○被害者ではなくチャンピオン

米紙『シカゴ・トリビューン』は「日本は被害者ではなくチャンピオンに」という記事で、「決勝戦を決めたPK戦で、日本の熊谷紗希が最後のペナルティーキックに備える間、傷ついた国は息を止めていた。日本にとって、これはサッカーの試合にとどまらない。多くの犠牲をもたらした地震と津波と原発の大災害で4カ月前に大打撃を受けた国が、激しい競争者としての心と魂を今でも持ち続けているのだと、世界に示すチャンスだった」と書いています。「自分たちはもう被害者のままではいないと、うちひしがれていた国が世界にそう宣言できた」とも。

上記した『ニューヨーク・タイムズ』記事でもヘレ・ロングマン記者が、日本の勝利は「希望と復興の上に築かれたものだ。打ちひしがれた国を元気づけた」と評価。「アメリカは長いこと試合を支配していたが、コントロールしきれなかった」とも。アメリカのディフェンスは日本の洗練された攻撃を決然と食い止め続けたが、それでも日本はしぶとく粘り、諦めなかったと。

米紙『ワシントン・ポスト』は18日の一面がこちらです。2点目の同点ゴールを決めた後の澤選手の大きな写真がトップ。チコ・ハーラン東京特派員の「日本にとって、誇りの杯が溢れる」という記事がトップ記事。『シカゴ・トリビューン』と同様に、「日本にとって、この勝利は被害者としての日々に、小休止を与えた」という論調です。日本人の誇りは「悲しみの中でも決して色褪せることがなかった。なので、アメリカに対するPK戦での勝利は、日本人の誇りを再燃させたというより、そもそもなぜ自分たちは国を誇りに思うのかを、復興しつつある国に思い出させたと言える」と。

震災の前まで日本は「なにより、その尊厳と優れた業績で名を馳せた国だった。日本の電車はよそよりも速く、食事はおいしく、アスリートたちはどこよりも懸命にトレーニングしていた。それに加えて日本は、女子の競技人口が少ないのに、優れたサッカーチームを作り上げていたのだ」とも。

記事はさらに、女子サッカーと震災がなにかと絡み合っていることを説明。佐々木則夫監督が試合の前に被災地のことを選手たちに語って奮い立たせたこと。今では福島第一原発の作業者たちが活動拠点としているナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」で、なでしこたちがかつてキャンプしたこと。代表チームには、東京電力女子サッカー部マリーゼ(TEPCOマリーゼ)の出身者もいること。福島第一が「世界中の心配を集めるはるか前」に、MF鮫島彩選手がそこで働いていたこと。

同じ『ワシントン・ポスト』ではサリー・ジェンキンスというスポーツ担当のコラムニストが「大興奮の試合をした両チームとも尊敬に値する」というコラムを掲載。「はっきりさせておこう。ワールドカップには、津波や原発メルトダウンをなかったことにできる魔法の力はない。しかし慰め、励ますことはできるし、果敢な抵抗というものについて本国へメッセージを伝えることもできる。日本のこの勝利にケチをつけるようなら、それこそあなたは醜いアメリカ人だ」と書いています。

日本サッカーのW杯優勝について書くつもりが、結局は地震や津波や原発事故について書いている。日本に関する世界の報道は、まだしばらくはこの状態が続くのでしょう。