○ I see your true colors shining through

たとえ恐怖を煽るつもりはなくても、ついついそういう表現になってしまうという報道の問題は、もちろん日本のメディアにも多々ありました。それはその記者や編集者や有識者の、本人の恐怖や不安の表れなのだろうと、ここ数日思うようになりました。原子力の専門家ではない著名人がもっともらしくご高説を展開した挙げ句に「自分は専門家でないから責任はとらない」と開き直ったり。原子力の専門家ではない知識人が観念的な恐怖と絶望を語るだけ語ってから、掌を返したような希望を語ったり。

ところで。日本人を励ましたいと、予定通り日本公演を敢行してくれたシンディ・ローパーのレパートリーに、「True Colors」という名曲があります。「くじけないで、諦めないで、怖がらないで、私にはあなたの本当の色が光ってるのが見えるから、だからあなたが大好き、あなたの本当の色は虹のようにきれい」という内容の曲です。

「true colors」とは日本語で言うなら、その人の本質・本性。ないしは「地金」のことです。この10日余り、これほどの危機的状況だからこそ、色々な人の地金が露呈されてきました。その中で、有名人で言えば、自分がかねてから敬愛し信頼してきた井上雄彦さんが黙々と「Smile」を描き続けたり、同じく敬愛して信頼している野田秀樹さんが「劇場の灯を消してはいけない」と(よりによって火山噴火が描かれる)舞台公演を再開したりと、「ああやっぱり、さすがだ」と涙が出るほど勇気づけられることも多くありました(ちなみに私の場合は、前から自覚はありましたが、「一見冷静な怖がり」というのが自分の地金でした)。

著名人だけでなく、一般人だけでなく、こういう危機に直面してこそ、マスコミもそのほかの企業もあらゆる組織も、政府も、国そのものも、それぞれの「True Colors」があらわになるのでしょう。

なので、現場で作業している勇敢な人たちが原発事故の抑制に成功できれば、私たちが放射性物質の影響も克服できれば、そして私たちが死者・行方不明者2万人超という凄まじい犠牲を悼みながら、避難生活を送る30万人超の人たちの暮らしを再建することができれば、それこそ日本はものすごい底力の国だと言うことになります。もちろんアメリカをはじめ各国の協力を得て復興するわけですが、日本はそれだけの協力を国際社会から得られる国だということでもある。そういうTrue Colorsの国だということになる。それはとてつもなく偉大なことです。一日も早く、日本の真の色が光り輝きますように。


◇本日の言葉いろいろ

・true colors = その人の本当の色、本質、本性、地金

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◇筆者について…
加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊や爆笑問題と同い年。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ・パイソン」の洗礼でイギリス英語も体得。オックスフォード大学修士課程修了。全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイトで米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。フィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。英語屋のニュース屋。最新の訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」(朝日新聞出版)。