英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週は、日本企業の疑惑について英語新聞を読まないと詳しく分からないのは困ります——という話についてです。こういうことが続くと、英語読者が抱く「日本」のイメージと、日本国内の日本人が思う「日本」のイメージがずずずっと乖離していってしまう。そして(一部だと思いたい)外国人が日本企業や日本メディアに対して抱く悪いイメージが、「そらみたことか」と補強されてしまう。非常によろしくありません。はい、オリンパスについての話です。(gooニュース 加藤祐子)

○「文化の壁」が出たら疑え

前置きですが、私は3月11日からこちら何かというと「いやいや、日本の主要メディアがそれをどこも書いてないというのは、誤解ですから」と弁明してきた気がします。別に主要メディアの関係者じゃないのに。自分はもう新聞記者じゃないのに。「日本メディアはどこも東電に広告費という形で首根っこを押さえられているから、どこも東電批判をしない」とか、「日本メディアはどこも反原発運動について書かない」などという粗雑な印象論で物事を断定する人、自分が目にしたものが普遍的な真実でことの全てだと思い込む人に対して、ネット上で、あるいは面と向かって、「いやいや、そんなことないから。全てがそうではないから」とか、「あなたが見ていないからといって報道がなかったわけじゃない。現に……」などと反論してきました(日本メディアを擁護したいというより、粗雑な印象論による非論理的な断定が嫌いなのです)。つい先日も、「福島第一原発事故の後、東京はゴーストタウンだったのに日本メディアは書かなかった」と主張する外国人相手に、「それはあなたが見た東京の一角であって、私の周りの東京はゴーストタウンではなかった」とやりあったばかりです。

けれども今回はさすがに……。オリンパス問題について日本の主要メディアは確かに当初、14日の会社側の発表を書くばかりでした。「企業風土や日本の文化を経営に生かすことを理解できなかった」と。

そもそも7月の時点で、問題は雑誌『ファクタ』8月号に指摘されていたのに。

すでにかなりの疑惑が指摘されていた会社で、8カ月前に社長に就任したばかりの社長兼CEOがいきなり解任されたというのに。日本の主要メディア確かに当初、「経営手法の食い違い」「独断的な経営手法」「コミュニケーションや文化の壁を打破できなかった。日本の経営文化も理解されなかった」などといった事柄が理由だとする会社側の言い分をもっぱら書いていました。まるでマイケル・ウッドフォード社長が、社外・国外からいきなり引き抜いてきたまったくのお雇い外国人社長だったみたいに(「勢力争いか」とか「解任理由を疑問視」という指摘もあるにはありますが)。

「日本は外国と違うんです。日本には日本のやり方があるんです」と言いつつ、「日本は国際社会の有力な一員」でもありたい。それは日本人の多くが(幕末のころから?)抱えている自己矛盾だと思います。けれども「日本特殊論」を日本人が、日本の会社が、日本のマスコミが、言い訳として使うのは、非常に悪い癖です。自分たちに対するステレオティピカルなイメージを自分たちで補強してそこに寄りかかっている。それは甘えであり、結局は「日本はよくわからない国。つきあいにくい国。ビジネスしにくい国」というマイナスイメージにつながるのに。

そもそも買収取引について疑惑が提示されている会社が、就任間もない外国人社長をいきなりクビにした。しかも理由として「文化の壁」を挙げてきた。それだけでもうかなり「くさい」と思わずしてどうするのでしょう。安易な説明で何かをごまかしていないか、と。少なくとも「日本と外国」というものを何かと意識してきた人ならば、ピンとくるはずではないでしょうか? 

しかし日本の主要メディアは会社の会見を受けて、会社の言い分だけを書いた(それともかなり「くさい」とは思ったけれども、ウッドフォード氏を取材しようにもつかまらず、書きようがなかったのか)。そして解任されたばかりのイギリス人前CEOは、「会社は、私の発言を封じ込めようとするはずだ」と恐れ、空港に行けと言われたその足で、英紙『フィナンシャル・タイムズ』の記者に会いに行った。

この時ウッドフォード氏を取材した同紙のジョナサン・ソーブル記者によると、会社を追われた同氏は、尾行が怖いから公園で会いたいと言っていたとか。まるでジョン・ル・カレのスリラー小説です。

そして『フィナンシャル・タイムズ』は14日付(日本時間は15日)で、ウッドフォード氏の言い分を報道。日本語訳はこちらです。優れた製品の優秀なメーカーとして海外でも有名な日本企業で、外国人社長がクビにされた。しかもクビにされた社長と会社側の言い分があまりに違い、しかも日本の主要紙が会社側の言い分しか書いていない。その異常事態に気づいた(主に日本に詳しい)外国人たちは、Twitterをはじめあちこちで、「それみたことか!」の大合唱でした。そして日本が国外でどう見られているか承知の日本人は、「あ〜あ」と。

『フィナンシャル・タイムズ』はこの後、オリンパスの企業買収の内容を問題視する記事を連発(その一部はこちらで訳しています)。他の外国メディアも「それっ!」と言わんばかりに追いかけました。「Olympus scandal」で英語記事を検索すると、これだけ書かれているのが分かります。

一方で日本の新聞が「英紙報道」と『フィナンシャル・タイムズ』を引用する形でようやくウッドフォード氏の「反論」を書き始めたのは、18日付くらいからです……。