経済アナリストのジョセフ・クラフトが11月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。G7外相会合について解説した。

渋谷駅前でイスラエル支持の集会が開かれ、ハマスに拉致されたとされる人たちの写真やプラカードなどを掲げる人たち=2023年10月11日午後、東京都渋谷区 写真提供:産経新聞社

渋谷駅前でイスラエル支持の集会が開かれ、ハマスに拉致されたとされる人たちの写真やプラカードなどを掲げる人たち=2023年10月11日午後、東京都渋谷区 写真提供:産経新聞社

東京でG7外相会合を開催、イスラエル・パレスチナ情勢を議論へ

先進7ヵ国(G7)の外相会合が11月7日から東京で開かれた。イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突が始まって以降、G7の外相が一堂に会するのは初めて。

飯田)ハマスによるイスラエルへの攻撃が起きたのが10月7日ですので、1ヵ月が経過したことになります。

G7外相会合における4つのテーマ 〜グローバルサウス諸国を取り込む

クラフト)今回のG7外相会合は、日本が議長国であることも含め、非常に重要な意味合いを持つ外相会合だと思います。4つの大きなテーマがあり、1つはグローバルサウスの取り込みです。今回はグローバルサウスとロシアとの関係を切り崩す目的で、中央アジア諸国をオンラインで招待しています。

飯田)カザフスタンやキルギスなどですね。

クラフト)アゼルバイジャンとアルメニアの紛争が起きていますが、ロシアが仲介に失敗していますので、ここを一気に切り崩してこちら側に取り入れたい。また、8月には中国が新しい領海地図を発表し、アジア諸国から反発を受けています。それを切り口に、アジア太平洋経済協力会議(APEC)に向けて、岸田総理がフィリピン・マレーシアを訪問しました。

飯田)11月3〜5日の日程で訪れました。

クラフト)このように「グローバルサウス諸国を取り込んでいこう」というのが1つのテーマです。

中国への牽制 〜ウクライナ支援を再度表明

クラフト)2つ目は中国への牽制として、「自由で開かれたインド太平洋」の安全保障枠をさらに連携・強化していくということです。3つ目は、中東問題で忘れがちですが、G7で結束し、ウクライナ支援を再度表明することです。いま、米下院でウクライナ支援が紛糾してしまっています。

飯田)予算が尽きそうになっているという話です。

クラフト)最終的には予算は付くのですが、年内は難しい。その間に、日本と欧州がどう支援していくかを議論する。

4つ目が中東問題

クラフト)最後が中東問題です。10月22日に、G7から日本を除いた6ヵ国が共同声明を発表しています。日本は昔から中東に対しては全方位外交を行い、イスラエル側にもアラブ側にも寄らず、中立的な立場を取ってきました。そのため、6ヵ国によるイスラエル支援の共同声明に乗らなかったのです。

飯田)中立な立場を保つために。

クラフト)「なぜ日本は乗らないのだ」などと批判されましたが、独自の立場があります。松野官房長官の会見の説明は理解できませんでしたが。

飯田)「邦人の誘拐や行方不明者が発生していないから」と言ってしまって……。

中東諸国に対して続けてきた日本の全方位外交が活きる 〜中立的な立場であることをG7として共同声明を発表する

クラフト)あれは口実で、本音は全方位外交により「どちらにもつかない」ということです。それが今回の外相会合で活きるでしょう。関係者と話しましたが、アメリカは悩み困っているのです。当初、イスラエル側についてしまったけれど、ガザ地区への空爆によって、パレスチナ人の犠牲者が増えています。しかし、イスラエルに自制を促してもまったく聞かない。

飯田)停戦を求めてデモも起きています。

クラフト)G7としてはここで軌道修正し、より中立的な立場を取って、G7全体としての共同声明を出そうと。日本政府はイスラエル側からも、アラブ側からも中立と思われている唯一のG7諸国なので、その立場を上手く利用することができるのです。上川大臣がイスラエルとアラブ諸国を訪問していますが、おそらくそういった説明をしているのだと思います。唯一、中立的な役割を担える国が日本なのです。

飯田)そして、今年(2023年)のG7議長国でもある。今年のうちに声明を出しておかないと、来年には議長が変わってしまいます。

クラフト)今回の外相会合で声明ができれば、来年のG7首脳会議の声明文にも適用されるので、その礎をつくる意味でも重要な外相会合だと思います。

日本がG7各国をまとめて声明文を構築する

飯田)日本はパレスチナに対しても、人道的な部分での支援や能力構築を地道に続けてきました。これは他国とはイメージが違うのですか?

クラフト)日本の輸入原油の95%が中東からのものです。日本の方が中東依存度は高いので、安易にイスラエルや他のG7各国に乗れないところがあります。日本の独自外交を貫く姿勢は評価していいと思います。

飯田)今回、どのような声明が出るのでしょうか?

クラフト)声明文が構築できない。あるいはG7諸国で温度差が出てしまったら失敗になりますので、どこまで日本がうまくまとめられるかが注目だと思います。

日本がリーダーシップを発揮して停戦に持ち込むことが大事 〜アメリカが呼びかけてもアラブ側は信用しない

飯田)「人間の尊厳」というキーワードは、総理の国連演説でも出ていますね。

クラフト)そういうとき、よく「戦争はいけない」などと正論を言います。それはそれでいいのですが、イスラエルとパレスチナの問題は正論では解決できません。とにかく停戦することです。しかし、アメリカが「停戦」と言っても、アラブ側は「そう言いながらイスラエルに有利な形にするのだろう?」と考えてしまうので、ここは日本がそういう役割を担うことが大事だと思います。