英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今回も原発についてです。それから、被災した地元を元気づけたいと甲子園を目指す高校球児たちについて。「背筋をまっすぐに伸ばして、どこまでも丁寧な」球児たちが大人になった時、日本は原発をバンバン使い続けているのか、それとも段階的に減らしつつあるのかを考えながらこのコラムを書いていたら、菅直人首相が国会で12日、原発依存を下げざるを得ないと発言。それを英語メディアは速報してきました。英語メディアはストレステストについて首相が謝ったかどうかなどより、日本がこれから原発をどうするのかをじっと注目している。そんな印象です。(gooニュース 加藤祐子)

○「ゴタゴタちらかった政治」

米紙『ニューヨーク・タイムズ』のマーティン・ファクラー東京特派員は6日付の「日本政府、原子力発電所の安全査定を計画」という記事で、ストレステスト実施について海江田万里経産相が立地地域の住民にさらなる安心感をもってもらうためだと述べたと説明。「そもそも定期検査のために休止中だったものの3月の震災以降、再稼働していない何十基もの原発について日本政府は、各地の首長に再開を許可してもらおうとしている。そしてこの間、地元合意の問題が事態の前面に出てきている」と。

記事は日本の原発が13カ月ごとに定期検査のため休止しなくてはならない仕組みを説明し、「もし休止中の原発が再開しなければ、来年4月までに全ての原子炉は停止し、電力不足につながりかねないと専門家たちは警告する。しかし福島の事故は、原子力発電に対する世論の反発を引き起こした。その結果、政府は原子炉再稼働に必要な合意を立地自治体の首長たちから取り付けるべく、困難な戦いに直面している」と書いています。

ちなみにファクラー記者は先週ご紹介したように、佐賀県の古川康県知事や玄海町の岸本英雄町長に取材した上で、そもそも国のエネルギー政策の転換点となりかねない大きな判断を政府が自治体の首長に預けてしまったと、2日付記事で批判していました。

英紙『ガーディアン』のジャスティン・マッカリー特派員はストレステストについて、「日本の原子炉は再開前に津波テスト合格が必要」という見出しの11日付記事で、「安全性に対する市民の恐怖を和らげようとしながらも、政府は来年4月までに全ての原子炉が停止するという最悪のシナリオを考慮しなくてはならない。今後も定期検査のため原子炉が次々と休止していくからだ。全ての原発停止となったら、十分な発電力が失われ、2012年の夏まで続く電力不足という状態になるかもしれない」と書いています。

英紙『フィナンシャル・タイムズ』のジョナサン・ソーブル記者は「原子力の後退、日本のエネルギー不安で再燃」という11日付記事で、「日本政府はこれまで慎重な脱原発を示唆してきたが、福島第一での原子力メルトダウンから4カ月たった今、性急でバラバラな撤退という、別なものに変質しつつあるかもしれない。もしそうなれば、深刻なエネルギー不足に陥ると経済界は懸念している」と書いています。日本は慎重で段階的な脱原発に取り組むのではなく、エイヤッと一気呵成に原発の使用を止めてしまうのではないかと。

そして、玄海原発の再稼働をいったん容認した岸本町長が政府のストレステスト実施方針を受けて容認を撤回するという流れについて、記者は「高まる反原発感情と、この国の移ろいやすくゴタゴタした政治に対して、この国の残された原発はきわめて脆弱であることが露呈された」と書きます。

「ゴタゴタとした」と訳した言葉は「messy」。名詞は「a mess」。部屋が散らかっている英語圏の子供は「this room is a mess」とか「your room is messy」とさんざん言われて大きくなるものです。髪がバサバサなら「My hair's a mess」とか。人生がぐちゃぐちゃなら「my life's a mess」とも。要するに、この国の政府はバサバサでぼろぼろでぐちゃぐちゃでとっちらかった「messy」な状態だと言われているわけです。まあ、どの国でも政治とはそういうものかとも思いますが。

(完全な余談ですが、この原稿を書きながらツイッターを眺めていたら、「Beleaguered PM makes minor cabinet changes(四面楚歌の首相、小規模な内閣改造)」というロイター通信の速報が流れてきて、「また?」と一瞬思ったのですが、あにはからんやインドのことでした)

○2030年に原発依存度53%とは

話を戻します。記事は、経団連を中心に多くの企業が原発再開を強く求めているのだが、「それでも既存原発に対する政府自身の支持そのものが、揺らいでいるように見える」と書きます。「Tokyo=政府」とはこの場合、菅直人首相のことです。

「菅氏の中道左派政権において、反原発感情を見つけるのは難しくない」とソーブル記者は続け、前回コラムでもご紹介した前原誠司氏の「20年かけて脱原発」という意見を例示。さらに、「菅氏自身が、反原発をテーマにした解散・総選挙を検討しているのではないかと、噂も流れている」と。そして、日本の原発が「思ったより早く」シャットダウンしたらどうなるのか、その「影響の全貌」がただいま「激しく議論されている」とも。

記事は続けて、もし全原発停止の事態になれば、東日本より原発依存度の高い西日本で来年夏、需要に対し発電量が7%不足するだろうという、SMBC日興証券のエコノミストの意見を紹介。そうなれば家庭も企業も節電を余儀なくされるが、しかしそれは実現可能な範囲だと。このところの東京では連日厳しい熱波にさらされつつも、ピーク時の電力消費量が昨年比10〜20%減に抑えられているのだから、と。

記事ではさらに、ゴールドマンサックスの日本担当チーフエコノミスト、馬場直彦氏が、政府の原発政策の曖昧さが最大の問題かもしれないと指摘。「もしエネルギー関連各社が天然ガスなど、原発に代わる代替エネルギーの能力を最大化すれば、電力不足は起きない」のだが、政府がはっきりした方向性を示さないので「今の状況では企業は設備投資計画が立てられない。明確な政策が示されていれば、企業は対応できるはずだ」と批判しています。

……と、こうして書いていたら、ロイター通信ブルームバーグ通信が、「菅首相、日本の原発依存度下げると明言」という記事を速報してきました。こちらの毎日新聞記事にもあるように、菅直人首相が12日午前の衆院東日本大震災復興特別委員会で、総電力に占める原子力発電の割合を2030年に53%するという政府のこれまでのエネルギー基本計画を「白紙に戻して考えるべきだ。原子力に対する依存は下げざるを得ないし、下がってくる」と述べたというニュースです。