ジャーナリストの有本香が11月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。11月21日に開かれた政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」が報告書に明記した内容について解説した。

台湾島周辺で空前規模の実戦的合同演習 東部戦区〔新華社=中国通信〕=2022年8月5日 中国通信/時事通信フォト

敵基地攻撃能力の保有を提言へ

防衛力強化に関する政府の有識者会議は11月21日、第4回会合を行い、報告書案を岸田総理大臣に示した。報告書案には、防衛力向上の財源として歳出削減や国民全体での負担が必要だと提起。また抑止力強化のために、「敵基地攻撃能力」の保有も書き込まれた。

国防の話をするときに「財源をどうしますか」 〜有識者会議は役所側がおぜん立てする建付け

飯田)敵基地攻撃能力と言うのか、反撃能力と言うのかというところですが、財源や反撃能力等について議論されたということです。

有本)国防の話をするのに、最初に「財源をどうしますか」という話をする辺りが、どうしても岸田内閣に対して批判的な向きからは「財務省直轄内閣だ」と言われてしまうのです。

飯田)そうですね。

有本)これは有識者会議の議論ですが、この種の有識者会議は、だいたい役所側がおぜん立てするものなので、そういう建付けになっているのでしょう、という話です。

飯田)役所側がおぜん立てする。

「敵基地攻撃能力」保有が明記されたことは進歩 〜ようやく現実的な話に

有本)ただ、敵基地攻撃能力の保有が明記されたことは、1つの進歩なのでしょう。でも敵基地攻撃能力と言うと、「どういう敵基地なのですか。どういう状態のときなのですか」と、また神学論争が始まるから、やはり「反撃能力」と総称するのが現実的ではないでしょうか。簡単に言えば、「やられたらやるのだ」という力を持つことですから。

飯田)反撃能力と。

有本)いまは不可欠でしょう。中国のミサイルがEEZに着弾しましたが、EEZと言っても、波照間島からわずか60キロのところに着弾しているのです。何があっても不思議ではありませんからね。

飯田)しかも、あのミサイルは約2000キロを超えて飛んできて、60キロの誤差でピンポイントに当ててくるわけですから。

有本)敵基地攻撃能力とは少し違うかも知れませんが、本来であれば、日本も同じようにEEZを狙ってミサイルを落とすというのが、ご挨拶としては相当だと思います。

飯田)行動に対して行動で答える。

有本)ようやく現実的な話になってきたというところです。

防衛産業の「日本製の武器を輸出しない」という縛りも外すべき

飯田)いままではある意味、撃たれ放題の状態でした。こちらから攻撃する意図はないのですが、能力すらなかったのですから。

有本)能力すら持ってはいけないという話でした。だいたい日本国憲法が言うところの「平和を愛する諸国民」はいない、という現実を目の当たりにしているわけだから、やはり反撃能力は不可欠だと考えるべきでしょう。

飯田)反撃能力は不可欠。

有本)もう1つは、政府が防衛産業の人たちを集めているではないですか。企業側としては、「防衛産業の分野は採算が取れないのです」と。それはそうですよ。日本製の武器を輸出しないのですから。

飯田)お得意様は防衛省一択。

有本)自衛隊のみ、というような状態です。それでは採算が取れるわけはないので、この辺の縛りを全部外していく方向です。

飯田)ようやく殺傷能力のあるものも輸出するというような記事が出てきています。

予算をつければ弾がすぐにつくれるわけではない

有本)防衛費「GDP比2%」というのも、2%ありきではなく、いま何がどれくらい必要なのかということです。亡くなった安倍元総理が、実は自衛隊は継戦能力に疑問符が付くと。「弾がない」と言っていたわけです。

飯田)そうですよね。

有本)この辺りの問題も、防衛省周りの人を取材すると、「予算をつければすぐにできる」というものではないようです。私たちは「弾などすぐにつくれるでしょう」と思ってしまうのですが、そうではないらしい。それすらも時間が掛かるので、やはり急がないといけないですね。

台湾有事は年内、もしくは2024年に起こると言う識者も

有本)「財源、財源」と言いますけれども、防衛国債の検討をするべきでしょう。

飯田)有識者会議に出ている財務省からの資料を見ると、要するに「安全保障はいま生きている人が恩恵を受けるのだから、将来に渡してはならない」とありますが、いま生きている世代がきちんと生きていなければ、次の世代が生まれないではないですか。

有本)償還の期間をどう設けるのかという問題にすればいいことであって、いまの世代と近未来です。新たに、ここで責任を取っていくという流れをつくればいいわけです。

飯田)インフラはその考えのなかで建設国債を使い、60年で返す形にしている。

有本)現実をきちんと見ないと、また神学論争に陥ってしまいます。

飯田)その議論をしている暇が……。

有本)もうないかも知れません。台湾有事はもしかしたら年内に起こるかも知れないと言っている識者もいます。

飯田)年内か、あるいは2024年には総統選があり、アメリカ大統領選もありますから、そのタイミングということも言われています。

※画像はイメージです

世界が危惧する「台湾有事」 〜危険な状況である現状認識が日本国内に行き渡っていない

有本)先日カナダで開催された「ハリファックス国際安全保障フォーラム」には、アメリカの国防長官も来ていましたが、そこで論じられた重要なテーマは台湾でした。

飯田)台湾ですか。

有本)いつ台湾海峡で何が起こるか、世界中が心配しているということです。アメリカはウクライナでの戦線について、「そろそろ停戦した方がいいのではないか」という雰囲気になっているではないですか。やはりウクライナ支援がアメリカにとってきつくなっているのです。

飯田)二正面、三正面になってくると……。

有本)「東アジアで何か起きたら大変だ」という状況になっている。その現状認識が日本国内に行き渡っていないことに、大きな危機感を覚えます。

飯田)そう考えると先日、北朝鮮が撃ったICBMは、「ここまでやったらアメリカはどうするのか」と。「二正面はいけるのか?」と見ているようにも考えられます。

有本)わざわざ親切にそう問いかけているようなところがありますよね。

飯田)それに対して国連が動こうとしたときに、中国は「まずアメリカが誠意を見せるべきではないか」と言っている。「ここはつながっているのか?」という。

有本)明らかにつながっていますよね。

飯田)タイミング的にも合っていますからね。

有本)ロシアに対しても北朝鮮は弾薬を供給し、それに対する見返りがあるわけです。その後ろ盾は中国ですからね。

飯田)中国が。

有本)これは専門家も言っていますけれど、北朝鮮のミサイル連発は中国のための陽動作戦ではないかと。つまり本来であれば、もっと南西の方向に目を向けなければいけないけれど、北朝鮮がミサイルを撃ってくることで、そちらに目がいくではないですか。そういうこともあるのではないかと言われています。

すぐに紛争に突入しかねない場所にある日本

有本)いま私たちが住んでいるところは、最もホットな場所なのです。悪い意味の「ホット」ですよ。すぐ紛争に突入しかねない場所だと世界からは見られている。

飯田)そうですよね。

有本)敵基地攻撃能力についても、長い議論があります。同じ国防の議論に関して言うならば、戦後、長く議論された集団的自衛権の行使。これは安倍政権により、安保法制で1つの方向が突破させられたわけです。

飯田)集団的自衛権の行使については。

有本)敵基地攻撃能力も長い話でしたけれどね。岸田総理はいま、ご自身の足元が揺れている状況ではありますが、これは歴史的な仕事です。道を開く一歩をぜひ進めて欲しいと思います。