<アメリカの軍事専門家の分析で、7/4に北朝鮮が発射したICBMは日本の排他的経済水域ではなく領海に落ちる予定だった可能性が浮上した>

北朝鮮が7月4日に行った初の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験で、金正恩党委員長は日本の排他的経済水域(EEZ)ではなく領海を狙った可能性もあることが、米ワシントンのコンサルティング会社の報告書で明らかになった。

手がかりとなったのは、実験の様子を双眼鏡で眺める金を撮影した1枚の写真だ。「7月4日の発射実験で、視察した金正恩の机の上の地図に描かれた予想飛行経路に、異様な点を見つけた。地図を詳しく分析すると、ミサイルの落下地点が日本の北海道南西部にある奥尻島沖になっていた」と、アメリカの戦略地政学的コンサルティング会社、ストラテジック・センチネルの報告書は指摘する。「地図通りの飛行経路なら、ミサイルは日本の領海に落下する可能性があった。日本の主権が及ぶ水域だ」

【参考記事】ICBMはミサイル防衛システムで迎撃できない

ストラテジック・センチネルの上級画像分析者ネイソン・J・ハントが地図の画像を拡大し、地図に描かれたミサイルの予想飛行経路と実際のミサイル飛行経路とに共通する特徴を比較したという。

なぜ目標の落下地点まで到達できなかったのかは分からない。だが、地図にはっきりと描かれた目標は、これまで北朝鮮が発射したミサイルの中で日本の本土に最も近く、日本の領海内に落下する初の事例になる恐れがあった。もしそうなれば、領土保全のために自衛隊が出動する事態になっていたかもしれない、と同報告書は指摘する。

【参考記事】迎撃ミサイル防衛に潜む限界

威嚇か本気か

北朝鮮は、7月4日から1カ月も経たない7月28日に2回目のICBM発射実験を成功させ、世界に衝撃を与えた。

ストラテジック・センチネルのCEOで報告書を執筆したライアン・バレンクローと、米ジョンズ・ホプキンス大学の北朝鮮分析サイト「38ノース」の常連寄稿者で今回の分析を手伝った航空宇宙工学者ジョン・シリングは、地図は金から西側への隠れたメッセージかもしれないと、英字紙ジャパン・タイムズに語った。

「北朝鮮は今まで以上に大胆になっており」、西側の反応を試すため限界を試してくるかもしれないと、バレンクローは言う。シリングは、北朝鮮が地図で威嚇したという説と、本気で日本の領海に落下させようとしたが何らかの理由で失敗したという説は、どちらもあり得る話だと言った。

一方で北朝鮮は、28日のICBMやそれ以前の弾道ミサイル発射実験を通じて、なりふり構わない姿勢を見せてきた。英国際戦略研究所のミサイル防衛の専門家で、38ノースに寄稿するマイケル・エルマンは月曜の電話会議で、北朝鮮の周辺地域には様々な国境の制約があるため北朝鮮がミサイルを発射する余地は極度に限定されるとしながらも、金正恩政権はミサイルが日本のEEZに落下しても「まったく気にしない」と語った。

(翻訳:河原里香)


【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>


トム・オコナー