■本日の言葉「innuendo」(ほのめかし、あてこすり)■

国際ニュースの英語をご紹介するこのコラム、今回は日本ではほとんど全く報道されていないものの、アメリカではかなり話題になっている、最高裁判事の候補についてです。しかも争点は、その人が同性愛者かどうか。あるいは同性愛者かどうかを争点にすべきか。そんなことが争点になっている今のアメリカの一部報道によると、「ソフトボールをしてるから彼女はレズビアンかもしれない」のだそうで……。いやはや。(gooニュース 加藤祐子)

○肘でつつかれウインクされたら

アメリカでは現職の最高裁判事の辞意表明に伴い、オバマ大統領が10日、後任にエレーナ・ケーガン訟務長官(50)を指名しました。その翌11日、世界に名だたる経済紙『ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)』はなぜかその1面トップに、17年前のケーガン氏がソフトボールのバッターバックスに立っている写真を掲載。そしてその2日後の13日、WSJと同じマードック系『ニューヨーク・ポスト』がこの写真を転載し、その横に「この写真は、最高裁判事候補エレーナ・ケーガンがレズビアンだと示唆しているのだろうか?」という見出しの記事をドーンと。記事の中身は「ソフトボールというのは、レズビアンに人気なスポーツだ」というもの。

「示唆しているのだろうか」ではなく、あなたたちが示唆してるんでしょうが——と、アメリカのリベラル系メディアでは非難の嵐。こんな悪意あるほのめかしは報道機関として最低なやり口だというその怒りに、私も賛成なのですが、このコラムをその怒りのはけ口にするつもりはありません。

あまりに日本人になじみのない話題なので、日本ではほとんど報道されていないのもやむなしと思いますが、「アメリカというのはこういう国」と一端を知るには実に象徴的な話なので、少し解説したいと思います。

ちなみに上記の『ニューヨーク・ポスト』見出しは「suggest(示唆)」という言葉を使っていますが、こうやってそうとははっきり言わず隠喩のようにして示唆することを「innuendo(ほのめかし、当てつけ、当てこすり)」と言います。

別の言い方で「nudge-nudge-wink-wink(でしょ? ですよね?——という意味をこめて会話の相手を自分の肘で軽くつつき(nudge)、ウインクすること)」というのもあります。英語圏の人にいきなり肘でつつかれてウィンクされたら、「だよね?」と相づちを求められているのです(nudge-nudge-wink-winkはモンティ・パイソンのファンにはおなじみの名コントでもありますが、それは完全な脱線)。