ジャーナリストの佐々木俊尚が9月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。国連改革について解説した。

北京で、記念撮影に応じる中国の習近平国家主席(右)とロシアのプーチン大統領(中国・北京) 撮影日:2022年02月04日 AFP=時事 写真提供:時事通信

岸田総理、国連総会で演説

ニューヨークの国連本部で開催されている国連総会で、世界193の加盟国の首脳級による一般討論演説が始まった。2022年はロシアによるウクライナ侵略への対応が焦点となり、岸田総理はロシアを名指しで非難し、国連改革の必要性を訴えた。

岸田総理がどこまで安倍元総理を継承できるか

飯田)一方でアメリカのバイデン大統領は、現地9月22日に演説を行うということです。また、ウクライナのゼレンスキー大統領も9月22日、オンラインで演説する予定になっています。

佐々木)安倍さんはリベラルな国際秩序において存在感があり、「自由で開かれたインド太平洋」構想のような新しい構想を日本発でつくるなど、功績が大きかった。そこをどれだけ岸田さんが継承してくれるかという話だと思います。

飯田)岸田総理が。

佐々木)国内のコロナ対応や物価高対応、あるいは旧統一教会への対応の混乱を見ていると、国際社会でリーダーシップを取れるのかどうかという不安はかなりあります。

国連改革は本当に可能なのか 〜何を言っても常任理事国の拒否権で終わってしまう

佐々木)一方で、「国連改革」と簡単に言うのだけれど、本当に実現可能なのかどうかという議論になってくるのではないかと思います。

飯田)国連改革ができるのかと。

佐々木)常任理事国というと、まるで選挙で選ばれたような公正なイメージがありますが、単なる第二次世界大戦の戦勝国です。その戦勝国5ヵ国が拒否権を持っているので、何を言おうとしてもすべて拒否権で終わってしまうから、改革のしようがないのです。

ロシア・中国不在の国際秩序は存在しえない

佐々木)ウクライナ侵攻以降、いろいろな意見が出ています。私が前に聞いて「なるほどな」と思ったのは、中国・ロシアが国連にいる限り、国連の機能不全は避けられないので、G7やG20をベースにした新しい国際秩序をつくるという話です。G7はただの会議ですが、G7をもう少し恒常的な機構にして、そこで国際秩序をつくった方がいいのではないかと言っている人がいました。

飯田)G7で国際秩序をつくる。

佐々木)以前、安全保障の専門家の先生に「こういう意見があるけれど、どう思いますか?」と聞いてみたら、「ロシア・中国不在の国際秩序は国際社会のなかで存在し得ないので、何の効果も持ち得ない」と。言われてみれば確かにそうです。

飯田)ロシア・中国不在の国際秩序は存在し得ない。

佐々木)ロシアに対して、西側諸国である日米欧は結託して制裁を続けているではないですか。世界中がロシアを追い込んでいるかのように見えるのだけれど、それは我々が西側の一員であるからそう見えるだけであって、もう少し俯瞰してみると、言っているのは日米欧だけなのです。

日米欧は制裁してくる敵だけれど、それ以外の国がロシアと仲よくしてくれるから大丈夫 〜この状況で西側とそれ以外の国をまとめる方法はあるのか

佐々木)中国はロシアに味方して、何も言っていません。インドも中立的で、相変わらずロシアから石油を買ったり、貿易をしたり、軍事兵器を買ったりしているわけです。アフリカも中立です。意外にロシアからすると、日米欧は制裁してくる敵だけれど、それ以外の国が我々と仲よくしてくれるから大丈夫だと。そういう見方もできるのです。

飯田)なるほど。

佐々木)この状況では、日米欧という西側エリアとそれ以外のエリア……インドや中国、アフリカなど、その他たくさんの国をまとめるにはどういう方法があるのかと言うと、正直よくわからないですよね。

世界が徐々に戦前のようにブロック化してきている

飯田)有志国的な連合としてのG7や、あるいは地域的なつながりの部分でASEANやアフリカ連合などが重なっていく感じになるのですか?

佐々木)経済もそうだけれど、WTOも最早、意味がありません。

飯田)世界貿易機関。

佐々木)どちらかと言えば、地域的な方にきているわけでしょう。

飯田)TPPのような。

佐々木)TPPもそうですし、RCEPもそうです。徐々に世界がブロック化してきている。戦前がそうでしたが、そういう方向に戻ってきているのではないでしょうか。経済がブロック化、リージョナル化していくのと同時に、政治そのものも徐々にそうなってくるのかなという感じがしなくもありません。

1日、中国・北京の天安門広場で開かれた中国共産党創立100年を記念する式典で演説し、拳を突き上げる習近平党総書記(国家主席)[中国政府のニュースサイト「中国網」の中継動画より]=2021年7月1日 写真提供:時事通信

「強権国家=資本主義」という構図を示した中国とシンガポール

飯田)他方、中露とそれ以外の常任理事国3ヵ国は政治機構も少し違う。権威主義的だと言われる国と、民主的に物事を決めていく国へ、また分かれていくことになるのですか?

佐々木)欧米のリベラルな考え方は、戦後一貫して、19世紀の植民地時代からそうなのですが、独裁主義と資本主義はイコールではありません。イコールにはなり得ないのです。資本主義を発達させるためには、国を民主化させなければいけない。だから独裁体制を倒して、逆にもっと踏み込んで言うと、帝国主義時代の欧米は「我々が植民地にすることによって民主主義を教えてやるのだ」という傲慢な考え方で植民地支配を推し進めてきたわけです。

飯田)そうですね。

佐々木)1960年代くらいまでは、その考え方で成立していました。結局、いま何が起きているかと言うと、「独裁的な強権国家の方が資本主義は上手くいく」という構図をシンガポールと中国が示してしまったのです。

飯田)強権国家の方が。

佐々木)21世紀初頭くらいに中国が台頭してきたとき、欧米の知識人は盛んに「民主主義ではないから中国は終わる」と言い続けてきました。「あの資本主義は続かない」と言っていたのだけれど、未だに終わる気配なく続いています。

中国は強権なので意思決定も行動も早い 〜世論をまとめなければならない民主主義国はコロナ禍で混乱してしまった

佐々木)将来は少子化だという話もありますが、経済はまだ成長を続けていて、いずれアメリカのGDPを抜くと言われている状況です。「強権国家イコール資本主義」という構図を示している。今回のコロナ禍もそうでしたが、世論をまとめなければいけないので、民主主義国は混乱してしまいがちです。

飯田)民主主義国家は。

佐々木)それに比べると、中国は何をするにも強権なので、意思決定が早いし行動も早い。そういうところを見ていると、意外に「中国の方がいいのでは」と思う若者も出てきているのです。

「リベラルな国際秩序」とは何を指して言うのか

佐々木)「リベラルな国際秩序とは、いったい何を指して言うのか」という線引きがとても難しくなっている感じがします。

飯田)個々人の自由意志に基づいて、その部分から統治していくのも簡単なことではないし。

佐々木)民主主義は、残念ながら容易に衆愚に陥りやすい。これは昔から言われていることです。

飯田)それこそギリシャ文明の時代から。

佐々木)ウィンストン・チャーチルも「民主主義は決していいものではないが、いまのところは最良だ」ということを言っています。

飯田)他のすべての政治体制を除けば。

日本ほど全体主義を嫌う国はない

佐々木)そういう状況なのです。日本も同じで、「リーダーシップを取らないと政治が変わらない」と言うのだけれど、実際にリーダーシップを取る人が現れると、「ファシストだ」「強権だ」とみんなが騒ぐのです。

飯田)実際に出てくると。

佐々木)日本人も伝統的に「全体主義だ」とみんな言いたがるけれど、そんなことはなく、こんなに全体主義を嫌う国はないと思います。江戸時代から、将軍が出てきて独裁者になるかと思うとならなくて、「将軍1人に任せるとまずいから、老中を置いて集団合議制にしましょう」と提唱したり。明治時代になってからも、それを踏襲して明治天皇が出てきて、明治天皇が独裁者にならないように元老を置いたりしています。

飯田)そこから議会が開設されました。

佐々木)統帥権についても、まるで軍部を独走させるためのシステムだったと言われていますが、実は逆で、軍が政治に介入しないために「軍の支配権は別に置いておこう」という発想だったのです。日本は常に権力が集中しないよう、システムをつくることに心を注いできたわけです。

飯田)結果として、誰が意思決定したかわからない。まさに真ん中が空洞という、山本七平の『「空気」の研究』のような話になってくる。

佐々木)太平洋戦争が始まってしまったのは、ヒトラーやムッソリーニがいたからではありません。誰もいなかったから誰も決められず、みんな家に帰ると奥さんに「この戦争はまずいと思うんだよね」と言いながら、会議では「戦うしかありません」と、みんなで流されていったのです。

飯田)会議では「戦うしかない」と。

佐々木)ある意味、強権ではないから日本はこうなってしまったわけで、逆に強いリーダーシップを持っている人が出てきた方がいいのではないか、という意見もあります。それがまさに安倍さんだったわけです。強いリーダーシップを持っていたから「ファシストだ」「ヒトラーだ」と言われ続け、いまの結果になってしまった。国葬にさえ反対している人がたくさん現れてきているという状況で、どちらの方がバランスがいいのかという判断は難しいですね。