インバウンド(訪日外国人)需要回復を見据え、スタートアップが地域の魅力を体感できる体験商品を打ち出している。岸田文雄首相は新型コロナウイルスによる入国制限の緩和を表明、政府は訪日外国人観光客の受け入れを10日に再開する。約2年ぶりの国際観光の受け入れとなる。新型コロナの影響が残る中、関連事業者は「量より質」の観光体験の提供で訪日客を誘致したい考えだ。(山下絵梨)

訪日外国人向け伝統文化体験オンライン予約サービスを提供するディーパートラベル(東京都世田谷区、石川光社長)は、北海道エリアに、エゾシカの狩猟見学や雪原での乗馬などが体験できる体験商品を新たに追加した。同社は訪日客が通常はアクセスするのが難しい日本の伝統文化体験を簡単にオンラインで予約ができるサービス「Deeper Japan」を運営する。

旭川市を中心にエゾシカ狩猟見学体験や大雪山でのバックカントリースキーとスノーボード体験、はけ染め物体験、旭川郊外での乗馬体験や上川町での雪上車クルーズ体験をラインアップした。最前線で活躍する職人やアーティストと直接提携することで、職人と観光客がより深く接する時間を提供。研修を重ねた通訳ガイドが同行することで、旅を通じて異なる文化間の相互理解につなげる。

訪う(宮崎県高千穂町、日高葵社長)は、英語話者を対象に、宮崎県・高千穂の暮らしを体験できる旅「Hidden Gem Journeys」のガイドツアーの提供を始めた。地元の人と協業してアレンジし、いつもは入れない場所や到達しづらい場所に案内する。高千穂町役場総合政策課と開発した。

秋の五穀豊穣(ほうじょう)などを祈る神事芸能の夜神楽を深く知ることができるのもツアーの特徴だ。地元民によって夜通し舞われる夜神楽を、観光客が一員となって体感できる。他にも、少し特別な体験がしたいという観光客にさまざまなテーマでツアーを展開する。朝いちばんで食べられる焼きたてのチーズまんじゅうや、日ごろは入れない神社・本殿内での体験などを通じて「替えの効かない旅の滞在体験」(同社)を提供する。

新型コロナの影響で訪日旅行客が激減したものの、現在は「徐々に海外の旅行会社からの問い合わせは増えている」(ディーパートラベル)。新型コロナの水際対策の緩和を巡って、政府は6月から1日当たりの入国者数の上限を2万人に引き上げた。訪日旅行客が戻ってくる時を見据え、より踏み込んだ旅行体験を訪日潜在層に届けられるかが、インバウンド復興のカギを握りそうだ。