宇宙開発が盛んになる中、「宇宙ゴミ」の処理が問題になっている。役割を終えた人工衛星が軌道上に留まることで、新しく打ち上げた衛星の活動を阻害するケースが出てきた。アストロスケールホールディングス(HD)は宇宙ゴミ除去の最先端を走る企業で、2024年度の事業開始を目指している。

実験衛星を打ち上げ

ELSA−dが宇宙ゴミを捕獲するイメージ(写真は同社提供)

同社のコア技術は、宇宙空間に漂うゴミなどの「非協力物体」を近付いて捕まえるRPO(ランデブー・近接オペレーション)技術だ。21年3月には宇宙ゴミ除去用の実験衛星「ELSA−d(エルサディー)」を打ち上げ、ゴミを模した衛星を捕獲する実証に成功した。

仕組みはこうだ。地上から打ち上げる通信用衛星に金属のプレートを埋め込む。衛星の運用が終了し、ゴミになった際に除去用衛星が近付き、磁石を使ってプレートを引き寄せ、運用済みの衛星を捕獲する。地球の重力で大気圏まで落下する高さで衛星を離し、除去する。その後、除去用衛星は元の軌道に戻り、同様の作業を繰り返す。同社は今後は距離のあるゴミに近づき、回転が不規則な物体を捕獲するなどの実証を行う予定だ。実際、この方式で英ワンウェブと連携。ワンウェブの打ち上げる衛星に金属のプレートを埋め込み、同社の衛星を除去する計画だ。

岡田光信最高経営責任者(CEO)は「今後、衛星を打ち上げる企業は使うだけでなく、処分することまで考えなくてはいけない」と話す。既存の衛星はゴミになることを想定しておらず、ロボットアームなどを使い除去しなくてはいけない。衛星にプレートを搭載することでコストを落としながら除去できるという。同社はほかの企業にも提案し、今後の需要を取り込む考えだ。

ELSA−dの実機(写真は同社提供)

同時多発的なサービス開発

また、処理の方法が考えられていなかったゴミを除去するサービスや、稼働衛星の寿命を延長するサービス、宇宙空間の混雑状況を把握する事業も手掛ける。23年から24年にかけて、今実証中のサービスを事業化する計画だ。宇宙という資金力と技術力が必要な市場において、衛星除去を中心に様々なサービスの実証を同時にこなす。岡田CEOは「宇宙市場において、サービスを一つ一つ検討しているようでは間に合わない。同時多発的に技術開発と実証を行うことでスピード感をもって宇宙のゴミ問題に取り組む」と説明する。同社は日本以外にもシンガポールやイギリス、アメリカ、イスラエルに拠点を展開する。

岡田CEO

現在運用されている人工衛星は約3000基とされるが、30年までには4万6000基の衛星が打ち上げられる予定。今後、ますます宇宙軌道上の混雑が予想され、宇宙ゴミと稼働中の衛星の接触が起こる可能性がある。近い将来、宇宙の「環境保護」にも目くばせをする時代が来るかもしれない。岡田CEOは「増え続ける宇宙ゴミを当たり前に除去できる仕組みを作りたい」と展望を話す。

この連載では、「ディープテック」と呼ばれる先端テクノロジーの事業化を目指す企業を掲載します。
また、自薦、他薦を問わず情報提供も受け付けております。
情報提供の際は、ニュースイッチ deeptech情報提供窓口  deeptech@media.nikkan.co.jpまでメールをお送りください。
メール送付時に、会社の概要を記した資料またはHPのURLをご記載ください。
「 ディープテックを追え VOL.1」はこちらから
「 ディープテックを追え VOL.2」はこちらから
「 ディープテックを追え VOL.4」はこちらから