<国連のIPCCは、気候変動対策には、「食品ロスを減らすこと」と「肉食を減らすこと」がカギとなるという報告書をまとめた......>

食糧全体の3割が食品ロスまたは廃棄に

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はこのほど、農業、食糧生産、森林破壊が気候変動を押し進めている主な要因だとする特別報告書「気候変動と土地」を発表した。この報告書は、52カ国の科学者107人が、これまで発表された7000件以上の研究を分析し、気候変動と土地利用に関する視点からまとめたもの。気候変動対策には、「食品ロスを減らすこと」と「肉食を減らすこと」がカギとなるようだ。

IPCCは、地球温暖化による気温上昇を2度未満に抑えることを目指すのであれば、全セクターにおいて温室効果ガスの排出を減らすことが必須と指摘。中でも農業や林業などの土地利用は、人間が排出している温室効果ガスの23%を占めており、そのため、土地管理をもっと効果的に行えば、気候変動の解決に寄与できるとしている。

報告書によると、現在、生産された食糧のうち25〜30%が食品ロスまたは廃棄となっており、ここからの温室効果ガス排出は全体の8〜10%に上る(なお、食品ロスは単なる食品廃棄とは異なり、農林水産省の定義によると、食べられる状態にあるのに捨てられるものを指す)。

食品ロスや食品廃棄の原因は先進国と発展途上国とで異なり、また地域によっても異なる。しかしこれらを減らすことで、温室効果ガスの排出量が減る上に、食糧品の生産に必要な土地が減るため、より適切な目的で土地を利用できるようになるという。報告書は、収穫技術、保存、インフラ、輸送、パッケージ、小売、教育などを改善することで、食品のロスや廃棄を減らすことができるとしている。

食糧の供給過多は肥満のまん延も引き起こしており、太り過ぎまたは肥満の人は世界人口の4分の1以上(成人20億人)に達していると報告書は指摘している。

肉食減少で地球も自分も健康に

報告書はまた、気候変動を阻止する力になるものとして、肉食を減らす提言もしている。欧米式の食事では、農業に必要な土地が増えるからだ。

例えば、全世界が英国式の平均的な食事を取り入れて英国と同じ量の肉を消費した場合、必要となる農地は、世界で居住可能な土地の95%に達するという(現在と比べ50%増)。世界中が米国の平均的な食生活を取り入れた場合は、世界の土地の178%を農地にしなくてはならなくなる。そのため、食糧供給の面から気候変動にアプローチする場合、食生活を変えることが効果的だと報告書は述べている。



欧米式の食生活を変えることで、温室効果ガスの排出削減のみならず、健康面の改善も期待できると報告書は指摘する。健康的かつ地球環境に良い食習慣は、トウモロコシやオオムギなどの雑穀類、豆類、果物、野菜、ナッツなどの種実類を多く取り、エネルギーを大量に必要とする動物性の食品や嗜好品を減らすことだとしている。

また、大豆ミートのような植物性の擬似肉や、培養肉、昆虫食などが今後、より健康的で持続可能な食習慣となっていく可能性があると報告書は述べている。ただし、こうした肉の代用品のカーボンフットプリントや、これらがどれだけ受容されるかについては不透明だとしている。

IPCC第3作業部会のジム・スキー共同議長は英タイムズ紙に対し、食生活によっては、土地や水が多く必要となり、より多くの温室効果ガスを排出してしまうものもあると説明。バランスの取れた食生活をすることで、気候変動に順応しつつ、さらなる気候の変動を抑える力になる可能性があるかもしれないと述べた。



Eat less meat: Climate report urges change to world food system


松丸さとみ