<1人親と子どもの世帯の相対的貧困率が、日本では半数を超えて世界一高い。背景には、シングルペアレントが働いても生活保護レベルの収入を得ることが困難という世界でも特異な実態がある>

貧困の深刻化が社会問題になっているが、貧困状態の国民の数を推測する指標として「相対的貧困率」がある。所得が中央値の半分に満たない世帯に属する人の割合で、最新の2015年の日本の数値は15.6%と報告されている(厚労省『国民生活基礎調査』)。

景気の回復があるためか、3年前の16.1%と比べて0.5ポイント下がっている。子どもの貧困率は16.3%から13.9%へと減少幅がもっと大きい。2013年に子どもの貧困対策の推進に関する法律が制定され、保護者への経済的支援の強化などの施策が実施されたが、その成果も出ているのだろう。

しかし貧困問題を考えるうえでは国民全体の数値を見るだけでは不十分で、社会のどの部分に貧困が多く分布しているかを突き止める必要がある。一口に世帯といっても、単独(単身)世帯、核家族世帯、三世代(同居)世帯などのタイプがあり、それぞれのタイプの貧困世帯の割合はかなり違っている。

2015年の全世帯の可処分所得の中央値は327.3万円で、貧困線はこの半分の163.6万円となる。所得がこのラインに満たない貧困世帯の割合を世帯のタイプ別に出し、グラフにすると<図1>のようになる。横幅を使って、各世帯の数も表現している。

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全世帯でみた場合の貧困世帯率は20.7%だが(点線)、単独世帯の率はそれよりもずっと高い。男性単独世帯の38.6%、女性単独世帯にいたっては59.1%が貧困状態にある。夫と死別した高齢女性が大半と考えられるが、最近では若年の単身女性の貧困問題が指摘されている。

現在では全世帯の4分の1が単独世帯で、決して少数派ではなく、これからますます増えていくと予想される。単身女性の貧困の解消には、給与の男女格差の是正が求められるのは言うまでもない。

1人親と子の世帯も、全体の貧困率を上回っている。ここでいう子どもは未成年に限られないが、18歳未満(学齢)の子と1人親の世帯に限ると貧困率は54.6%と半分を超える(2012年、OECD統計)。1人親世帯に限定すると、日本の子どもの貧困率は世界で最も高い。



さらに1人親世帯の貧困率を、親が働いている世帯とそうでない世帯に分けてみると、日本の驚くべき特性が見えてくる。<図2>は、OECD加盟の32カ国のグラフだ。図中の「瑞」はスウェーデンを指す。



どの国でも、親が働いていない世帯の貧困率は高い(斜線の均等線よりも下)。収入がゼロか、最低限の生活を営むに足る公的扶助しか得られないのだから当然だ。しかし日本だけは違っていて、親が働いている世帯の貧困率のほうが高い。

就労すれば収入が入るのだから貧困率は下がるはずだが、日本ではそうなっていない。シングルの親が働いても貧困から抜け出せず、むしろ状況が悪化している。世界に類を見ない、きわめて特異な社会だ。フルタイムでの就業が困難、給与の男女差が大きいなどの理由から、シングルペアレントが生活保護レベルの収入を得るのが困難という実態が背景にある。

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グラフの右下の国では、子どもの貧困は親が働けない世帯への支援の不足という「福祉」の問題だが、日本の場合は前述の通り、働くシングルペアレントが様々な理由から満足な収入を得られていないという雇用問題としての性格が濃いようだ。

日本の貧困率は低下傾向にあるが、目を凝らしてみるとそれが突出して高い層がある。子どもに注目すれば1人親世帯、その中でも親が就労して生活保護等を受けられていない世帯に貧困が凝縮している。こうした要注意層に注目して、今後の支援の重点を置くことが必要だ。

<資料:厚労省『国民生活基礎調査』、
    OECD「Family Database」>

舞田敏彦(教育社会学者)