懐かしいようなかわいらしいデザインの車は、マツダが1960年に発売した初の乗用車「R360クーペ」。マツダ取引先の鋳造メーカー、坂本重工(広島市西区、坂本伸幸社長、082・292・7575)が製作した実物大の発泡スチロール模型だ。

 マツダが17年、地元住民などを対象に開いたイベントに出品。坂本浩三常務は「ほかの取引先は部品のカットモデルなどを出品していたが、うちは鋳物を持って行くわけにもいかない。手がけているもので持ち込めるものを、と考えて製作した」と明かす。

 同社の特徴は、鋳物の砂型を作る際に用いる実物大の製品模型を、通常の木型ではなく発泡スチロールで作る「フルモールド法」を採用していること。

 加工は内製化しており、お手の物。同じマツダサプライヤーで実車を持つ南条装備工業(広島市南区)の協力を得て採寸。車体は7分割し、タイヤとミラー、ドアノブも別に成形して接合、塗装した。

 坂本常務によると、本業のプレス金型素材になる大きな鋳物の模型と比べると「これでも小さい」。「舞台セットなどにも応用できるのでは」と話す。コスモスポーツなどマツダのほかの名車を製作する構想もある。

【ファシリテーターのコメント】
この前、マツダのデザイン・ブランドスタイル担当である前田育男常務執行役員のインタビューを掲載した。印象に残っている言葉が、「いろいろなものをそぎ落としながら美しい形を追求するのはすごく怖いんですよ。どんどん特徴がなくなって、身ぐるみはがれていく感じ。だけど全部はぎ取った時に出てくるものが度肝を抜かれるような光の動きだったりする。余分なものをそぎ落としていく日本的な美の感覚も背景にはあります」ー。坂本重工でも何か美の感覚を感じとっただろうか。
明 豊