【文・構成:伊吹雅也(競馬評論家)=コラム『究極のAI予想!』】

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

◆1番人気馬の信頼度はそれほど高くないレースだが……

AIマスターM(以下、M) 先週はフェブラリーSが行われ、単勝オッズ38.0倍(11番人気)のペプチドナイルが優勝を果たしました。

伊吹 恐れ入りましたと言うほかありません。五分のスタートから好位に取り付き、道中は4〜5番手あたりの外めを追走。4コーナーを周り切ったところで先行する各馬との差を詰め、残り400m地点のあたりで早くもウィルソンテソーロ(8着)らに並びかけています。そのまま残り200m地点のあたりで先頭に立ち、後方から追い込んできたガイアフォース(2着)、セキフウ(3着)、タガノビューティー(4着)らの追撃を難なく凌ぎ切って入線。4コーナーを8番手以下で通過した馬が2〜7着を占める中、堂々たる横綱相撲で後続に1馬身以上の差をつけたわけですから、見た目通りの完勝と言って良いでしょう。大一番でこの馬の持ち味を存分に引き出した藤岡佑介騎手もお見事です。

M ペプチドナイルはGI・JpnIどころか重賞勝ちの実績もなかった馬。前走の東海Sでは6着に敗れていました。

伊吹 コース替わりがプラスに働いたのは間違いありません。半弟のハセドンは3歳時に青竜Sを、4歳時にバレンタインSを制している馬ですし、ペプチドナイル自身も東京ダ2100mの赤富士Sを勝ってオープン入りしていますからね。先行力が高いうえ、長い距離も問題なくこなせるタイプですから、GIの厳しい流れも向いたのでしょう。

M そうなると、今後のビッグレースでも活躍を期待できそうですね。

伊吹 前回の当コラムでも指摘した通り、フェブラリーSはもともと実力馬が強いレース。人気薄の馬はあまり上位に食い込めていませんでしたし、単勝オッズ272.1倍(16番人気)だった2014年1着のコパノリッキーは生涯でGI・JpnIを計11勝、単勝オッズ142.6倍(16番人気)だった2020年2着のケイティブレイブも生涯でGI・JpnIを計3勝しています。こうした例があることを考えても、人気を背負っての勝利でなかった点を不安視する必要はまったくないはず。もし過小評価される場面があったら、積極的に狙っていきましょう。

M 今週の日曜中山メインレースは、さまざまな路線からトップホースが集結する注目のGII、中山記念。昨年は単勝オッズ9.2倍(5番人気)のヒシイグアスが優勝を果たしました。なお、その2023年は単勝オッズ19.9倍(8番人気)のラーグルフが2着に、単勝オッズ17.2倍(7番人気)のドーブネが3着に健闘したこともあって、3連単12万9610円の好配当決着。今年も波乱を警戒しておいた方が良さそうですか?

伊吹 中山記念で3連単の配当が10万円を超えたのは、2014年以降だと2017年と2023年の2回だけ。残る8回はいずれも5万円未満でしたし、単勝人気順別成績を見ても、人気薄の伏兵が好走した例はそれほど多くありません。

M 単勝1番人気馬が期待を裏切りがちである一方、単勝2〜3番人気馬や単勝4〜6番人気馬は比較的優秀な成績を収めていますね。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気以内の馬は2014年以降[6-2-2-10](3着内率50.0%)、単勝3〜5番人気の馬は2014年以降[4-5-3-18](3着内率40.0%)、単勝6〜8番人気の馬は2014年以降[0-3-5-22](3着内率26.7%)、単勝9番人気以下の馬は2014年以降[0-0-0-42](3着内率0.0%)となっていました。魅力的な伏兵がいるなら狙ってみて良いと思うのですが、その場合も上位人気馬を安易に軽視してしまわないよう心掛けましょう。

M そんな中山記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、エルトンバローズです。

伊吹 話の流れ的にも妥当なところを挙げてきましたね。単勝1番人気ということはなさそうですが、それなりの支持が集まりそう。

M エルトンバローズは昨年のラジオNIKKEI賞や毎日王冠を勝っている4歳馬。前走のマイルCSでも勝ったナミュールから0.2秒差の4着に健闘しています。同じ4歳で皐月賞馬のソールオリエンスが人気を集めそうな雰囲気ではあるものの、それほど大きな差はつかないかもしれません。

伊吹 実績面はもちろん、脚質や距離適性を考えても、ソールオリエンスを負かす可能性が十分ありそうに見える一頭ですからね。Aiエスケープが中心視していることを踏まえたうえで、この馬の好走確率をレースの傾向から見積もっていきましょう。

M 最大のポイントはどのあたりと見ていますか?

伊吹 まずは近走成績を素直に評価した方が良さそう。2014年以降の3着以内馬30頭中26頭は“前年以降の、JRAの、出走頭数が16頭以上の、重賞のレース”において2着以内となった経験がある馬でした。

M なるほど。しばらく好走できていない馬や、まだ重賞で連対を果たしたことのない馬は強調できませんね。

伊吹 なお、この条件をクリアしていなかった馬のうち、同年の白富士Sにおいて2着以内となった経験もなかった馬は2014年以降[0-0-1-63](3着内率1.6%)。2024年の白富士Sで連対した2頭は中山記念への特別登録を行っていませんから、今年は2023年以降の重賞における実績が明暗を分けそうです。

M エルトンバローズはフルゲートの16頭立てとなった昨年のラジオNIKKEI賞を制している馬。高く評価して良いのではないでしょうか。

伊吹 あとは、前年のビッグレースを使った馬や前走好走馬が強いレースである点も押さえておきたいところ。“前年以降の、JRAの、GIのレース”において13着以内となった経験がない馬は2014年以降[1-3-2-54](3着内率10.0%)ですし、3着以内となった6頭はそれぞれ前走の着順が1着、もしくは前走の1位入線馬とのタイム差が0.3秒以内でした。

M 当然と言えば当然なのかもしれませんが、はっきりとした差がついていますね。

伊吹 今年はこの条件に引っ掛かっている馬が意外と多いので、事前にしっかりチェックしておきましょう。

M 前走のマイルCSで4着となったエルトンバローズにとっては、心強い傾向です。

伊吹 さらに、同じく2014年以降の3着以内馬30頭中26頭は、出走数が18戦以内でした。

M キャリアの浅い馬が中心、と。

伊吹 中山記念が古馬GIIであることを考えると、キャリア18戦以内というのはなかなか高いハードル。高齢馬や、若い頃からコンスタントにレースを使ってきた馬は、基本的に疑ってかかるべきだと思います。

M エルトンバローズは今回が通算10戦目。どの面からみてもこれといった不安要素が見当たらない一頭と言って良いのではないでしょうか。

伊吹 もともと私もこの馬を中心視しようと考えていました。ソールオリエンスも今回挙げた条件を綺麗にクリアしていますが、やはり中山芝1800m内へのコース替わりは少々不安。そう考えると、エルトンバローズは相当に魅力的な存在です。Aiエスケープも有力と見ているのであれば心強い限り。オッズなども加味したうえで、引き続き◎を打つかどうか検討してみます。



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