<第2次大戦の歴史認識めぐりロシアとポーランドの対立が再燃>

愛国主義的な右派政党「法と正義」が政権を握るポーランドは7月17日、全体主義的な歴史を一掃する新法を成立させ、ロシアとの間に新たな緊張が生じている。

新法の狙いは、共産主義をはじめ、「その他のあらゆる全体主義」体制を美化する動きを封じること。公共の記念碑などから、全体主義体制の犠牲者を生んだ歴史的事件を美化する記述(日付や人名も含む)を消すよう義務付けている。

【参考記事】ポーランドで数万人が憲法尊重を求める反政府デモ

これに対し、ロシア政府は自国に対する「甚だしい侮辱」だと反発。議会でも制裁を検討すべきだとの声が上がっている。

「ロシアの人々と旧ソ連邦の共和国の人々を侮辱するものだ」──ロシア外務省は18日に声明を発表した。

「ソ連邦の若者たちは、ポーランドを含むヨーロッパの人々の生命と自由を守るために共通の敵と戦った。にもかかわらず、ポーランド政府は意図的に驚くべき挑発に踏み切った」

こうした暴挙には当然の「報い」があると、声明は警告している。

ロシアにとってとくに許しがたいのは、第2次大戦中にナチス・ドイツと戦って戦死し、ポーランドに埋葬されたソ連軍将兵60万人に捧げる記念碑が消えることだ。「捕虜となってナチスの強制収容所に入れられ、今はポーランドの地に眠るソ連軍兵士も何万人もいる」と声明は述べる。彼らの栄誉ある死を記念碑から消すことは許し難い暴挙だというのだ。

東欧の解放者、それとも略奪者?

第2次大戦中、ヨーロッパの東部戦線では激戦が繰り広げられ、夥しい数の犠牲者が出た。この戦いはロシア人の心を揺さぶる歴史として今でも語り継がれている。ナチス・ドイツに対する赤軍の勝利は、ソ連の不名誉な歴史を帳消しにする輝かしい偉業だ。

世論調査によれば、大多数のロシア人は今も、ソ連軍は連合軍の支援なしでもナチス・ドイツを撃退できたと考えている。

ロシアのワレンチナ・マトビエンコ上院議長は19日、ロシア外務省はポーランドへの「対抗措置」を検討中だと語ったが、詳細は明かさなかった。アントン・ベリャコフ上院議員は新法を支持したポーランドの政治家に制裁を科すことを提案している。

【参考記事】ポーランドの「プーチン化」に怯えるEU



一方、ポーランド政府はロシア外務省のマリア・ザハロワ外務省報道官が新法の中身をきちんと理解せずに、「ポーランドの信用を傷つける」ような反応をしたと非難している。

「マリア・ザハロワが言及した法律は赤軍兵士の埋葬場所にある記念碑の変更を意図したものではない」と、ポーランド外務省は19日の声明で述べた。「ポーランド人、ウクライナ人、ロシア人、その他の人々を犠牲にした全体主義のシンボルを美化することを防ぐための法律だ」

【参考記事】ポーランド右傾化で高まるEUとの対立懸念

第2次大戦の歴史認識をめぐり、ロシアとポーランドは対立を続けている。ロシアはソ連軍がナチスの支配から東ヨーロッパを解放したと主張しているが、ポーランドにすれば、ナチスの侵攻後に東部に侵攻し、ポーランドをナチスと分割占領したソ連軍への怒りは消えない。

戦後ポーランドは再び独立を果たしたものの、ソ連の後ろ盾を得た社会主義政権が成立し、冷戦期を通じてソ連の衛星国となった。これが、ポーランドが今、記憶からかき消そうとしている歴史だ。


ダミアン・シャルコフ