中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也氏が3月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。警視庁が暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)などの疑いで逮捕状を取ったガーシー元議員について語った。

参院本会議を欠席したNHK党のガーシー議員の氏名標=2023年3月8日午後、参院本会議場 写真提供:産経新聞社

警視庁がガーシー元議員に逮捕状

3月15日に「除名」処分となったガーシー元参議院議員こと東谷義和氏について、警視庁は動画投稿サイトを通じて著名人などを繰り返し脅迫したなどとして、暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)などの疑いで逮捕状を取った。東谷容疑者は海外で滞在を続けていて、警視庁はパスポートの返納命令を外務省に要請する方針。

基本的には脅迫罪や強要罪などが考えられる 〜常習的脅迫容疑にプラスオンされる可能性も

飯田)ガーシー元議員の件で、暴力行為等処罰法違反の容疑など、さまざまなことが言われています。どうご覧になりますか?

野村)基本は脅迫です。生命、身体、自由、名誉、財産などに対し害を加える旨を知らせて、一般の方であれば恐怖心にかられるであろう状態に陥らせると、脅迫罪が成立します。一般的な刑法のなかに規定されているのですが、これを常習的に行っていると暴力行為等処罰法違反になり、少し罪が重くなるのです。

飯田)なるほど。

野村)普通の脅迫罪だと2年以下の懲役ですが、常習なら5年以下の懲役ですので、かなり重い罪になります。

飯田)常習であれば。

野村)さらに脅迫を用いて、「義務のない行為」と言っていますが、人にやらなくてもいいようなことをさせる。例えばタレントを脅迫して「出演するのをやめなさい。出たら、この情報を暴露するぞ」などと言って、そのためにタレントが出演をやめた場合、強要罪になるのです。

飯田)強要罪に。

野村)この辺りのことを、いま詰めているのだと思います。

飯田)とりあえず常習的脅迫の容疑で逮捕状は取ったけれども、プラスオンされる可能性があるということですか?

野村)あります。今回、複数の容疑で逮捕状を取っている可能性もあると思います。

旅券返納命令が申請された場合、パスポートが無効になり、ガーシー氏は不法滞在に 〜旅券返納命令は官報に掲示して20日経てば本人に届いたことになる

飯田)ガーシー氏が海外にいるとなると、今後の運びはどうなっていくのでしょうか?

野村)逮捕されますから、彼が帰国することは考えられません。何とかして回避する方法を考えるわけです。しかし、2年以上の刑罰を科されるような犯罪で訴追されていると、旅券返納命令を申請できるのです。

飯田)旅券返納命令。

野村)誰が行うかと言うと、警察が外務省に対して、「この人にパスポートを返すよう命じてくれ」と頼むわけです。通常、命令が出てからさまざまあるのですが、「1ヵ月くらいの期間に返しなさい。返さないと不法滞在になります」というような感じの命令が出るのだと思います。

飯田)返さなければ不法滞在に。

野村)ただ、彼は所在がわからないので、命令を発しても届かないではないですか。

飯田)そうですよね。

野村)そういうときは官報に掲示して、20日間経つと届いたことになるのです。まずは命令を出してもらって官報に掲載し、領事館にも出しますが、20日間経つと旅券返納命令が届いたことになります。

飯田)20日間経てば。

野村)届いてから1ヵ月間の間に返しなさいと言ったけれど、返さなかったような場合は、パスポート無効になるのです。

不法滞在になっても相手の国が「強制送還するかどうか」という問題がある 〜「犯罪人引き渡し条約」がない国には「捜査に協力してくれ」とお願いするしかない

野村)パスポートが無効なら不法滞在になるので、今度は強制送還になりますが、「相手の国が強制送還してくれるか」という問題があるのです。

飯田)いわゆる広域強盗事件で「ルフィ」と呼ばれるグループに関しては、フィリピン政府の協力があったから、スムーズに帰国させることができたのですか?

野村)そうです。「犯罪人引き渡し条約」があればスムーズに進むのですが、いまはご存知の通りアメリカ・韓国としか結んでいないので、それ以外の国にいる場合は「捜査に協力してくれ」とお願いすることになります。

警察当局同士で協力関係ができていない国には外交ルートで交渉するしかない

野村)これにも2種類ありまして、捜査の共助に対する条約をきちんと結んでいる場合、警察当局同士で協力関係ができています。アメリカ、韓国、EU、ロシア、中国、最近だとベトナムも増えましたが、それ以外では、外交ルートを通じて交渉することになります。

飯田)なるほど。

野村)外交ルートで「協力をお願いします」と言っても、「知りません」と言われてしまったら終わりです。また、『ルパン三世』の銭形警部が所属する組織が出るかどうかと言われていますが。

飯田)ICPO、国際刑事警察機構(インターポール)ですか。

野村)そうです。ただ、インターポールの方々は国際手配はするのですが、各国の捜査機関に「日本でいまこういう人に逮捕状が出ています」というお知らせの効果しかないのです。

飯田)「捜査してくれ」、「捜査しなくてはダメだ」ということではないのですね。

野村)ないのです。「こういう人に逮捕状が出ていますよ」と赤い手配書が出て、インターポールのホームページでも見ることができるのですが、「出ていますよ」となっても、「そうですか」という話になってしまうのです。

「代理処罰」もあるが、人が死亡した事件にしか要求しない

飯田)少し前まで滞在していたと言われる中東のドバイですが、アラブ首長国連邦(UAE)がどこまで協力してくれるかは、外交力次第でしょうか?

野村)外交力次第です。貸し借りの問題なども出てきますので、外交上、「日本に対して協力した方がいい」という考え方になるかどうかです。そうなると、本当に外交問題になってしまいます。

飯田)外交問題に。

野村)あとは、最後の最後の処罰がありまして、「こちらの国で罪を犯したことをお知らせしますので、そちらの国で捜査して処罰してください」というものもあります。代理処罰と言われますが、手続きがとても煩雑なので、日本政府は人が死亡した事件にしか要求していないのです。

飯田)死亡した事件のみ。

野村)おそらく、今回のようなケースだと代理処罰は行われませんし、仮に手続きをしても、向こうの国に「うちの国では大した罪になりませんよ」と言われれば処罰してもらえないこともあるので、あまり得策ではありません。

パスポートが失効された場合、ガーシー氏はどうなるのか 〜レバノンに逃亡したカルロス・ゴーン氏のケースも

野村)旅券返納命令が出されれば、旅券番号からパスポートが失効しているかどうかがわかりますから、現在いる国から出国しようとすると、そこで発覚するため、いまいる国から出ないという状況になります。いまはどの国を選ぶかを考えているのではないでしょうか。

飯田)なるほど。

野村)また、カルロス・ゴーンさんのケースもあります。レバノンの場合、ゴーンさんとレバノンとの関係もありますから。ガーシー氏と関係のある国、例えば彼が投資や援助を行っているような国であれば、そこから出してもらえなくてもいいかなという感じになり、ずっといることになります。

飯田)釈然としないですが、金を積めば守ってくれるような国はありますか?

野村)本来あってはならないのですが、あるとは思います。

罪を犯しても海外に逃げていれば儲けることができるということはあってはならない

野村)私がいちばん気になるのは、これによって炎上し続け、彼が収益を上げ続けることです。それは止めなければいけないと思います。

飯田)そうですよね。

野村)ネット社会のなかで、こういうことがお金儲けにつながる仕組みになったり、罪を犯しても海外に逃げていれば儲けることができるという前例は、絶対にあってはいけないのです。

飯田)捜査関係者の問題意識もそこにあると言われます。