米ボーイングの民間旅客機「777」から「777X」移行の端境期で、直近では業績の足踏みが続く日本の航空機産業。将来訪れる成長期に向け、雌伏の時だ。2020年以降は新興国をはじめとした新旅客機需要で堅調な成長が見込める。防衛関係では新防衛大綱が制定され、対応する装備品開発が急務だ。川崎重工業の下川広佳取締役常務執行役員に成長戦略を聞いた。

 ―6月のパリ航空ショーに固定翼哨戒機「P1」や輸送機「C2」を出展しました。
 「2機種を同時に出したのは初めて。これまでも世界各国のエアショーなどに出展しており、海外での認知度も高まっている。注文獲得につなげたい」

 ―両機とも高価格がネックと言われます。
 「よく指摘されるが、必ずしもそうではない。コスト削減努力で他機種との差は縮まってきている。低速で低空を飛べる能力はP1だからこそ。C2についても、競合機とは開発の年代や機体構造に違いがあり、すみ分けは可能だ」

 ―米ボーイングの最新鋭旅客機「777X」の協業については。
 「前部・中部胴体パネルを担当する名古屋第一工場(愛知県弥富市)は生産能力を従来比2倍に引き上げた。同工場ではロボットや自動化設備を導入し、コスト削減と生産の見える化に努めている。ロボットの習熟も進み、生産機数がさらに2倍になっても対応できる。次は部品加工を手がける岐阜工場(岐阜県各務原市)のコスト削減を進める」

 ―具体的には。
 「岐阜工場には常時10万点の部品の取引があり、近隣の協力工場を含めると組み合わせは100万通りにも達する。この管理を今までは人間が経験則でやっていた。遅れやトラブルの対応などをデジタル化し、生産設備の稼働状況も見える化して、すべてのモノの所在が明確に分かるようにしたい。その上で人工知能(AI)による管理だ。AIでトラブルの解決策を導き出せるようにする」

 ―AIをどう導入していきますか。
 「本社の開発部門で自社開発するしかないだろう。航空機は自動車に比べて少量生産なことに加え、専門性が高く、既製のAIでは使い物にならないだろう。生産のデジタル化やAIに、今後3年で数十億円をかけて研究開発を進める」

 ―航空部門は21年度から本格的に利益貢献するというのはその意味でしょうか。
 「その通りだ。777Xの注文が拡大するのはこれからで、21年度以降は相乗効果が期待できるだろう。生産数が増えても生産コストはそれほど上がらない。今後はロボットの混流生産対応もテーマ。胴体の直径が777や767、737と変わっても対応できる」

【記者の目】
 防衛省向け、民間機向けともに、海外勢と比べた日本企業の弱点は“コスト”だ。川崎重工業は弱点をロボットなど自動化技術とAIでカバーしようとしている。国内航空機産業は元々、生産機数が少ないことに加え、熟練工の高齢化が進み、技能伝承なども急務。川重が成功できれば、他の国内メーカーの手本となりそうだ。
(嶋田歩)