人口減少や生産性向上が叫ばれ、労働集約型の産業構造は転換を迫られている。建設現場においても急務の課題だ。一部では、図面をタブレット端末で確認するなどのITツールの活用が進む。こうした中、Polyuse(ポリウス、東京都港区)は、コンクリートを材料に建築資材を3Dプリンターで製造し、建築現場の生産性向上を目指している。

高齢化が進む業界

総務省統計局の労働力調査によれば、2021年9月の建設業の就業者は495万人と、他の産業と同様に減少傾向が続く。また、55歳以上の就業者が全体の3割ほどと高齢化しており、技術継承が不可欠だ。

建設業は多くの職人が現場でコンクリートから資材を作ることで成り立っている。型枠を用意する職人や、コンクリートを流し込む職人など、複数の人手をかけることで成立している。プレキャスト建材という工場で製造される建材を使用することもあるが、形状などが一定のため、建造物によっては現場で少量の資材を製造することが発生する。

少量生産に狙い

開発する3Dプリンター
3Dプリンターが造形する様子(同社提供)
ねじった形の構造物も造形できる

ポリウスが狙うのは、プレキャスト建材が使いにくく、現場で少量生産する建材の分野だ。同社が手がけるのは幅3.1メートル、奥行き3メートル、高さ2.6メートル、重さ80キログラムの3Dプリンター。大人2人で1時間ほどあれば組み上げられるという。また、積層物によって3Dプリンターのフレームの大きさを変更することも可能だ。3Dプリンターの特性を活かし、複雑な構造物も作ることができる。

自社で3Dプリンターと、搭載するソフトウエア、コンクリートに混ぜ合わせる混和材の全てを設計する。大岡航最高執行責任者(COO)は「コンクリートの積層は物質的な制御が難しいため、全体のバランスが重要。自社内で完結することで、現場で使える製品を作ることができる」と説明する。

起業当初は海外製の3Dプリンターを日本向けに最適化し、大型の積層物を作る計画だったが、「法規制や商慣習の観点から難しい」(大岡COO)と判断し、建材を作る現在の形に至った。

実証の結果をフィードバック

20年には吉村建設工業(京都市中京区)と、地中に埋めて水を溜める「集水ます」という設備を現場で作る実証を行った。21年は準大手ゼネコンの前田建設工業と円柱型の集水ますを造形し、設置まで行う実証を行った。

実証で造形した円柱型の集水ます(同社提供)

素早い実証にこだわったのは建設現場のフィードバックをいち早く取り入れるためだ。大岡COOは「長きにわたって人手によって最適化されたオペレーションの中で、自然に使ってもらえる3Dプリンターでなければ、現場では使われない」と意図を語る。機能において「『ここまであれば使える』や『この部分がわかりにくい』といった現場の答えを反映させていく」という。

ポリウスが強調するのは、人間とテクノロジーの「共存施工」を目指すという点だ。積層跡が残る関係から、目に触れる建材を3Dプリンターで作るのは現実的ではない。だからこそ人間が「頭を使う」業務に専任し、3Dプリンターで作っても問題ない建材をテクノロジーで補う未来を描く。人手不足の解消に寄与しながら、生産性向上につなげる。

23年の市場投入を予定

大岡COO

22年春には協力する建設会社向けに、試作機を50台ほど提供する。価格は1000万円台で予定する。23年には一般向け製品の市場投入を計画し、小規模な施工に対応できるようにする。大岡COOは「価格も3Dプリンターにしては抑える考えだ。地方の中小事業者向けに展開する」と展望を話す。

今後も野外で使用することを前提に、天候による湿度や温度変化に耐えられるようなハードや混和材に改良を加えていくという。


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