英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週は日本人が暴動せず、ゾンビになって金融街を占拠することもせず、それでも毅然と果敢に互いを助け合い、被災地を支援するにはどうしたらいいのだろうか、というような話です。(gooニュース 加藤祐子)

○ 金の臭いにゾンビ群がる

「Too big to fail(つぶれるには大きすぎる)」からと税金をつぎこんで救済した金融機関が、今や巨額の利益を上げている。なのに、納税者の多くは仕事が見つからない。安定した収入を得られず、日々の暮らしはどんどん悪くなっていく。「corporate greed(企業の強欲)」のせいで国の富は国民の1%が独占し、残る99%は苦しんでいる。この極端な富の集中はおかしい。金持ちが過剰に優遇される仕組みはおかしい——だから「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」という草の根運動が、ニューヨークのウォール街を皮切りに、全米に広がりを見せています。金の臭いがする……と金の亡者となったゾンビがウォール街に押し掛けるばかりでなく、著名投資家ジョージ・ソロス氏やノーベル経済学賞受賞者のジョーセフ・スティグリッツ教授がデモに支持を表明しています。

そしてこれに先立ち著名投資家ウォーレン・バフェット氏は「自分より自分の秘書の方が税率が高いのはおかしい」と言い、オバマ米大統領もこれを受けて「百万長者や億万長者より中流家庭の税金が高いのは変だ」、「金持ちを優遇する今の税制を変えなくては。これは公平かどうかの話で、それを階級闘争などと呼ぶのはおかしい」と演説。

アメリカでは今、こういう状況になっています。そして欧州ではギリシャが債務危機に陥りかけており、夏にはご存知イギリスで貧困層の若者を中心に暴動が相次ぎました。

日本でデモと言えば9月19日の脱原発デモが記憶に新しいですが、その一方で、所得格差や税制の不公平をどうにかしろという大規模デモや暴動は今のところ起きていないようです(私の知る限り)。

けれども英紙『フィナンシャル・タイムズ』ミュア・ディッキー東京支局長は、日本政府が計画する被災地復興のための臨時増税が実は、「最富裕層の納税額が不当に少ない」と言われる日本における「静かにさりげない」所得再配分の方策なのだと書いています。

いわく、「アメリカとイギリスで最高税率をめぐる激しい議論が交わされる中、日本の当局は、静かにさりげなく金持ちから金を搾り取る(soak the rich)という、別のやり方を選んだようだ」と。そして「日本の復興増税案にも所得再配分の側面はあるが、それは本文ではなく注の部分に着実に埋め込んである。政府は所得税について一律5.5%の上乗せを提案したが、低所得者層の標準的な納税額は控除で減額されるので、実質的な増税分を負担するのは富裕層ということになる」、「つまり臨時増税は、富裕層の税率がここ数十年間ずっと下がり続けてきた日本において、ささやかながら重要な転換点となるかもしれない」のだと。

しかも増税には被災地復興という揺るぎない大義名分があるのだから、「金持ちの納税者は、一時的な増税についてあまり大騒ぎしない方がいい。(略)東北の人たちは大震災に遭いながら実に毅然としていたと世界中に称えられた。その人たちを支援するための増税に反対しようものなら、悪趣味(poor taste)と言われてしまうはずだ」とも。

しかしいくら『フィナンシャル・タイムズ』に「poor taste」と言われようとも、名目が震災復興であろうとも、増税は反対という声がこの世からなくなるはずもありません(税金払うの大好きなんていう人、いるのでしょうか)。なくなるどころか、毎日新聞日経新聞などの世論調査によると、東日本大震災の復旧・復興財源を賄うための所得税や法人税の増税について6割近くが反対という結果が出ています。

英誌『エコノミスト』も『フィナンシャル・タイムズ』の「soak the rich」記事について「うまいことを言う」と言及しつつ、「金持ちから搾り取るのはいいが、カラカラになるまでしぼり切ってしまうのはまずい」と論評。厳しい緊縮財政を押し通すほどの政治的意思が日本政府にあるとも思えないし、まして2013年に総選挙を迎える日本で、消費税を上げるほどの度胸が与野党にあるとも思えないので、日本は結局、またしても借金を増やしてしまうのではないかと書いています。