■本日の言葉「cash not ash」(灰ではなく現金を)■

国際ニュースの英語表現をご紹介する月曜コラム、今週はアイスランド火山噴火の影響についてです。「cash not ash」というのは慣用句ではなく、Twitter上を飛び交っているブラックジョーク。誰に向かって怒っても仕方がない天災に立ち往生する人たちは、せめてものユーモアで乗り切ろうとしているようです。(gooニュース 加藤祐子)

○困った時のブラックユーモア

BBCによると、エイヤフィヤトラヨークトル火山の噴火から4日間で欠航となったフライトは6万3000便。影響を受けている旅行者の数は680万人とも言われていて、多くの人がたとえばTwitterなどでさかんに情報を交換しています。これを書いている19日午後の時点では、KLM航空の「私たちの貨物機2機が無事にシャルジャ首長国とバンコクに着陸。火山灰の形跡は全くなし」というツイートが、さかんにRT(リツイート)されています。

移動手段についての情報以外にTwitterを飛び交っているのが、噴火がらみのジョーク。冒頭でご紹介したのもその一つです。「Dear Iceland, we asked you to send CASH not ASH! (親愛なるアイスランド、送ってくれと言ったのはキャッシュ(現金)だよ、アッシュ(灰)じゃなくて!)」と。

2008年秋の金融危機に端を発してアイスランドの銀行が次々と債務不履行に陥った影響で、主にイギリスやオランダの個人投資家たちが大損害を被った。アイスランドのせいで失った「金を返してと言ったのに、なんで灰をよこすのよ」というほどの意味です。

いまだに多くの人が足止めをされ、航空業界はこのままでは破綻だと悲鳴をあげていて、航空貨物もストップしてしまっているこの状況はもちろん、決して笑い話ではないのですが。けれども笑うしかないという時もある。幸いにしてまだ人命は損なわれていないようなので、こういう時こそのブラックユーモアなのかもしれません。

ちなみに英語には「gallows humour(絞首台でのユーモア)」という表現さえあって、この「cash not ash」もその一例と言えると思います。

ニューヨーク・タイムズによると、アイスランドそのものには噴火の被害はあまり出ていないそうで、かの国で有名な政治討論番組の司会エギル・ヘルガソン氏は「自分たちの災難を外国に輸出するのが、ずいぶん上手になった」とついつい自嘲的な発言をしたのだとか。これもまた一種の「gallows humour」でしょう。

ところで、冒頭であっさり書きましたが、噴火した火山の名前。「エイヤフィヤトラヨークトル火山」。すらすらっと言えますか? カタカナをゆっくり読めば一応は読めると思うのですが、英語圏のニュースは、アナウンサーたちが発音に四苦八苦。アルファベットのつづりは「Eyjafjallajökull」。知らなければ絶対に読めないと、そう断言できる文字列です。

欧州からは対岸のなんとやらなニューヨーク発なので、今ひとつ緊張感に欠けるこちらのニューヨーク・タイムズ記事は、わざわざ街に出て「これ発音できます?」と通行人に聞いて回る始末(北欧出身の人しか、発音できませんでした)。同紙はこのほか「外国人が火山の名前をぐちゃぐちゃに発音するのを聞いて、アイスランドの人たちは大笑いしているらしいよ」という記事まで載せています。

決して笑い話ではないのですが。それでも、空港でただじっと再開を待つ人たちにこういう記事が届いて、少しでも気をまぎらせてもらえるのなら、意味はあることなのかもしれません。