英語メディアが伝えるJAPANなニュースをご紹介するこのコラム、今週も東日本大震災と原発事故についてです。「3/11から一年」が近づくに伴い、当時と今を振り返る特集は英語メディアでも増えていますし、民間事故調査委員会の報告書についても複数の媒体が取り上げました。英米では原発事故の最初の9日間を振り返るドキュメンタリー番組も放送されています。「3/11」は世界にとっての悲劇なのだと、改めて思います。(gooニュース 加藤祐子)

○ 「東京の避難も検討」と米紙

「3/11から一年」を前にした2月27日、東京電力福島第一原発の事故原因を民間の立場から調べる「福島原発事故独立検証委員会」(北澤宏一委員長)による報告書の内容が明らかになりました。内容については日本の各紙が報じています。また、調査の主体となった財団法人日本再建イニシアティブのホームページはこちらです。

日本各紙の論調は、原発行政批判を軸にしたものや、官邸対応批判を軸にしたもの、あるいは「菅直人批判」を主眼に置いたものなど色々で、各紙のカラーが出ていました。私はというとこのニュースを最初NHKで知って、「"東京でも避難必要"の危機感も」という部分に焦点をあてたリポートに、200キロや300キロ圏内の避難も考えたという菅直人前首相の発言を思い出していました。

NHKによると、当時の枝野幸男官房長官も、「東京でも避難が必要になる『悪魔の連鎖』が起きるおそれがあると思った。そうならないよう押さえ込まなければいけないと考えていた」と民間事故調に心境を明かしていると。そして報道によると枝野氏は28日の閣議後会見でこれについて、「3月14日から15日にかけての当時の心情を申し上げたもので、例えば東京が避難せざるをえないようなことになるかもしれないという危機感を持って仕事をしていたということだ」と発言したとのことです。

27日付の米紙『ニューヨーク・タイムズ』も、「東京の避難も検討されていた」というこの部分を見出しに取り上げていました。

マーティン・ファクラー東京特派員は、「原発事故を受けて最も暗澹としていた最悪の時」という書き出しで記事を開始。「in the darkest moments」は慣用句です。「最も暗かったあの当時」という直訳でも意味は通じるかと思いますが、つまり「最悪が懸念されていた時」とか「失意のどん底にあった時」などの意味で使います。そして記者は、日本の指導部はその当時「原発の実際の被害程度を知らず、公には懸念を抑制的に伝えつつも、東京避難の可能性を秘密裏に検討していた」ことが示されていると書いています。

さらに、原発事故に対する懸念がピークに達した3月14日〜15日の頃、当時の枝野官房長官が「1(福島第一)がダメになれば2(福島第2)もダメになる。2もダメになったら、今度は東海もダメになる、という悪魔の連鎖になる」、「そんなことになったら常識的に考えて東京までだめでしょうと私は思っていた」と民間事故調に証言した内容が、そのまま引用されています。

記事は、日本再建イニシアティブ財団の理事長で以前は朝日新聞の主筆だった船橋洋一氏を、「日本で最も尊敬されている公共分野の知識人の一人」と形容し、船橋氏が中心にいたからこそ、この民間事故調に政府首脳や幹部たちが協力したのだと説明。そして「私たちは最悪のシナリオをギリギリ回避した。国民は当時そんなこと知らなかったが」という船橋氏の言葉を紹介しています(英語は"We barely avoided the worst-case scenario, though the public didn't know it at the time")。そして政府が危険の全容を国民や同盟国アメリカにつまびらかにしなかったせいで、国民の不信を招き、アメリカの不信も招いたという船橋氏の批判も紹介しています。

それでも尚、福島第一からの職員撤退を主張する東電を菅氏が叱責したことを船橋氏は評価。「Prime Minister Kan had his minuses and he had his lapses, but his decision to storm into Tepco and demand that it not give up saved Japan (菅首相には欠点もあったしどうかと思う時もあったが、東電に乗り込んで諦めるなと要求したおかげで、日本は救われた)」というこの言葉で、記事は締めくくっています。3/11後の混乱をほとんど全て菅氏個人の責任に帰結させようとするかのような一部の論調とは、かなり対照的です。

同じ民間事故調報告を受けて米CBSニュースは、「日本の原発危機中、政府は『崩壊』と報告」という見出しで、3月11日の「悲劇的な日に起きた原発メルトダウンの詳細はようやく表に出始めたばかりだ」と指摘。記者は民間事故調の報告書に書かれた福山哲郎内閣官房副長官の言葉を拾い、通常の指揮系統が完全に破綻していたと証言していたことや、専門家の説明を聞いてもこれがチェルノブイリになるのかスリーマイル島になるのか誰もはっきり答えを出さなかったと語っていたことなどを紹介しています。そして福山氏もまた、東京と周辺の計3000万人の避難を要する事態になるかもしれないと政府は恐れていたと話していると。

さらに船橋氏はCBSニュースの取材にも答え、問題の大半の責任は東電にあり「この原発事故について驚くほど何の用意もできていなかった」と語ったそうです。