日本企業の働き方が大きく変わろうとしている。新型コロナウイルスの感染防止でリモートワークが一般的となり、オフィスの縮小に乗り出す企業も出始めた。コロナ禍以前から、副業を解禁し、さらに推奨する企業も相次ぐ。社員全員が副業で、オフィスはないという企業も登場するなど、新しい働き方が市民権を得つつある。

業務支援を手がけるスタートアップのMOVED(東京都大田区、渋谷雄大社長、03・6822・3777)は、ITを活用した新しい働き方の導入支援に乗り出した。同社は2018年に設立。20年8月期の売り上げは前年比約4倍の6000万円を見込む。約30人の社員は社長を含め全員が副業。本社所在地は社長の自宅兼仕事場で、社員は全国に散らばる。集まるのは年に1度の社員旅行の時だけという。

そんな自社の勤務形態をモデルに、情報システムが未整備の中小・中堅企業に対して、システム提案やIT研修を通じリモートワークや副業環境の構築を支援する。新型コロナ感染拡大に伴いリモートワーク関連ツールを導入する企業が増えたことに対応する。

月額10万円(消費税抜き)のサブスクリプション(定額制)型で業務の見える化から改善ツールの選定まで伴走支援し、同時に副業における情報共有方法などを提案。年間30社への支援を目指す。

同社社員の“勤務先”は、病院や別のIT企業などさまざま。新型コロナ流行前から通勤用のオフィスを設けず、商談などの必要性がない限りリモートワークを基本とする。

渋谷社長自身が現在サイボウズに勤め、MOVEDの設立当初から多様化や新しい働き方の普及を目的に副業人材を採用してきた。

例えば業務改善アドバイザーの滝村孝一さんは京都府内のリハビリテーション病院で勤務する。帰宅後や病院勤務の空き時間などを活用し、MOVEDの仕事を月30時間ほどこなす。「スキルアップが見込める上、もう一方の仕事の営業活動にもつながる」と副業の利点を話す。業務の進捗(しんちょく)状況はクラウドで管理する。

同社の仕事の進め方は、顧客ごとに営業活動からシステム構築までを一人で担う個人事業主に近い。抱える案件の数に伴い負担が増すため、経理担当や広報担当など新たに採用。これらスペシャリストの力を借り、仕事の効率化を進める。

中小企業の人材不足は長期化し、今後も深刻化することが確実。新型コロナで余儀なくされたリモートワークやIT活用の動きが、副業の普及を一気に加速する可能性がある。

多様な働き方に期待高まるも…ルール整備必要

自らの希望する働き方を実現する上で兼業や副業、フリーランスなど多様な在り方への期待は高い。リクルートキャリア(東京都千代田区)の調査によると社員の副業・兼業を認めている企業のうち34%が「本業に還元できている」と答え、企業側からも効果を実感する声が挙がっている。

政府が3日の未来投資会議で示した成長戦略実行計画案には「働く人の目線に立って環境整備を行うことが急務」として労働時間管理やフリーランス保護に関するルールを整備する必要性を盛り込んだ。労働者による自己申告制の導入や過度な働き方に陥らないための時間管理など、副業・兼業を推進可能な枠組みの構築を図る。

副業や兼業がもたらす効果への期待に対し、中小企業を中心に慎重な見方もある。エン・ジャパンの調査では副業や兼業を禁止する理由に「本業に専念してもらいたい」「社員の過重労働への懸念」「社員の健康の不安」などが挙がる。