「藻類は色素からタンパク質、燃料まで作ることができる。これを使い、様々な物を藻類由来で作りたい」。こう語るのは、微細藻類の研究開発を行うアルガルバイオ(千葉県柏市)の創業者、竹下毅取締役だ。小さい種であれば、1マイクロメートルにも満たない藻類。小さな身体に秘めた可能性を探る同社に話を聞いた。

3000種類の中から適切な藻類をセレクト

同社開発の7色クロレラ

アルガルバイオは東京大学の20年以上の藻類研究を商用化するべく、2018年に設立されたベンチャー企業だ。藻類を美容や食品、バイオ燃料への応用できるよう、研究開発している。同社の大きな強みは豊富な知見を活かした共同研究だ。共同研究をする企業の用途に合わせて、クロレラを中心に保有する約3000種類の中から、藻類を選び、育て方から加工方法までをコンサルティングする。

藻類の生育は複雑だ。人間に例えると、「1週間は子供から大人へ。もう1週間は筋肉をつけていくようなもの。藻類は筋肉をつける代わりに、様々な物質を体内にため込む」(竹下取締役)。また、「藻によって適切な湿度や水溶液の性質、光の強さが違う。当然、それによって生成される物質も変わる」と話す。同社はそれぞれの藻類に適した生育環境を用意する。

それぞれの藻類に適した大小様々な培養方法を使う

この性質を使い、食品メーカーであれば藻類から色素を作りたいという要望に合わせて、適切な種類を選定。培養時に特定の成分をためこませることで、色素の基になる赤や黄色、緑のクロレアを作る。それ以外にも将来的には、特定の成分を藻類にためこませる技術を応用し、タンパク質や燃料などを生成することも想定する。1つの種を商用化に持って行くのに2年ほどかかるというが、木村周社長は「今は研究の終盤になってきているプロジェクトもある」と話し、製品化に近づいてきた。22年には自社開発の健康食品を販売する予定だ。

食品への応用を念頭にしたクロレラの粉末

藻類由来の燃料の普及が先行して普及しそうなのが、航空産業だ。政府が脱炭素社会に向けて策定した「グリーン成長戦略」でも、藻類ジェット燃料の供給を拡大していくことを明記している。古くから藻類が注目を集めてきたが、その訳は成長時に二酸化炭素(CO2)を吸収する点にある。仮に化石燃料と混ぜ、利用した場合も排出されるCO2を藻が成長する際に吸収するため、全体での排出量を減らすことができる。

普及にはコスト減は必至

木村社長
竹下取締役

ただ、藻類の普及にはコストをいかに下げていくかという視点が求められる。過去にもオイルショックを契機に、通商産業省(現経済産業省)などが74〜93年に実施した「サンシャイン計画」や93〜00年に実施した「ニューサンシャイン計画」で、藻の活用が研究されたが、いずれもコスト高が払拭できず、事業化にはつながらなかった。過去のブームを木村社長は「1つの藻にのみ注力した結果」と語り、「我々は多様な種類を扱っている。同じ轍は踏まない」と語る。

光明もある。野菜工場が発光ダイオード(LED)の価格低下により採算性が向上したように、同じくLEDを使う藻の培養についてもコストが低下してきている。LEDコストの低減と今後の設備拡大により、スケールメリットを打ち出せると考えており、現在の200リットルから1キロリットル規模での生産を目指している。木村社長は「(食品や燃料に応用できる)藻類を社会インフラにしていきたい」と意気込む。

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