■本日の言葉「a pair of」(一組の、一対の)■

肩の力を抜いたゆるい「暇ダネ」ニュースの英語をご紹介するこの金曜コラム、今週は、「パジャマで買い物に来ないでください」と禁止令を発した英国のスーパーと、「でも一番いいパジャマなのに」という客の不満についてです。「パジャマがだめで、どうしてジョギングパンツはいいの?」という、即答できそうでよく考えるとできない疑問についても。(gooニュース 加藤祐子)

○どうしてそんなにパジャマで外出

……というかそもそも、どうしてそんなにみんな、パジャマで外出したがるのかと。その疑問の方が、私は先に立ったのですが。

いや、話が先走りました。どういうことかというと、こちらの29日付英タイムズ紙記事によると、英大手スーパーチェーンの「テスコ」が西部ウェールズのカーディフ市で、「ほかのお客様に不快感を与えないよう、ご来店の際には適切な服装をしていただきますようお願いします(履物は常時お履きいただきます。また寝間着はお断りいたします)」という内容の「入店心得」を張り出したのだそうです。なぜなら、はい、パジャマで買い物に来る客が(複数)いたから。

そして案の定というか早速というか、パジャマ姿で「ちょっとタバコを買いに」やってきた24歳女性のエレインさんが、警備員に連れ出されてしまったのだそうです。

タイムズ紙に対してエレインさんは、「クマとペンギンが描かれてる、すごくステキなパジャマなんです(I've got lovely pairs of pyjamas, with bears and penguins on them)。きちんとしようと思って、せっかく一番いいのを着たのに(I've worn my best ones today, just so I look tidy)」と。

呆れつつも英語うんちくです。パジャマのつづりは「pajamas」だったり「pyjamas」だったり色々ですが、常に複数形です。そして「I'm wearing pajamas(パジャマを着ています)」という言い方もしますし、「I'm wearing a pair of pajamas」と「パジャマ一組」という言い方もします。エレインさんのコメントでは「pairs of pyjamas」と「pairs」が複数形になっているので、彼女の発言が文法的に正しいとすると、クマさんとペンギンさん柄の「パジャマを何組ももっている」ということになります。

(ネイティブな友人に確認してみたら、「I'm wearing a pajama」も言わなくもないけれども、文法的には違うね、と。「そもそもパジャマの正確な文法なんて、考えたこともなかった」と)

なぜパジャマが常に複数形か。なぜ「a pair of 〜」という言い方もするか。これはパジャマが上下一組だからです。同じように、靴一足は左右が揃って一組なので、「a pair of shoes」。ハサミも刃が二枚一組なので「a pair of scissors」。メガネもレンズが二枚一組なので「a pair of glasses」。「I have scissors, I wear glasses」と常に複数形です。「I'm wearing a shoe」は、靴を片足だけ履いている意味。両足ちゃんと履いているなら「I'm wearing shoes」とか「I'm wearing a pair of shoes」です。

靴ついでに考えてみれば、「両足」がらみの英単語はだいたいが、ひとつでも複数形です。「パンツ」(ズボンの方)は「pants」や「trousers」だし、「パンツ」(下着の方)」も「pants」や「knickers」(イギリス俗語、女性用のみ)です。

○どうしてパジャマはダメなの

で、まあ、「せっかく一番いいパジャマを着てったのに、どうして店に入れてくれないのよ」という不満だけなら、私もあえてコラムに取り上げようとは思わなかったかもしれないのですが、このエレインさんはさらに「どうしてパジャマがダメで、ジョギングパンツがいいのよ。パジャマ姿を不快に思うっていうけど、ジョギングパンツはどうなのよ」と屁理屈、あいや問題提起。

確かにねえ……。体の色々な線がくっきり出ているピッチピチのジョギングパンツと、それは何も隠していないじゃないかというスケスケピチピチのランニングシャツで、かつ汗まみれで、スーパーで買い物している男性を、確かに私はイギリスやアメリカで見たなあ……。そしてそのたびに確かに、目をそらしたなあ……。

ジョギングパンツもそうですし、日本の場合はジャージですよね。パジャマがダメなら、パジャマ代わりにしているジャージはどうなのかと。どの程度のくたびれ具合から、ジャージはご近所の買い物着としてアウトなのか。膝が抜けまくった、毛玉だらけのクタクタなジャージよりは、このエレインさんではありませんが、「一番いいパジャマ」のほうがましなのではないか……?

いや、その理屈は何かがおかしい。「エレイン理論」に取り込まれている気がします。そもそもどうして、パジャマだろうがジャージだろうが、寝間着で買い物に行くのか。あるいはさらに考えると、なぜ寝間着で買い物に行ってはいけないのか。「みっともないから」の一言に尽きるはずと思っていたことが、あれはどうだこれはどうだと考え始めたらよく分からなくなってきてしまいました。

タイムズ紙記事によると、イギリスではパジャマで外出したいという人がなんだかあちこちにいるらしいです。中部マンチェスターでは開業医が、「寝間着で診察に来ないように」と患者に通達。北アイルランドの西ベルファストでは、マンション管理会社が住民に、寝間着で共有スペースを歩かないでくださいと。やはりベルファストでは小学校のマラソン大会で、児童の母親50人がパジャマ姿でやってきたため、校長が「きちんとした服装を」とお叱りの手紙を出す羽目に。そしてなななんと、Facebookでは「リバプールの女たちが表でパジャマを着るのを止めさせろ」というコミュニティに1万人以上が参加しているとか。リバプールではそんなにあちこちで、女たちがパジャマ姿で歩いているんでしょうか?

パジャマ外出症候群はイギリスだけかと思ったら、朝日新聞のこちらの記事によると、中国・上海でも昨年11月、「パジャマ外出禁止令」が出されたそうです。

パジャマというのは不思議なもので、もう誰がどうみても「パジャマ!」なものもありますが、店頭で見ている分には、あるいは家の中で見ている分には、「これ、普通のシャツとして(あるいはカットソーとして)通用するんじゃない?」と思いたくなるデザインのものが、時々ありますよね。「ちょっと、家の前のコンビニに行くだけだし、大丈夫じゃない? コート羽織るし」と思いたくなるような。でもそれは自己欺瞞なんです。自分は大丈夫だと思っていても、絶対にそれは「あ、あの人、パジャマ着てる」って分かってしまうんです。なんでだか。で、そういう時に限ってコンビニで、知り合いに会ったりするわけです。「あら加藤さん、こんにちは」とか挨拶されてしまったりするわけですよ……。


◇本日の言葉
a pair of = 一組の、一対の

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◇筆者について…加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊と同い年。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ・パイソン」の洗礼を受け、イギリス英語も体得。怪しい関西弁も少しできる。オックスフォード大学、全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイトで米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。米大統領選コラム、「オバマのアメリカ」コラムフィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。英語屋のニュース屋。