<サウジアラビアが、中東和平でパレスチナを犠牲にして水面下でイスラエルと手を組んでいるとの噂も>

中東和平のカギを本当に握っている国、それはサウジアラビアなのかもしれない。

イスラエルとパレスチナが和平を結ぶためにはサウジアラビアの協力が不可欠だと、イスラエルのカッツ情報活動相は最近のインタビューで語っている。「アラブの盟主であるサウジアラビアがパレスチナへの庇護を約束し、代わりに(米政府が用意する)和平案を受け入れるよう求めるべきだと思う」

いまサウジアラビアにとって重要な関心事は、中東でイランの影響力を弱めること。最近はイランへの対抗上、パレスチナへの支援より、イスラエルとの協調を優先させているように見える。もしそうだとすれば、カッツが期待するように、サウジアラビアはイスラエル寄りの和平案を支持する可能性がある。

12月6日、トランプ米大統領はエルサレムをイスラエルの首都と認めると発表し、アラブ諸国の反発を買った。アメリカが中東和平の仲介者の役割を果たすことは難しくなったとの声も上がっている。

サウジアラビア政府もトランプの決定を表向きは批判したが、本音は違うとの見方もある。イランの力をそぐために、米政府による仲介を支持し、イスラエルと協力することを望んでいる可能性が高いとみられている。

両国の連携は公然の秘密

アメリカとイスラエルも、サウジアラビアの協力は是非とも取り付けたい。「歴史的・宗教的に、サウジアラビアほどパレスチナに大きな影響力を持つ国はない」と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のベンジャミン・ラッド研究員(中東情勢)は言う。「サウジアラビアが和平を主導してくれれば、イスラエルは最終合意にアラブ側のお墨付きも得られる」

トランプ政権で中東問題を担当するジャレッド・クシュナー上級顧問(トランプの娘婿)は、サウジアラビアのムハンマド皇太子と親密な関係を築いている。サウジアラビアはエルサレム問題で米政府を批判するより、イランを封じ込めることを優先させると、クシュナーは踏んでいるようだ。実際、今年6月にムハンマドが実権を握って以降、サウジアラビアはイランとの対決姿勢を強めている。



サウジアラビアはイスラエルを正式に国家承認していないが、両国がひそかに連携していることは公然の秘密だと、外交関係者たちは言う。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、11月にムハンマドがパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談した際、極めてイスラエル寄りの和平案をのむよう迫ったという。アッバスはそれを突っぱねたとのことだ。

ホワイトハウスとサウジアラビア政府は、この報道を否定している。しかし、ムハンマドが水面下でイスラエルおよびアメリカと連携して、パレスチナをないがしろにしているのではないかとの疑念はなくならない。

サウジアラビアに対して、パレスチナ支持を最優先するよう求める声は根強い。イスラエル寄りに見える最近の姿勢は、批判も招いている。国際テロ組織アルカイダも、パレスチナを犠牲にするサウジアラビアの王制を打倒せよと訴えている。

アラブの盟主としての立場を重んじるべきか、イランの封じ込めを優先させるべきか――サウジアラビアは、中東和平のカギを握っている半面、難しい立場に立たされている。トランプのエルサレム首都認定により、そのジレンマが一層難しいものになることは間違いない。


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[2017.12.26号掲載]
クリスティナ・マザ