■本日の言葉「first in line」(先頭、最優先)■

ついに日本国内でも新型インフルエンザが発生し、18日午前零時現在、約90人の感染が確認されました。私たち各自が冷静に、かつ周到に感染防止対策をとるのはもちろんですが、同時にどういう人が感染しやすいのか知ることは、効果的な対策実施に必要です。とすると、世界中で感染者の平均年齢が20代、アメリカでは15歳だというのは、とても示唆的なことだと思うのです。(gooニュース 加藤祐子)

○なぜ高校生ばかり


17日付のワシントン・ポスト紙に、「Age of Flu Victims have Big Implications(インフル患者の年齢に重大な意味)」という記事が掲載されました。かねてから断片的に指摘されていたことをまとめた内容で、要するに、今回の新型インフルは従来の季節型インフルとは違うぞ、というもの。なぜなら、新型インフルエンザ感染者は平均年齢が15歳で、3分の2は18歳未満だから。入院が必要なほどの重症者の過半数は5歳〜24歳だから。つまり、乳幼児と高齢者に重症者が集中しがちな季節型インフルとはかなり違うぞ、と。

アメリカでは当初、メキシコ旅行から帰国した高校生たちの感染が発覚。日本でもカナダから帰国した高校生が、成田の検疫で確認された国内第一号でしたし、今でも感染者のほとんどが高校生です。

ポスト紙は、若者に感染が目立つ理由として、メキシコ旅行した高校生がアメリカにウイルスを持ち込む「媒介者」となったのかもしれないと指摘。けれどもそれなら、高校生の家族を皮切りにもっと幅広い年齢層に広がってもよさそうなもので、それだけで高校生に集中的に感染拡大している説明にはなりません。

同様に日本でも、神戸や大阪での感染経路はまだ不明ですが、ウイルスがどうやって神戸や大阪にたどりついたにせよ、やはりそれがなぜ高校生を集中的に感染させているのかの説明はまだありません(ウイルスがいったん高校生の集団に入れば次々と高校生に感染するのは、日の目を見るより明らかですが、それでも家族への感染がほとんどないのはやはり不思議)。

世界保健機関(WHO)のケイジ・フクダ事務局長補代理は14日、「この新型ウイルスに感染したほとんどの人は比較的年齢が若いというのが、傾向として見えている。感染者は60歳未満で、平均年齢は20代だ」と発言していますが、アメリカや日本ではさらに平均年齢は若くなりそうです。

(余談ですが、このフクダ氏は日本生まれの日本人なのだけれども、子供時代に渡米して今は米国籍なのだそうです。こちらの毎日新聞の記事で疑問が解けました)

○大人には実は免疫が?

5月8日付の英インディペンデント紙によると英政府の保健当局は今月初めの時点で、若者の被害が増えそうだと警告していました。英主席医務官のサー・リアム・ドナルドソンは、若者は今回のウイルスに免疫がないようだと指摘。今回の新型ウイルスはヒト型とトリ型とブタ型の特徴をもつ交雑型。もしかしたら一定の年齢以上の大人は、今回のウイルスのヒト型部分がよく似たウイルスにすでに接触済みで、そのため免疫ができているのかもしれないというのです。

ワシントン・ポスト紙などによると、1918年に5000万人以上が犠牲となった悪名高いスペイン・インフルエンザ(スペイン風邪)のケースでは、死者の半数近くが20〜40歳で、死者の95%以上は65歳未満でした。当時、高齢者の犠牲が少なかったのは、1885年ごろに流行した類似ウイルスに接触していた世代は免疫ができていたからではないかと言われている。そして今回も、同じような現象が起きているのではないかというのです。

今回の新型インフルエンザも同じように、高校生など特定の年齢層がもっとも感染し易いのだとしたら、感染防止対策もその特定の年齢層を意識する必要があります。

ポスト紙は、感染者の年齢幅を正確に把握するのは不可欠だという、米疾病対策センター(CDC)のインフルエンザ疫学担当ジョセフ・ブリジー氏の意見を紹介。ワクチンを最初に受けるべきは誰か、抗ウイルス薬が不足しはじめたらまず誰に優先して与えるべきか、治療の優先順位がそれで決まるからです。

確かに、感染するのが主に高校生なら、学校での対応はもちろんゲームセンターやカラオケや、たとえば東京なら渋谷や原宿での対策は不可欠でしょう。一方で高齢者なら巣鴨で…ということになるのでしょうか。ともかくも、年齢によってとるべき対応がかなり違うだろうというのは、私のような疫学の素人にも容易に想像できます。

○列の先頭に立つべきは誰か


ここから英語解説です。本日の言葉に選んだ「first in line」は文字通り訳せば、「列の一番目」。この表現を使ったワシントン・ポスト紙記事は「who should be first in line for vaccines」と書いていて、そのまま訳せば「ワクチンの行列の先頭には誰が立つべきか」。もうちょっと意味を広げると、上記したように「ワクチンを最初に受けるべきは誰か」とか「優先的にワクチン接種を受けるべきは誰か」など、そういう日本語になります。

ほかの使い方としては、たとえば「the Crown Prince is the first in line to the throne(皇太子は王位に最も近い、継承権一位だ)」とか。「I'm first in line for an iPhone(iPhoneを買う行列の先頭にいるよ)」とか。「Working mothers are the first in line in the new president's welfare policy (新大統領の福祉政策で最優先されているのは、働く母親たちだ)」とか。

要するに、文字通り物理的に行列の先頭にいるのも「first in line」ですし、比喩としてほかよりも優先されているのも「first in line」なのです。

○ Muchas gracias, Mexico!

そして新型インフルの「first in line」といえば何をさておいても、世界的感染の最先頭にいたメキシコです。「Mexico was the first in line of the flu outbreak」と言うわけです。そのメキシコについて、これを書きながら観ていた17日夜のCNNで、ニューズウィーク誌国際版編集長のファリード・ザカリア氏が、良いことを言っていました。

別の人のコメントを引用してザカリア氏いわく、WHOの当初予想よりも感染の拡大がかなり抑制されているのは、メキシコ政府が素早く大々的な対策を打ったからだと。メキシコが感染拡大防止のために徹底的に患者を隔離し、国の経済活動を事実上停止させ、その結果として莫大な経済損失を被ったからこそ、世界は爆発的な感染拡大を免れたのだと。ゆえに世界中は立ち上がってメキシコに向かって「Muchas gracias, Mexico(どうもありがとう、メキシコ)」と言わなくてはならないのだと。

なので日本の東京という世界の一隅から、声を大にして言います。Muchas gracias, Mexico!


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◇筆者について…加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊と同い年。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ・パイソン」の洗礼を受け、イギリス英語も体得。怪しい関西弁も少しできる。オックスフォード大学、全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイトで米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。米大統領選コラム、「オバマのアメリカ」コラムフィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。英語屋のニュース屋。