ジャーナリストの佐々木俊尚が11月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ロシア製のミサイルがポーランドに着弾し、2人が死亡したという発表について解説した。

封鎖された道路に立つ報道関係者 ポーランドにミサイル着弾=2022(令和4)年11月16日、ポーランド東部(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

ロシアのミサイルがポーランドに着弾、2人死亡 〜誤爆ではないか

AP通信はロシアのミサイルが北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるポーランドに着弾し、2人が死亡したと報じた。ポーランドは臨時の国家安全保障会議を招集したと政府報道官がツイッターで明らかにした。現地のニュースウェブサイトは日本時間16日午前5時から緊急会議を開くと伝えた。

飯田)現場はウクライナとの国境から約6キロの地点だということです。ウクライナ国内にはリビウという、西側のポーランドとの国境に近い大きな都市がありますが、そこから北に上がると、この村が見えてくるというような位置関係です。現時点では情報が錯綜していますが(※編集部注:2022年11月16日午前6時50分時点の放送)。

佐々木)情報が少なすぎてわからないのですが、ロシアがやったとしても絶対に認めないですよね。かつて2014年のマレーシア航空機撃墜事件で約300人が亡くなりましたが、あのときも認めませんでした。いまだに認めていません。

飯田)そうですね。

佐々木)しかし、20ヵ国・地域首脳会議(G20サミット)がインドネシアで開かれているときにこんなことをしても、ロシアには何のメリットもないので、普通に推測すると誤爆だったのではないでしょうか。

G20直前には健康不安説もあったラブロフ外相 〜首脳会議の途中で帰国してしまった

佐々木)これが起きた直前に、G20からロシアのラブロフ外相が異例の帰国、途中で帰ってしまったと。何か関係があるのかということも言われています。

飯田)首脳会議そのものは11月15日・16日に行われるのですが、その途中で……。

佐々木)途中で帰ってしまったのですよね。

飯田)G20直前には、ラブロフ外相が搬送されたのではないかという報道もありました。

佐々木)健康不安説もありましたが、プーチン大統領に「ラブロフ、帰ってこい」と言われたのかどうか……。

飯田)本当ですよね。

NATO条約の第5条では「攻撃を受けたら反撃する」ことに

佐々木)ロシアの動きは予測がつかないのでわかりません。NATO側がどのような対応をするのかが、今後の最大の関心事になるのではないでしょうか。有名な話をすると第4条、第5条というものがNATO条約にはあります。第4条は、安全が脅かされた場合には協議するというものです。

飯田)加盟国が攻撃を受けた場合、協議する。

佐々木)いま、その協議に入りつつあるのでしょうか。そして第5条は、「攻撃を受けたら我々は反撃しますよ」と。同盟国が攻撃された場合には、NATO全体で反撃することになります。第4条から第5条へ移るのかどうかというところです。

飯田)第5条へ移行するのかどうか。

NATOが反撃することで欧州全体に戦火が及ぶことにもなりかねない 〜何もしないわけにもいかず、舵取りが難しいNATO

佐々木)当然、協議はすると思いますが、実際にNATOが反撃して、例えばロシアの黒海艦隊の船を沈めるのか。そうなると反撃の応酬になってしまう可能性もあります。

飯田)ロシアとの。

佐々木)それこそ第一次世界大戦の始まりのように、小さな事件から「ドカン」と広がって、あっという間に欧州全体へ戦火が及ぶようなことも起きかねない。しかし、だからといって何もしないのでは、NATOの意味がなくなってしまいます。

飯田)「張子の虎だったのか」ということになってしまう。

佐々木)ますますロシアがつけあがって「NATOは何もできないのか」と思われたら、抑止力が効かなくなってしまう。抑止力を効かせて、しかも欧州大戦のようなことにならないよう留めるのは、舵取りを考えると難しいですよね。

ロシアが「誤爆だった」と認めればNATOも反撃せずにすむのだが 〜ロシアが何をしてくるのかわからない

飯田)本当ですね。だからこそ、ロシアが誤爆であったと認めればいいのですが。

佐々木)認めて、「すみませんでした、少し失敗しました。2人亡くなって申し訳ありません」と言えば、NATOも「誤爆だったら反撃するほどでもないか」と。ウクライナ侵攻は続いているけれども、NATOとしては「反撃しません」という説明ができるのですが、ロシアが認めなければそれもできない。

飯田)NATOとしても何らかの対応をしなければなりません。

佐々木)エスカレーションしない程度に何かしなければいけない。しかし、エスカレーションするかどうかもNATO側には決められないので、ロシアがどう出るのかも判断しないといけません。

飯田)ロシアがどう出るか。

佐々木)しかし、プーチン大統領が何を考えているのかわからないので、「どのくらい反撃してくるのかもよくわからない」というジレンマに陥っているのではないでしょうか。

飯田)いままで核を使うか使わないかというところで、「使うぞ」と言ってきましたが、そうではない形でNATOに対して一手打ってきたと。(NATOが)「俺たちは梯子を2段登るぞ」というところを見せなければ、「これ以上登るなよ」とすることもできない。

佐々木)そうなのです。なかなか難しいところだと思います。

国連を中心とした安全保障体制が成立しない 〜第二次世界大戦以前の世界のように、集団的自衛権でそれぞれの国が軍事同盟を結んで自分たちの国を守るしかない

佐々木)G20でも岸田文雄首相が強く非難したという話ですが、それもどうなのでしょうか。結局、中国もロシアも入っているG20です。両方とも参加しているという意味では価値のある会議なのですが、一方、そこでは何も決められないということでもあります。

飯田)反対されれば。

佐々木)これもジレンマで、かといってG7のように中国・ロシアを排除した会議を行い、そこで何かを決めたとしても、何ら中露には影響を与えないという問題が起きてしまうわけです。

飯田)そうですね。

佐々木)みんなが参加して決められない方がいいのか。参加しないところで決めても、それを押し付けられるのかどうかわからない。どちらも成立しないという、非常に難しい問題になってきています。

飯田)どちらにしても成立しない。

佐々木)そう考えると、冷戦時代にも既に言われていたことですが、「国連を中心とした安全保障体制が成立しない」ということが完全に見えてしまった。第二次世界大戦以前の世界のように、集団的自衛権でそれぞれの国が軍事同盟を結び、自分たちの国を守るしかないという話になってきているのかなと思います。

飯田)G20とポーランドへの着弾もつながってくるし、ハンドリングをどうするのか……。

佐々木)日本も「どうしていくのか」ということを考えなくてはいけませんね。

飯田)ロシアとNATOのやりとりを当然、中国は見ているわけですものね。