造船業界に逆風が吹いている。2018年に1ドル=110円前後だった為替は8月には同105円台になり、鋼材価格も上昇傾向。他方で世界シェアが日本を上回る韓国・中国はいずれも大手の再編が進み、規模を武器に低価格攻勢を仕掛けている状態だ。こうした中、国内勢は国内改革、グローバル展開のそれぞれで生き残りをかけた戦いを続ける。(文=編集委員・嶋田歩)

狙うはLNG船
 「国内造船業がこのままでは立ちゆかなくなる危機感は、数年前から感じていた」。三井E&S造船(東京都中央区)の古賀哲郎社長は語る。高い人件費に加え、国内に小規模造船所が数多く残る現状。規模が小さいため、自動化設備などの投資もままならない。

 他方で中国、韓国メーカーは規模の大きさに加え、韓国の場合は実質的な政府による救済支援がある。政府支援をバックに大量の安値受注を行い、船価の引き下げを引き起こしている。「安値受注で公正競争がゆがめられたら、各企業の努力も無意味になってしまう」。日本造船工業会の斎藤保会長は指摘する。

 こうした中、三井E&S造船は中国の揚子江船業と合弁会社を設立し、同国で中型液化天然ガス(LNG)船の建造を始める計画だ。

 中国に注目するのは割安な人件費に加え、圧倒的な部材調達力、それに中国国内の需要だ。エネルギー消費拡大で、中東諸国から大型タンカーで運んだ石油精製品やLNGを長江を使って内陸の各都市へ積み替え輸送する中型LNG船やバラ積み貨物船需要が増えるとみている。合弁会社に船型開発や品質管理ノウハウを提供し、低コストで船を生産、売り上げを伸ばす計画だ。中型LNG船はインドネシアなど東南アジア諸国からの注文もにらむ。

データで優位に
 国内5事業所(改造・修理事業所も含めると6事業所)のデータをIoT(モノのインターネット)で一元管理し、競争力を高めることで生き残りを図ろうとしているのがジャパンマリンユナイテッド(JMU、横浜市西区)だ。

 一元管理により船種や船台の空き状況に応じた生産計画や部材調達を徹底し、コストダウンを図るとともに韓国大手のような大量受注もやりやすくする。

 ロボットや自動化機器、人工知能(AI)の導入も急ぐ。「ロボットの導入率はまだ低い。これを上げていかなければいけない」。安部昭則常務執行役員は強調する。造船現場でロボット導入を阻んできたのは部材が大型で重量があるのに加え、種類も多く、ティーチング作業が都度必要なことが大きかった。しかし最近はAIや画像処理技術の進歩などでハードルが下がった。ロボットの活用で生産効率はもちろん、品質管理能力も向上できる。

 同社は自社グループでロボットも手がけており、造船現場に特化したロボット開発も進める。安部常務執行役員は「船の価格は7割が材料費、3割が人件費と言われる。ロボットやIoTで生産費用を抑えれば韓国や中国の造船企業にも対抗できる」と意気込む。

 生産効率化と並んで、JMUが期待するのが船舶運航データの活用。納入した船がどのように使われているかのデータを顧客に提供してもらい、それを分析し、寿命延長などの提案や新造船設計に役立てる。設計要求が変われば、最適船型などの設計能力が高い日本が優位に立つ可能性も高まる。電気推進船や水素船など次世代の船でも日本が有利になると見る。

提携戦略に活路
 川崎重工業や三菱重工業なども、中国の強化や国内での提携戦略などで生き残りを進める。川重は国内ドックを削減する一方で、中国合弁会社の大連中遠海運川崎船舶工程(DACKS)のドックを増設。DACKSの第2ドックは19年3月に完成し、LNG船などの受注を狙う。三菱重工はグループで今治造船(愛媛県今治市)や名村造船所などと業務提携し、生き残りを目指す。設計・建造や艤装品共通化のほか、受注に応じて提携各社の建造能力を有効活用する狙いだ。三井E&S造船も常石造船(広島県福山市)と、18年5月に業務提携している。

 国土交通省は25年をめどに、現場生産性を50%向上するとともに新造船の開発期間を半減し、世界建造シェア3割獲得を狙う「海事生産性革命(i―Shipping)」を掲げて、企業の研究開発を支援している。