国際政治学者で慶應義塾大学教授の神保謙が10月31日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナ情勢について解説した。

ロシアのプーチン大統領(ロシア・サンクトペテルブルク) AFP=時事 写真提供:時事通信

ロシアがウクライナ産穀物の輸出合意を無期限に停止

ロシア国防省は10月29日、黒海を通じたウクライナ産の穀物の輸送についてウクライナ、トルコ、国連との合意の履行を無期限に停止すると発表した。これによりウクライナ産の穀物輸出が再び滞る恐れがある。

飯田)黒海からの小麦などの積み出しは、ウクライナ経済にとっても大きいですよね。

神保)ウクライナは世界有数の小麦の生産国で、トウモロコシも含めて穀物を輸出しています。価格も安定していて、その輸出に頼っている国は特に北アフリカや中東に多いわけです。

飯田)北アフリカや中東に。

神保)これが戦争以降に途絶えてしまい、食糧危機の問題に発展しかねないということで、トルコと国連が仲介してウクライナとロシアが暫定的な合意を結び、輸出が再開されました。それが2022年7月だったのですけれども、わずか数ヵ月でした。

飯田)そうですね。

神保)その間、ヘルソン反攻からのロシア軍劣勢という状況に追い込まれているわけです。こうなってくると、ロシアは何でも使えるものを使うということです。旧ユーゴスラヴィアやシリアのときもそうでしたが、「暫定的な合意」は本当に脆くも崩れ去るということが、またしても示されたという感じがします。

劣勢状況にあるロシアがあらゆるものを使って反撃 〜ウクライナ産穀物の輸出停止もその一環

飯田)全体のウクライナ情勢ですが、ここ1ヵ月〜2ヵ月ほど、かなりウクライナの反転攻勢が続いています。

神保)ウクライナ軍がロシア軍を地上戦で押し返すという、新しいフェーズに入ったのだと思います。非常に見事な形で進んでいるわけですけれども、本当に南部と東部を奪還するところまでいけるのかどうかはわかりません。依然として火力の課題と、機動戦をどう戦うかという問題を抱えているわけです。

飯田)奪還するところまでいくかどうかは。

神保)ロシアも劣勢状況にあるので、あらゆるものを使って反撃すると思います。今回のように輸出を止めたり、ガスパイプライン「ノルドストリーム」に破損事故を起こしたり、原子力発電所の問題で「汚い爆弾が使われるかも知れない」と言うなど、あらゆる恐怖を煽って士気を削ごうとする動きも出ています。さらに、今度は「どこかで核を使用する」というような、嫌なシナリオが見えてきている段階ではないかと思います。

ウクライナにとって、目指すべき場所は「2月24日以前の段階に戻すこと」 〜これからも地上戦は続く

飯田)核を使用するかも知れないから、あまり追い込み過ぎない方がいいという議論もありますけれど、追い込まなかったら追い込まないで、まずいですよね。

神保)ウクライナにとって、目指すべき場所は「2月24日以前の段階に戻すこと」だと思うのです。さすがにクリミアを完全に取り戻すとか、東部2州を完全にウクライナの陣地に取り戻すのは、コストが高いかも知れません。

飯田)クリミアや東部2州を戻すことは難しい。

神保)でも2月24日、ロシアの言う「特別軍事作戦」が始まる前の段階に戻せば、「いよいよ停戦がみえる」というのがいまのウクライナの立場だとすると、特に南部はしっかりと押し返さなければ、とても停戦交渉が始まる余地はないという状況です。この状況から見れば、今後も地上戦が続いていくのではないでしょうか。

ドローンを使用した新たな戦いが展開

飯田)ドローンなども相当威力を発揮しているという話ですが、ドローンのような新しい兵器は有効なのですか?

神保)ドローンは戦争の初期段階から双方が使っていますが、特にウクライナ側のドローンはロシアの機甲戦に対して非常に有効な手段として使われています。ロシアも当然、防空施設やネットワークを破壊しようとするのですけれども、多重性を持って、いろいろなネットワークや民間の力が発揮されてドローンが飛び続けるという、新しい戦いが展開されていると思います。