9ヶ月にも及ぶ熾烈な奪回作戦の末、ISIS(自称イスラム国)支配下にあったイラクのモスルが今月上旬イラク政府軍により解放されたが、以降、廃墟の中から複数の外国籍女性が発見・拘束されている。このなかに、昨年から行方不明となっていた16歳のドイツ人少女が含まれていた。

ツイッターで写真が拡散

年齢を考慮してリンダ・Wと報道されているこの少女は、ドイツのザクセン州ドレスデン近郊、人口7千5百人程度の小さな町の出身で、昨年7月から失踪している少女と同一人物であることが家族とドイツ当局により確認された。アメリカ軍の訓練を受けたイラク特殊作戦部隊により、モスル旧市街の民家の地下で発見、保護された。

ドイツ報道機関NDRのレポーターであるイラク人ジャーナリストのアミル・ムサウィがイラクのテレビ局とも契約していることもあり、少女が手当てを受けた病院の正確な位置を明かさないという条件のもと、 NDR、WDR、南ドイツ新聞による合同調査団のインタビューが許可された。インタビューはイラク軍の監視下で行われた。

ムサウィが病室を訪れると、少女はベールを被っており、両脚に怪我をして憔悴しきった様子だが、質問の受け答えができる状態ではあったという。

発見時、戦闘員の性奴隷とされることの多かった、イラクのクルド人少数派ヤジディ教徒の女性がそばにいたことで緊張し、「自分はヤジディではない、ドイツ人だ」と叫んだ。そのためベールを脱ぎ、兵士たちに写真を撮られる結果になった。発見時にうつろな表情で兵士に囲まれた少女の写真はまずツイッターに投稿され、拡散された。それを見た少女の姉は一目で妹だとわかったと語っている。

少女は「とにかくここを離れて家族のもとに帰りたい。戦争から、武器から、騒音から離れたい」と、一刻も早いドイツ帰国を望んでいるという。

偽の保護者承諾書で渡航

WELTの報道によると、少女は15歳だった昨年7月1日、両親に「友人を訪ねる」と嘘をつき、フランクフルト空港から偽の保護者承諾書を用いてひとりトルコに飛んだ。イスタンブールで勧誘員に迎えられたあとシリアに入国し、最終的にイラクに到着した。ISIS加入後は戦闘員の一人と結婚したが、相手はすぐに戦闘で死んでしまったという。



失踪に先立ち、少女はイスラム厳格派と呼ばれるサラフィー主義に傾倒し改宗、学校に頭部を覆うベールを被って行ったり、ラマダンの断食をしたりしたという。両親はそんな娘に理解を示し、コーランを贈ったりもしたが、フェイスブック上でジハーディスト(聖戦主義者)とコンタクトを取っていたことには気づかなかったようだ。

ドイツ当局は昨年9月に少女がモスルにいる可能性を家族に伝えていたが、それ以上の詳しい情報はなかった。ARDによると、今年の1月に少女本人がモスルから故郷の姉に連絡を取ったようだが、その後はまた音信不通になった。

イラクで起訴の可能性も

独連邦情報局によると、ドイツから930人以上がISIS戦闘員になるためにイラクやシリアに渡り、その20%が若い女性や少女だという。今回保護されているフランス、モロッコ、カナダなどさまざまな国籍の26人の女性たちのなかにもさらに3人のドイツ人がおり、うちひとりは身元が確認されている。女性たちは現在バグダードに移送され、アメリカ軍の協力のもと手当てを受けている。

少女がすぐにドイツに送還されるかは未定だ。先述のイラク人ジャーナリストのムサウィがインタビューの一部について語ったARDのビデオで、ドレスデン検察のローレンツ・ハーゼが、少女がイラクで裁判にかけられる可能性、外国人ということで追放される可能性、そしてドイツで失踪中の未成年ということでドイツに委ねられる可能性をあげている。

少女がどのように組織の活動に関わったかがわからない現状ではなんとも言えないが、違法入国としてなら3年半服役させられる可能性はあるようだ。一方で、死刑を宣告される可能性を指摘する報道も出ている。

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