<20年越しで、やっと判決が出た。そして有罪でも、裁判官は25人の妻との結婚はすべて「神聖」なものと認める>

25人の妻と146人の子供を持つカナダ人男性が「一夫多妻」を禁じる法律に反するとして7月24日、ブリティッシュコロンビア州最高裁は有罪判決を言い渡した。「一夫多妻」を禁じる法律が施行されたのは127年前。以来初の判決ということに注目が集まっているが、この事件、すでに20年以上も揉めていた。

宗教と憲法どちらが優先か

有罪となったのは、25人の妻がいるウィンストン・ブラックモア(60)、5人の妻がいるジェームス・オ―ラー(53)の両被告。

こんなに多くの妻がいるのは理由がある。2人とも、一夫多妻婚を教義とする「末日聖徒イエス・キリスト教会原理派(FLDS)」の信者で、カナダのコミュニティの幹部だ。

Awaiting verdict in Canadian #polygamy trial of #WinstonBlackmore. Will post ASAP. #FLDS #mormon #WarrenJeffs #cult #religion pic.twitter.com/gQDvCodHbQ— plygs (@plygs) 2017年7月24日

(ウィンストン・ブラックモア)


バンクーバー・サン紙によると、両被告のコミュニティのメンバーはかねてから、重婚、性的虐待、国境を超えた児童の人身売買に関与しているとの疑いを掛けられていた。ただ、宗教の習慣を侵されない権利は同国憲法の「信教の自由」で保障されている一方、法律では「一夫多妻」が禁止されているという複雑な問題が絡むゆえに、20年以上、3人の特別検事が捜査に当たるも起訴に至らなかった。

事態が動いたのは2011年。同紙によると、ブリティッシュコロンビア州最高裁が下した、重婚の悪影響を防ぐためであれば「信教の自由」が制限されるのは妥当との判断を判例にして、検察は2014年、両被告の訴訟にこぎつけたという。

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アメリカでは指導者が逮捕

FLDSは、100年前に一夫多妻制など一部の習慣を正式に廃止したモルモン教から破門されたところに始まる。古くからの習慣を存続させたい原理主義の信者らが分離し、FLDSとなった。モルモン教は、原理主義グループとはいかなる結びつきもないことを主張している。

FLDSの名が知られることになったのは、指導者のウォーレン・ジェフズがアメリカで少女と成年男性の結婚仲介や性的暴行の共犯容疑で起訴された2006年。信者が共同生活を送るテキサス州エルドラドの拠点に捜査の手が及び、自給自足など、一昔前のスタイルで生活するFLDSの映像は世界で注目を集めた。

#Canadian #polygamous cult leader found guilty of having 25 wives#WinstonBlackmore #JamesOler #FLDS #bountifulhttps://t.co/7HzzaJvFT6 pic.twitter.com/7PzOdlcQ8e— World News Network (@worldnewsdotcom) 2017年7月24日

(FLDS信者の女性たち)


カナダにもFLDS信者のコミュニティがあり、ブラックモアとオ―ラーもそこに属している。

ネガティブな印象の情報が多いが、そうでない信者の声を伝える報道もある。実際にウォーレン・ジェフズが逮捕され、服役のために不在となっても、エルドラドの拠点にはFLDSの教えを守り、これまでと変わらない生活を送る信者がいる。

「一夫多妻」を否定したわけじゃない

結局、有罪判決が下された被告は最大で5年の懲役刑が科されることになるわけだが、判決文が興味深い。同最高裁のシェリー・アン・ドネガン判事は、ブラックモア被告の「一夫多妻」について否定はしてはいないとした。「FLDSのしきたりと信教の順守は争点ではない」と述べた。

ブラックモアの結婚についてドネガン判事は「すべての結婚が神聖なものであることを確認した」とも言っている。

判決を受けブラックモアは、宗教は自分と家族にとってとても大切なものであると記者に語った。宗教と憲法という大きなテーマが絡む難題なだけに、今後の動きが注目される。

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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部