英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースは、今週も溢れかえっています。4月になり、都内でもかなり桜が咲き始め、そして新年度になりました。国がこういう状態のさなかに新社会人となった知り合いの若者は、初任地が仙台に決まったそうです。この大変な時に地元の人たちと苦難を共にしながら、社会人としての一歩を歩き始めようとしているその青年のこと、これからの日本を作っていく彼のような多くの若者たちのことを考えながら、今週のコラムをまとめました。日本経済はどうなるのか、についてです。(gooニュース 加藤祐子)

○未曾有の惨事に遭った経済大国

国内総生産(GDP)で中国に抜かれたとはいえ、日本は世界3位の経済大国なのだと、その意味をこのところ考えています。連日の日経平均を眺めながら。未曾有の大惨事に襲われ、死者・行方不明者が警察に届け出されているだけで2万8000人近く。事故を起こした原発は安定化の見通しが立たず、より大きな深刻な事態を避けるためだからと放射能汚染水を海に捨てるしかない、そういう状況なのに。5日前場は(112円17銭安とはいえ)9606円72銭で引けています(3月15日終値は8605円15銭)。危機の性質が違うので単純比較はよくありませんが、リーマン・ショック後の2008年10月には一時7000円台を割り込んだことを思います。そして震災発生から3週間の間に道路や鉄道が少しずつ復旧し、物流が少しずつ復活していることも。それに対してライフラインはなかなか戻らず、支援の手がなかなか届かない避難所もまだまだあることも。そして世界第3位の経済大国たるこの国で、そのエネルギー受給の一端を担っていた原発施設が引き起こしている、終わりの見えない悲劇のことも。ぐるぐると考えています。

ではその世界第3位の経済大国はこれからどうなっていくのか。震災後に再集計した日銀短観で景況感が悪化していたと4月4日に発表されましたが、それはまあ、私のような経済素人にも当たり前と思える話です。逆にそうでなかったらかえって気持ちが悪い。3月31日に発表された3月の購買担当者指数(PMI)も、前月の52.9から大きく後退して46.4。下げ幅は記録を取り始めた2001年以来、最大だとのこと。

その一方で世界銀行は震災から10日後、原発事故の悪化も進んでいる3月21日の時点で、「大震災の影響 — 日本の成長に対しては『一時的』、堅調な域内経済に対しては『限定的』」と報告していました。

雨が降ったせいで都内でも放射線測定値がグッと上昇したすぐ後でした。「都内にいながらそんなに怖がったらバチがあたる」と思いつつも「まるでブレードランナーだ……」と、ぼんやり雨音を聞き、精神的ダメージを受けていた矢先のことです。

世界銀行は「大震災と津波により日本の実質GDP成長率は一時的に鈍化するものの、復興努力が進むにつれ、2011年央以降は回復に向かう見込み」と報告。世銀の東アジア・大洋州地域担当チーフ・エコノミスト、ヴィクラム・ネルー氏は、「現段階では、東アジア地域に与える経済的影響はかなり短期的なものとなる見通しだ。直後の影響として顕著なものは、貿易と金融だろう。日本は、復興の取り組みが加速するにつれ、経済が浮上する見込みだ」と書いています。

そしてこの時点の世銀推計は、地震と津波による被害規模は日本のGDPの2.5〜4%に相当すると試算しています。2011年のGDPは減り、復興・再建には5年かかるが、復興活動が活発化するに伴い関連産業の成長は回復するだろうと。

復興まで5年ですか。冒頭で書いた社会人1年生も、そのころにはそこそこイッパシになっているはず……。

(ちなみに阪神大震災の被害総額10兆円は対GDP比2%。そして日本政府は、東日本大震災の被害総額は16〜25兆円になると試算しています。25兆円の場合、GDPの約5%です)

世銀のエコノミスト出身で今や英『フィナンシャル・タイムズ(FT)』の名物ともいえるコラムニスト、マーティン・ウルフ氏は15日付で、「日本は地震の試練に耐えられる」と書いています。「このような悲劇に慣れている文明があるとするなら、それは日本の文明だ。日本の人々は何とか乗り切るだろう。それは確実だ」と。では、経済への影響は? ゴールドマン・サックスの試算によると、震災被害で失った資産総額はGDPの4%で国富の1%未満(ゆえに3月11日から15日にかけて日本株式市場がGDP比12%も失ったのは、過剰反応だったのだろうと)。そして同社試算によると、もし電力供給が4月末までに安定するなら4〜6月期の実質GDPが下落した後に7〜9月期で回復するだろうが、もし2011年の間ずっと電力不足が続くなら年間GDPは縮小を続けるだろうと。

(この記事は15日付で書かれていますが、電力供給が4月末までに安定しそうもないことはもう分かっていて、今年中に回復するのかもよく分からない状況です、とだけ言わずもがなに補足します)

ちなみに経済協力開発機構(OECD)が震災前から予測している日本の2011年末の粗債務残高は対GDP比204%、純債務残高は同120%。対して、今回の復興費用はGDPの2〜5%。この数字を比べてウルフ氏は、日本がそもそも抱える巨額債務を思えば、復興にかかる費用などさほど大きな額ではないし、世界経済に与える影響もリーマン・ショックに比べれば大したことはないと評価します。日本では「昨年10〜12月期のGDPは2008年1〜3月期から4%減だった。つまり需要増とそれに伴う生産増の余地が、かなりある」のだから、復興特需はむしろ日本経済に良い影響をもたらすだろうという見解です。