台でもそれなりに健闘しています。今回は4歳のベラジオオペラ、前走のエリザベス女王杯で2着となったルージュエヴァイユあたりにも注目が集まっていますし、思いのほか妙味あるオッズがつくかもしれません。

伊吹 Aiエスケープも、超人気薄の一発はあまり期待できないと見ているようですね。この見解を踏まえたうえで、好走馬の傾向とプラダリアのプロフィールを見比べていきましょう。

M 最大のポイントはどのあたりだと考えていますか?

伊吹 京都記念は実績馬が強いレース。2016年以降の3着以内馬24頭中22頭は“JRAの、GIのレース”において6着以内となった経験がある馬でした。

M なるほど。まだビッグレースで上位に食い込んだことのない馬は、疑ってかかった方が良さそうですね。

伊吹 この経験がなかったにもかかわらず3着以内となったのは、2016年3着のアドマイヤデウスと2022年1着のアフリカンゴールドだけ。アドマイヤデウスは翌2017年の天皇賞(春)で4着に食い込みましたし、アフリカンゴールドも次走の大阪杯で7着となったわけですから、大舞台でもそれなりに善戦できそうな馬を選ぶべきでしょう。

M プラダリアは3歳時の日本ダービーで5着に、昨年の宝塚記念で6着に健闘している馬。実績面に不安はありません。

伊吹 さらに、前走の条件がGIだった馬は2016年以降[6-4-5-17](3着内率46.9%)。ビッグレースからの直行組は基本的に信頼できます。なお、前走の条件がGI以外だったにもかかわらず3着以内となった9頭のうち8頭は、前走との間隔が中4週以内、かつ前走の距離が2400m未満でした。

M ビッグレースからの直行組でない限り、休養を挟んで臨む馬や今回より長い距離のレースを経由してきた馬は、割り引きが必要ですね。

伊吹 おっしゃる通り。今年もこの条件に引っ掛かっている馬が多いので注意しましょう。

M 有馬記念から直行してきたプラダリアにとっては心強い傾向と言えます。

伊吹 あとは馬齢や直近のパフォーマンスも素直に評価したいところ。馬齢が6歳以上、かつ前走の着順が6着以下だった馬はあまり上位に食い込めていません。

M 比較的若い馬と、前走好走馬を重視した方が良さそうです。

伊吹 ちなみに、馬齢が5歳以下の馬は2016年以降[7-5-5-27](3着内率38.6%)。3着以内馬24頭のうち17頭を占めていました。

M 先程も触れた通り、プラダリアは5歳馬。これといった不安要素が見当たりませんね。

伊吹 最終的なメンバー構成やオッズにもよりますが、たぶん私もこの馬を連軸に据えると思います。京都芝2400m外で施行された昨年の京都大賞典を勝っている馬ですし、コース替わりはプラスに働くはず。Aiエスケープのお墨付きもあるのなら心強い限りです。手を広げ過ぎないよう心掛けた買い目で利益を捻り出しましょう。



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