<南シナ海を航行する米潜水艦を素早く補足し、水中のデータを瞬時に地上に送信する「新兵器」を中国が実用化>

アジア太平洋で中国がアメリカによる挑発的行為とみなす動きを封じ込め、自国の主張する領有権を死守しようとしている。中国政府が手にした最新の水中ドローンを使えば、米軍の潜水艦をこれまでにない速さで捕捉できるかもしれない。

中国国営の通信社である新華社は23日、中国政府が海洋環境に関するデータ収集を目的に、南シナ海の海底で無人潜水艦「海翼」12機を航行させたと報じた。高度な技術を搭載した海翼は従来のドローンより性能が高く、耐久性に優れ、燃費も向上したと記事は紹介した。水中で取得したデータを瞬時に地上に送信するという、アメリカも未到達の技術まで搭載したという。科学的な用途を前提にしており攻撃能力はないが、今後中国が領海と主張する海域を航行する米軍の潜水艦の居場所を瞬時に探知するのに利用される恐れがある。

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アメリカの世界記録を破る中国

今回の探査航行の責任者は新華社に対し、「地上の実験室にリアルタイムでデータを送信できる」と語った。航行の成功は「間違いなく飛躍的な進歩だ」と語った中国のハルビン工程大学の水中音響技術部学部長の話も掲載された。

開発したのは、アメリカが打ち立てた潜水深度の世界記録を3月の試験時に破ったとされる、中国国営の中国科学院だ。海翼は水深6328メートルを超える海底を航行し、5170メートルというアメリカの世界記録を更新したと、中国科学院は発表した。中国の英字紙チャイナ・デイリーによれば、特殊な電池と塗料を用いることで、潜水時に60トン以上の水圧にさらされても機体を維持できる。2014年に30日間で連続航行距離1021キロを達成し、世界記録を出したという。すでに中国軍系のメディアは、中国軍が海翼を軍事利用することも可能だろうと推測している。

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米外交専門誌ナショナル・インタレストによれば、昨年中国の軍事情報誌に、海翼に関するこんな記述があったという。「電池で動くため推進装置がなく、敵に探知されるような特徴のある音を出さない。この特性は、軍事分野で非常に重要な意味を持つかもしれない」

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南シナ海の広範囲で領有権を主張する中国に、アメリカは対抗する姿勢を見せている。中国は海翼を使えば、同海域の広範囲を監視し、リアルタイムでアメリカの潜水艦を締め出すことができる。西太平洋で最大の海域を占める南シナ海の面積は142万3000平方キロで、平均水深は1060メートル、最大水深は5016メートルだ。

中国は同海域で人工島を造成し、大規模な通信設備やミサイル発射台を完備するなど軍事拠点化しており、アメリカとその同盟国が非難している。

ジェームズ・マティス米国防長官が提出した、周辺国が領有権を争う海域で米軍による「航行の自由」作戦を拡大する計画を、ドナルド・トランプ米大統領はすでに了承している。中国共産党機関紙「人民日報」系の国際情報紙である環球時報によれば、中国共産党はアメリカの動きが「地域の軍事的な状況を悪化させる」として批判した。同紙は中国軍に対し「中国の領海や、領海における権利と利益を死守するため、断固として反撃し必要な措置を取るべきだ」と鼓舞した。

軍用ドローンを大量生産

世界経済をリードするアメリカと中国は、長年にわたり政策面で意見が分かれ、しばしば軍事力の優位性を競い合ってきた。今年初め、米技術専門誌ポピュラー・メカニクスは、洋上の対艦ドローンについて詳しく紹介した。そのドローンは海面から45センチメートルという超低空飛行が可能なため、地球の微かな湾曲を利用して敵の艦船から探知されるのを防げる。低空飛行で機体にかかる空気抵抗が大きくなっても耐えることができ、時速965キロで1時間半は連続飛行できるとされる。南シナ海の広大な海域で約1500キロ飛行できる計算だ。さらに重量が900キロ相当の爆発物も運搬できるとみられている。

ドローン技術でアメリカを上回ろうとする中国の取り組みは、上空でも顕著だ。中国はサウジアラビアなど外国政府の買い手を対象に、彩虹5号(CH-5 )と呼ばれる軍用無人ドローンの大量生産を開始した。CH-5の開発者は、ライバルである米ジェネラル・アトミックス社製の軍用無人ドローンMQ-9リーパーと比較して、自社製品の方が航続距離が長く、使いやすい言う。ただしCH-5はMQ-9より飛行高度が低いとみられ、地上から攻撃を受けやすい。

(翻訳:河原里香)



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