外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が11月3日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イスラエル・パレスチナ情勢について解説した。

イスラエル中部テルアビブの空港に到着し、同国のネタニヤフ首相(左)に出迎えられるバイデン米大統領=2023年10月18日(ロイター=共同)

イスラエル中部テルアビブの空港に到着し、同国のネタニヤフ首相(左)に出迎えられるバイデン米大統領=2023年10月18日(ロイター=共同)

米ブリンケン国務長官がイスラエルとヨルダンを再び訪問

中東を訪れている米ブリンケン国務長官は11月4日、ヨルダンで記者会見し、引き続き人道目的での「戦闘の一時的な停止」を求める考えを強調した。

ハマスを殲滅したいイスラエルと、戦闘を引き延ばして国際社会の非難が高まるのを待ちたいハマス

宮家)今回、なぜこのような事態が起きたのか。簡単に言うと、イスラエルはできるだけ早くハマスを殲滅したい。ハマスは民間人の犠牲者を出しても構わないので、できるだけ戦闘を引き延ばし、国際社会でのイスラエル非難が高まるのを待ちたいのです。

飯田)民間人の犠牲者が出ても構わない。

宮家)一方、アメリカとしては、イスラエルが地上戦をやるのは仕方がないけれど、とにかく人質を取り返さないといけないから、その時間稼ぎをしたい。イランは直接アメリカと喧嘩する気はないけれど、アメリカが弱くなるのであれば、どんどん代理戦争を行う。そうした状況を中国とロシアは外から笑っているのだと思います。

地上戦になれば、最終的にはサウジアラビアにも火の粉がかかる

宮家)日本ではあまり報道されませんが、サウジアラビアの皇太子がアメリカの上院議員の代表団と会っています。

飯田)そうなのですね。

宮家)そのときサウジ側は、「地上戦になったら大変なことになる」と言っています。サウジアラビアはアメリカとの関係が決してよかったわけではないし、いまも緊張がないわけではありませんが、イスラエルが暴発すれば、最終的には自分のところに火の粉がかかってくることはわかっているのです。

飯田)地上戦になれば。

宮家)イランが本当に行動を開始したら、湾岸でもアラブ側はやられてしまいます。そう考えると、ブリンケンさんが走り回るのも仕方ありません。アメリカ1ヵ国やNATO中心で、果たしてこれを封じ込めることができるのかは疑問ですが、一部には即時停戦を主張する向きもあります。でも、私がネタニヤフさんであれば、「何を言っているんだ? 約1400人も殺されているのだぞ。これで何もしないなどあり得ない」と思うでしょう。

飯田)イスラエルからすれば。

宮家)ハマスからすると、残念ながら、「待ってました。イスラエルさん、どんどんやってください」と思っている。しかも、イランや中国、ロシアは影で笑っている。これでは止めようがありません。イスラエルは空爆も強化しているので、ガザを包囲しているならば、いずれは最後の本丸に入っていくのですが……本丸と言ってもお城があるわけではない、地下道が何百キロも続いているのです。おそらくほとんどの戦闘員は、人質と一緒にそのなかにいるはずです。

関係各国の当事者能力が発揮できていない 〜冷笑する中露

宮家)それを1つひとつしらみ潰しに探していくのは、気が遠くなるような話です。しかも犠牲者は増えていきます。イスラエルもこのままだと当事者能力を失って、底なし沼に入ってしまいます。ハマスはもともと当事者能力はなく、戦闘能力しかありませんし、「パレスチナ自治政府はどこに行ったのだ」という話ですよね。歴史的にもともとの問題をつくったのはイギリスですが、今やイギリスは全然関係ないですし。

飯田)いまや。

宮家)アメリカもインド太平洋には中国があり、欧州にはウクライナがありで全然、当事者能力が発揮できていない。

飯田)三正面作戦を行うわけにはいかない。

宮家)だから「このまま放っておくわけにはいかない」ということで、ブリンケンさんが走り回っているという構図なのです。

仕方なく国境を開いたエジプト

飯田)いま南の方では、エジプトとの国境を開いて避難させていますよね。

宮家)エジプトがようやくOKしました。本当は国内が混乱するので、入ってきてもらいたくないはずです。ハマスが大嫌いな人たちですから。

飯田)ハマスと、一時期政権を担っていたムスリム同胞団と……。

宮家)いまの政権は全然違いますからね。エジプトとしては「仕方がない、何千人か受け入れるか」という話になっているのだと思います。しかし、それもアメリカがサウジアラビアやヨルダンと連絡を取りながら進めているわけで、ブリンケンさんは寝る暇もない状態だと思います。

飯田)現場は刻一刻と動きますからね。

宮家)イスラエルも言うことを聞きませんから、何をするかわかりませんし・・・。

国内でも強くなるネタニヤフ首相に対する風当たり

飯田)イスラエル国内でも、ネタニヤフさんの支持率が下がっているそうですね。

宮家)下がっているからこそ、強硬になる恐れがあるのです。そうなれば「上手くいくものも、上手くいかなくなる」という声もあります。アメリカのなかでも、イスラエルのなかでも、もちろんアラブ社会でも、ネタニヤフさんに対する風当たりはこれから強くなるでしょう。

湾岸に波及すれば日本にも影響が出てくる

飯田)そこでネタニヤフ政権が倒れることになったとしても。

宮家)倒れるとすれば、それは戦闘が一段落してからです。

飯田)いまは挙国一致で動く。

宮家)戦っている間は、絶対にそのようなことはしないと思います。国が壊れてしまうので、できないでしょう。

飯田)誰も当事者能力がないなかで、事態だけが進んでいくのは恐ろしいですね。

宮家)でもこれが湾岸に波及したら、我々の問題にもなります。

飯田)原油にも直結しますよね。

宮家)シーレーンに影響が出て、インド太平洋にも移っていく。それだけは止めなければいけません。