英語メディアが伝える「JAPAN」をご紹介するこのコラム、今週は11月12日に報道陣が福島第一原発を訪れたことについてです。安定化に向けて進展しているとアピールするのが政府や東京電力の狙いだったようだが、8カ月前の破壊の跡がそのまま残る現場の惨状を目にして、事故収束に向けての作業がいかに大変かを思った。これが、代表取材で現場に入った英語メディアの論調でした。そして同じ日にはアメリカの原子力関係団体が、福島の事故に関する詳細な報告書を発表し、ベントのタイミングについて注目していました。(gooニュース 加藤祐子)

○安定化への進歩を強調するはずが

ご承知の通り、政府と東京電力は12日、福島第一原発の敷地内を事故後初めて、報道陣に公開しました。英語メディアからは、代表取材で米『ニューヨーク・タイムズ』やAP通信が参加。複数の英語メディアが配信した『ニューヨーク・タイムズ』マーティン・ファクラー東京特派員の12日付記事「日本の原発ですさまじい破壊、間近で見る(Devastation at Japan Site, Seen Up Close)をご紹介します。

「福島第一原子力発電所にて」で始まるこの記事でファクラー記者は、何より印象的だったのは「爆発で破壊された原子炉の建物やにわか作りの防波堤ではなく、ぐちゃぐちゃな混乱状態だった」と書きます。巨大な原子炉建屋の周りの敷地には、大破したトラックやねじ曲がった鉄柱、壊れた建物の枠組みなどが散乱しているため、「日本ほど整然とした国において、8カ月前の大災害直後からこの光景がほとんど変わっていない、そのこと自体」が、収束作業に取り組む作業員たちの仕事の大変さを如実に物語っていると。作業員たちが一度使うごとに脱ぎ捨てる使用済みの防護服が、実に48万着もたまっていることにも触れています。

そして、報道陣を初めて迎え入れることで東京電力は「原発安定化に近づいているという自信の程を宣言しているようだった」けれども、わずか2週間前に2号機内部で核分裂が起きたのは「東電が言うほど安定停止には近づいていないのではないかと思わせられる、怖い兆候だった」とも書いています。

トンボが飛び交う原発施設内で報道陣を乗せたバスが線量の高い箇所に近づくと、バス内の線量計は300マイクロシーベルト毎時に達したと記者は書きます。つまり民間人の年間被爆許容量に届く水準に、わずか3時間で達してしまったと。さらに原発付近の様子については、「ひとけのない花屋の外で、放置された植物は枯れはてていた。ガソリンスタンドはカラスたちの住処になっていた。バスの中で記者たちの線量計は絶え間なく鳴り響き、バスが進むごとに高い数値を示した」と。そしてかつて富岡町で原発の安全性を観光客にアピールしていた案内施設(記事には「福島第一原発の」とありますが、おそらくこれは「福島第二原発エネルギー館」のことだろうと)では、民間人の年間被爆基準値の13倍にもなる線量が計測されたのだそうです。

この取材に「唯一の外国人カメラマン」として参加したAP通信のデビッド・グッテンフェルダー記者による写真の一部は、こちらで見られます。

同行した政府関係者によって、カメラにプラスチックの袋がかぶされてしまったため、設定を変えたり電池やメモリーカードやレンズを変えることができなくなってしまったそうです。そして記者は20キロ圏内の様子について「Everything looks like a ghost town inside the zone(圏内では何もかもがゴーストタウンに見える)」と書いています。要するに「死の街」です。

「地震の瓦礫が未だに積んである。自販機がただ虚しく立っている。正面の壁が崩れ落ちたパチンコ店を見た。生い茂る雑草や芝がひとけのない駐車場や歩道を覆い、飲み込み始めている。野良となった牛や犬や猫が今でもあたりをさまよい、カラスがごみを漁っていた。線量計の数値はここでは1〜7ミリシーベルトだった」と記者は書きます。

バスに乗ったまま原子炉に近づくと「何もかも破壊されている。壁はなぎ倒され、地震による巨大な穴の中で自動車がひっくり返り、ねじ曲がった鉄柱が逆さまに倒れていた。初期段階の冷却作業に使われたポンプ車が放置されている。何十本というホースが蛇のように地面を這い回り、開いたドアや壁の穴を縫っている。あちこちに水たまりがある。敷地内のほかの場所には何十人もの作業員が忙しくしていたが、原子炉の隣には、生き物の影も形もない。バスの中でさえ、線量計は300マイクロシーベルトを示した」と淡々と、けれども生々しく書いています。

AP通信のチームによるニュースビデオもあります。バスに乗っている記者の1人の背中に「David Guttenfelder AP通信社」とマジックで手書きされているのが見えます。「土曜日の取材ツアーは、いかに事態が安定化したかを示すためのものだったが、破壊の跡はあちこちに見える」とナレーションは続き、グッテンフェルダー記者やファクラー記者が書いたように、ひっくりかえった車両や瓦礫がいまだ手つかずのまま放置されている敷地内の様子が映し出されます。

続けてニュースビデオは、細野豪志環境相は「冷温停止実現に向けて作業は順調に進んでいると話す。しかし政府の一次報告書は、この施設を安全に廃炉するには30年以上かかるだろうと予測しているし、付近から避難を余儀なくされた住民たちが戻れるようになるまでには何十年もかかるかもしれない」と説明しています。破壊されつくした原子炉の映像を映しながら。