<冬場の凍死の死者数は、実は夏場の熱中症による死者数より多い。凍死の多くは、屋外ではなく屋内で高齢者が低体温症になってしまうケースと見られる>

ここ数年、夏の異常な暑さによる熱中症に注意が払われているが、冬場の凍死はあまり注目されていない。前者は異常な高温、後者は異常な低温にさらされることで起きる。

厚労省『人口動態統計』の詳細死因分類に、「自然の過度の高温への曝露(X30)」、「自然の過度の低温への曝露(X31)」というカテゴリーがある。前者は熱中症、後者は凍死による死亡と見ていい。

この数字を拾うと、2017年の熱中症死亡者は635人、凍死の死亡者は1371となっている。数としては凍死の方が多く、倍以上ある。こういうマイナーな死因は年による変動が大きいが、2008〜17年の10年間の合計をとると熱中症が8041人、凍死が1万1002人で、やはり凍死の方が多い。

統計の上では凍死が多いのに、注目される度合いは熱中症の方が高い。熱中症は、全ての人に関わる事象だと認識されているからだろう。凍死は、雪山で遭難するとか、泥酔して路上で寝込むとか、当人の過失による部分が大きいと思われている。

それならば凍死者には若者が多いはずだが、どうなのか。2017年の死者数の年齢カーブを描くと<図1>のようになる。



予想に反して、凍死は高齢者に多い。全体のほぼ9割が60歳以上の高齢者だ。無茶をしがちな若者はわずかしかいない。



もう一つ、一般的な想像を超える統計的事実がある。凍死が多い場所は屋外ではない。2016年の『人口動態統計』の内部保管統計に、死因小分類と死亡場所のクロス表がある。<表1>は、熱中症と凍死の死亡場所の内訳表だ。



2016年の凍死者1093人のうち、最も多いのは自宅での死者だ。その数414人で、全体の4割近くを占めている。遭難したとか路上で寝込んだとか、屋外での凍死が大多数を占めているのではない。

屋根があり、雨露をしのげる屋内でも凍死は起こり得る。いやむしろ、屋内の方が数は多い。先月の中旬、強烈な寒波により北海道は危険な寒さになったが(マイナス22度)、このような寒さで布団をかぶらないで寝たら危ない。気温11度で命を落としたケースも報告されている。寒さの感覚が鈍くなる高齢者は要注意だ(老人性低体温症)。

日本の「家の造り」にもよるだろう。古典を紐解いても、徒然草で「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる」と言われている。湿度が高い日本では、古くから住居は夏向けに作られてきた。海外はそうではなく、ヨーロッパではレンガ造りが主流で断熱性に優れている。

それと暖房代だ。夏場の冷房代もかかるが、額としては暖房代の方が高い。冷房が使えず熱中症で死亡した高齢者の事件が報じられるが、暖房をつけられず極寒の室内で凍死した事件も起きているはずだ。生存権を保障する範疇として、空調代は生活保護で支給されなければならない。昨年の夏、生活保護世帯にエアコン代(5万円上限)が支給されることが決まった。

「住」は生活の基盤だ。誰もがまっとうな家に住みたいと願っている。夏場の熱中症が問題視されているが、冬場の凍死にももっと注意が払われるべきだろう。

<資料:厚労省『人口動態統計』>


舞田敏彦(教育社会学者)