海に廃棄されたプラスチックの問題が関心を集める中、国際標準化機構(ISO)では海中で分解される次世代プラスチックについて、標準規格の検討が進んでいる。分解性能の評価方法などを定める新規格はドイツやイタリアから提案されたもので、欧州化学業界による市場拡大戦略と見ることもできる。2020年ごろに発行予定の新規格は、欧州先進国などが署名した「海洋プラスチック憲章」に基づく規制に引用される可能性もあり、日本の産業界も注視する必要がある。

 2017年、ISOで海洋分解性プラスチックに関する2種類の新規格が提案された。実験室内での生分解性の評価方法や要求事項を規定する「ISO22403」はイタリア、実海域中での評価法が対象の「ISO22766」はドイツが原案を作成。ISOでの議論には生分解性プラを手がけるイタリアのノバモントや独化学大手のBASFの関係者が参加しており、企業色が強い。「両国は緊密に連携しているようだ」と、ある標準化の専門家は指摘する。

 18年6月にはドイツ、イタリアのほか、英国、フランスなどが海洋プラスチック憲章に署名。プラスチックの海洋漏出防止や環境に優しい処分方法の確立などを目指す同憲章に基づき、欧州などで規制強化が進むと見られ、規制には策定中のISO規格も関連付けられる可能性がある。

 一連の動きには、次世代素材で主導権を握りたい欧州化学業界の思惑が見え隠れする。ノバモントやBASFは既に、自国発の評価方法に基づき多様な試験データを蓄積しているとみられ、規格が普及すれば先行優位性が働くことになる。海洋プラ問題への急速な関心の高まりについても「(シェア拡大を狙う)欧州のイメージ戦略」(同じ専門家)と見る向きもある。

 現時点では、日本は静観姿勢を保つ。政府は6月時点では同憲章への署名を見送り、産業界も海洋分解性プラの市場性が未知数なため、国際規格策定への関与は限定的だ。ただ「ドイツやイタリアが自国に不利な規格を作るはずがない」(同)のも事実。非接触型ICカードのように、欧米勢の巧みな標準化戦略に対し日本が後手に回った例は少なくない。新たな素材の実質的なルールになり得る規格の策定に対し、官民が連携し一定の影響力を確保したいところだ。
(文=藤崎竜介)