働き手の声を代弁するのは誰なのか−。そう考えざるを得ないのは、労働組合の中央組織である連合のドタバタぶりを目にするからだ。

 高収入の専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度、いわゆる「脱時間給」を盛り込んだ労働基準法の修正案をめぐり、7月中に予定されていた政府、経団連、連合との政労使合意に暗雲が漂ってきた。連合執行部が政府案の修正を条件に「脱時間給」への賛成に転じたことに傘下の産業別労働組合などが強く反発しているためだ。

 政府が秋の臨時国会への提出を目指す労働基準法改正案は、働き方改革の目玉である。もともとの法案は2015年に国会提出されたものの野党による「残業代ゼロ法案」との批判にさらされ、審議されないまま現在に至るが、政府は残業時間の上限規制を盛り込む形で新たな法案として出し直す方針だ。

 連合の混乱の発端はここにある。長時間労働の是正は労働界の悲願だが、「脱時間給」反対を貫けば残業時間の上限規制も実現しない。そこで政府案に修正を迫る形で自身の主張を反映させる「条件闘争」に切り替えた。

 7月13日に連合の神津里季生会長が安倍晋三首相と会談し、年間104日以上の休日確保の義務化など労働者保護を要請したのはこうした経緯からだ。

 ところが傘下の労組は連合の「変心」に反発を強め、執行部はいまだ混乱を収束できないでいる。

 残業時間の上限規制をめぐっては、労使で繰り広げられてきたぎりぎりの攻防が最終局面で首相裁定によって決着した経緯がある。

 労使自治で進めるはずの働き方改革に、官邸主導が色濃くなる現状を嘆く声も聞かれるが、いまの連合の姿を目の当たりにすると、それも仕方ないと思わざるを得ない。

 そもそも、連合は働き手の声を代弁しているのか−。いまや働き手の4割がパートや派遣社員など非正規雇用。労働組合の組織率も17%と過去最低を更新している。

 雇用されない働き方が広がり「労使」の概念は希薄化している。働き手の中には、時間の概念に縛られず成果で評価されることを歓迎する人も少なくない。

 多様な働き方をすでに実践している人の目には、「闘争」を繰り広げる連合は遠い世界の存在と、冷めた見方が広がるのもやむを得ないように感じる。

 そんな疑問を経済同友会の小林喜光代表幹事にぶつけるとこんな答えが返ってきた。「連合は今後、働き方の主体となっている人たちの思いをどのように集約できるかだろう」。

 今回の混乱をどう収束させるかは、連合のこれからの存在意義を占う試金石だと思っている。
(文=神崎明子)

【ファシリテーターのコメント】
私自身、会社員ながら労働組合に入っていません。不当な扱いを受けた時、守ってくれる存在はないのか−。そんなことを考えながら入社からはや20年近く経ってしまいました。
神崎 明子