企業の女性総合職は、1986年の男女雇用機会均等法の施行を機に急増した。第1世代が今、50歳代で役員に続々と就任している。理系の女性役員クラスも、2020年度の日刊工業新聞社のR&Dアンケートで、対象200社超の2割弱で誕生済みと分かった。業種の異なる3事例を通して、その肖像を浮かび上がらせる。初回は大日本印刷初の女性役員、宮間三奈子さんだ。

リポート繰り返し研究職復帰

―大学院修士課程を終えて、均等法施行の年の入社ですね。
「2年目に社内結婚し、やがて出産とイベントが続いた。仕事は研究管理で不本意だったが、育児休業制度がない時代で、結果的に続けやすかったかと思う。研究開発職に戻るために、『はやり始めた感性工学に当社も取り組むべきだ』とリポートを繰り返し提出し、実現させた」

―深掘りした技術テーマは何でしたか。
「住宅のショールームで使う画像イメージシミューレションのシステムだ。キッチンや浴室の機器を組み合わせた時の色や材質、サイズなどのイメージを高精細な映像で示す。1生活者としての自身のニーズがきっかけで、実用化できた」

―手塩にかけた技術を社会に届けるべく、ここでも異動の希望を出しました。
「企画開発部門に移り、後に管理職になった。『こういうのを待っていたよ』とお客さまにいわれ、提案が受注につながる喜びを味わった。機械工学出身だけに、開発した製品を社会に提供できるのは幸せだ。一方で納期や売り上げ目標に迫られたり、部下の育成に迷ったり、密度の濃い時間だった」

―キャリアを確立する40歳代の悩みはいかがでしたか。
「漠とした不安があった。同世代の男性は多数の兼務を持つのに、私の任務は一つだけといった気がかりだ。人材育成の部門に異動した頃、社外機関の研修に参加。他業種の女性部長らと接し、視野を全社に広げるなどリーダーシップのポイントを身に付けた」

宮間三奈子さん

―執行役員28人中の紅一点ですが、気後れはなさそうですね。
「どこにでも行って成長したい、と好奇心旺盛なのが強みだ。ダイバーシティーは多様な価値創造のためにも重要だ。事業部のナンバー2などを推進リーダーに据えて、社内変革を進めている」

【略歴】みやま・みなこ 86年(昭61)上智大院理工学研究科修士修了、同年大日本印刷入社。05年C&I企画開発センターVR企画開発室長。14年人材開発部長。18年執行役員。東京都出身、58歳。

【記者の目/“同志”の夫と困難乗り越え】
宮間さんの夫は入社同期で互いの職場も理解がしやすい。思春期の子どもを抱えつつ夫が単身赴任するなど、困難を乗り越える同志でもあった。一方で宮間さんの仕事の愚痴には、厳しい意見を返す時もあったとか。残念ながら宮間さんの役員就任前に逝去されたが、今なら果たしてどんな言葉をかけてくれるだろうか。(編集委員・山本佳世子)