3大モールといわれる「楽天市場(楽天)」「Amazon」「Yahoo!ショッピング(ヤフー)」の競争における主戦場は、物流サービスになっている。モール物流で先行する「Amazon」に、「楽天」が「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」を本格展開し、配送料で優位性をアピールすると、「ヤフー」はヤマト運輸と提携し、さらに安価な配送料を提示し、巻き返しを図る。「宅配クライシス」では、大手宅配会社が配送料の値上げをEC企業に要請してきたが、モール物流においては当時と逆行する最安値の奪い合いが進む。「モール物流戦争」と呼びたくなるほどの、3つ巴の激しい競争は、始まったばかりだ。取材でEC業界の不透明なテーマを解き明かす新連載「徹底解明」の1stシリーズでは、「モール物流」の競争の行方を占う。

【<画像4点>3大モールの物流サービスの配送料比較表はこちら】

ヤフーは今年4月、ヤマト運輸と提供する物流サービス「フルフィルメントサービス」を刷新し、アマゾンの「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」、楽天グループ(楽天)の「RSL」を下回る配送料を発表した。


2020年3月にヤフーとヤマト運輸が物流サービス提供開始。2021年4月にサービスを刷新

三辺の合計が60cm以内となる60サイズの1商品のみの配送料(梱包材・出荷作業費含む)で比較すると、「FBA」が434円から、「RSL」が460円なのに対して、「フルフィルメントサービス」では382円と格段に安い。

宅配便会社であるヤマト運輸が商品の保管から出荷、配達まで一気通貫で管理することにより、「モール物流最安値」の地位を奪取した。各種条件によりコストは異なるものの、この価格はEC事業者にとって魅力的に映っただろう。実際、「フルフィルメントサービス」の利用企業は急速に増えているようだ。

あるEC企業は、「『PayPay』の手数料を有料化したように、ある程度シェアを取ったところで値上げするのではないか心配だ」と話す。それほど魅力的な料金だということでもある。


Amazonとヤマト運輸が新サービス
ヤフーとヤマト運輸が、モール物流の配送料競争で一歩リードし、後発からの巻き返しを図るかと思った矢先、アマゾンとヤマト運輸の新サービスが発表された。アマゾンのマーケットプレイスに出店する事業者に対し、ヤマト運輸が自社出荷に適用できる特別運賃プランを提供するという。

【「マーケットプレイス配送サービス」の特別運賃の例(同一地域内の配送の場合)】


「宅配クライシス」において運賃値上げを迫ったヤマト運輸とアマゾンの協業関係は後退したのは確かだ。ただ、そこで関係が冷え切ったわけではなく、時を経て新たな関係を構築している。

アマゾンは中小の運送会社と連携する「デリバリープロバイダー」や、個人事業の運送会社と連携する「Amazonフレックス」を拡大し、独自の配送ネットワークを構築している。しかし、これらのネットワークは都市部が中心で、全国をカバーするために大手宅配会社との関係性は以前、重要だと言える。

ヤマト運輸も特定のプラットフォームとだけ組むわけではなく、今後も新たなパートナーと組む可能性がある。


楽天は在庫の一括受託に強み
楽天の「RSL」は、「楽天」以外の販売チャネルの注文に対する出荷において価格優位性を持っている。「RSL」の配送料は、他チャネルの注文に対する発送時も変わらないが、「FBA」「フルフィルメントサービス」では他チャネル分は割高になる。

「フルフィルメントサービス」では、年内の他チャネル分の配送料を割安に提供するキャンペーンを展開しているが、あくまで期間限定の施策のようだ。

「RSL」は多モール展開するEC事業者の、在庫を一括受託できるようにサービス設計しているようだ。


配送料以外の魅力も
3大モールは物流サービスを強化することで、EC事業者の事業者の在庫を確保し、モールの競争優位性向上につなげようとしている。

ある通販会社は、「通販物流に強い3PLに見積もりを取ったが、1件当たりの出荷費用が約1000円だった。それがモールの物流だと200円台。比較にならない」と話す。

モールの物流サービスを選択する理由は、配送料だけではない。アマゾンやヤフーでは自社の物流サービスを利用する店舗の商品にラベルを付け、購入を促す取り組みを行っている。

楽天は現時点で、「RSL」利用企業が「楽天」で優位性を得られる特典を付けてはいないが、以前の取材でその可能性について言及している。

モールをメインの販売チャネルに据えているEC事業者にとって、モール物流を利用しない選択肢は考えにくくなっている。今後もモール物流はキャパシティーを広げ、在庫の奪い合いを進めていくだろう。配送料を含むサービス競争は、まだまだ激しさを増していきそうだ。


モール物流の次なる一手は?
アマゾンは今回、出店者の自社物流を支援するサービスをヤマト運輸と発表したが、「FBA」において「RSL」やヤフーとヤマト運輸の「フルフィルメントサービス」に対抗する動きは、まだ見せていない。

今年7月には年内に東京、埼玉、千葉の計5カ所にデリバリーステーションを開設すると発表した。それに伴い、配達を担う数百人規模の「Amazonフレックス ドライバー」の募集も開始した。都市部ではより網目の細かい配送網を構築している。

こうした独自の配送ネットワークの構築に合わせて、さらに優位性のある運賃やサービスを提示してくる可能性はあるだろう。

ある物流会社は、「アマゾンはプライスリーダーのポジションを譲らないだろう。すべての費用で下回るのではなく、ボリュームの大きいサイズだけ最安値を出してくるような動きがあるのではないか」と予測する。

ヤフーは現在、ヤマト運輸と手を組み、物流サービスを提供している。ヤフーの親会社であるソフトバンクグループが物流会社を抱えていることは着目すべきことだろう。どこかのタイミングで、最新の技術を用いた物流網に投資を加速する可能性はある。

楽天は日本郵便と合弁会社を設立し、物流サービスの再構築、再強化を進めている。日本郵便が佐川急便との連携を発表したことも、楽天の物流サービスに影響を与えるかもしれない。


2021年3月に資本業務提携を発表した楽天と日本郵政は物流の新体制を構築

連載の2回目以降では、各モールの戦略や動向について、より詳細に分析する。