中国で10年間黙々と川からペットボトルのゴミを集めているゴールデン・レトリバーが、「環境にやさしい」、「エコだ」と話題になっている。

猟犬DNAのなせる業(わざ)?

ゴールデン・レトリバーとは、語源となった「retrieve(回収する)」が示す通り、もともとは猟犬だ。19世紀にスコットランドで交配された当初は、ハンターが水や陸に撃ち落とした狩猟鳥を回収する役目を負っていた。現在はほとんどの場合、飼い犬として愛されているようだ。しかしそんな猟犬としてのDNAのなせる業(わざ)か、ゴミだらけの川でせっせとペットボトルを回収している中国のゴールデン・レトリバーが話題になっている。

この犬は中国江蘇省の蘇州に住んでいるゴールデン・レトリバーで、名前は不明だ。1日に20〜30本のペットボトルを地元の川で拾い集めている。川でペットボトルのゴミを集め始めたのは10年ほど前からだそうで、これまで回収してきた数は2000本以上に上る。1度に取ってこられるのは口にくわえることができる1本だけ。ペットボトル・ゴミを1本ずつ集めるひたむきな姿は注目を集めるようで、人民日報は、このゴールデン・レトリバーが地元では「セレブリティ」(著名人ならぬ著名犬)になっていると伝えている。

環境意識高いエコ・ワンコ

中国の英字新聞「上海日報」によると、川からペットボトルを回収してきた犬は、自らゴミ箱に捨てに行くという。自分で入れられないゴミ箱の場合、くわえてきたペットボトルをゴミ箱の近くに落とし、飼い主に捨ててもらう。同紙は、環境にやさしいこの犬のエコ活動を見ようと、多くの人が集まっていると伝えている。

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記事には、このゴールデン・レトリバーが、観光船のような船から乗客が見守るなか泥色の川でペットボトルをくわえて泳ぐ写真や、川から上がってびしょ濡れの姿でゴミ箱の前に立っている写真が掲載されている。

アメリカの映像メディアVocativは、この犬が実際に川からペットボトルをくわえて陸に上がる様子を動画付きで紹介している。記事によると、飼い主が「取って来い」と命令すると、犬が川に入りペットボトルを探して拾ってくるのだという。

Vocativは、世界のペットボトル需要のうち中国は28%を占めており、その結果、中国の川の多くはゴミでひどく汚染されていると伝えている。

また、この犬の話題を報じた米メディアのメンタルフロスは、パブリック・ラジオ・インターナショナルが2016年1月に掲載した記事を引用し、世界中の海に流れ着くプラスチック・ゴミのうち60%が、中国、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムの5カ国から出たものだと指摘している。



プラスチック・ゴミは深刻な環境問題

ペットボトルなどプラスチック製品による川や海の汚染は、世界的にも大きな問題になっている。海洋生物の保全を目的としたアメリカの非営利組織オセアニック・ソサエティによると、毎年400〜1200万トンのプラスチック製ゴミが海に流れ着く。海に到達したプラスチック・ゴミは、ウミガメやくじら、海鳥、魚、サンゴ礁など数多くの海洋生物に悪影響を及ぼしたり、海岸線を汚したりするという。

プラスチック・ゴミの問題でさらに懸念されるのは、プラスチックは分解されることなく「マイクロプラスチック」という粒子になって永遠に残っていくことだと、同組織は指摘する。マイクロプラスチックが環境にどのような影響を及ぼすかはまだよく分かっていない。なお、海に流れ込むプラスチック・ゴミは今後10年で倍増するとみられている。

同組織は、このようなプラスチック・ゴミによる環境汚染を減らす1つの方法として、「川など水路の清掃」を提案している。まさに、蘇州のゴールデン・レトリバーが10年かけてやってきたことだ。

犬がコツコツと環境保全に働きかけている姿は、ゴミを出す側の私たち人間も、もう少しゴミに対して気をつけるべきだと、教えてくれているかのようだ。




松丸さとみ