日本政府は28日、輸出管理の優遇国から韓国を除外する。これに猛反発する韓国は日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄するなど、両国の関係は最悪の事態を迎えつつある。韓国による日本製品の不買運動や訪日韓国人旅行者の減少など、日本の産業界の一部に影響が出始めている。日韓対立による経済への打撃は韓国の方がはるかに大きいとみられるものの、日本の一部業界は対立による影響を懸念する。

 夏休み期間(9―18日)中、成田空港の韓国人入国者数は1万2260人、前年同期より約35%も減少した。東京出入国在留管理局・成田空港支局による速報値だ。

 この傾向を反映するように西日本鉄道のホテル事業は、7月の韓国人による利用室数が前年同月比で約4割も減った。高速バスも人気路線の福岡―湯布院線が7月23日時点で同約2割以上減少。一方、ソウルで運営するホテルは利用者の6割が日本人で「過去最高の業績。稼働率は9割以上で絶好調」(倉富純男社長)と韓国人の対応との違いが鮮明だ。

 韓国人の日本旅行が減少する中、大韓航空が日本路線を大幅に縮小したほか、格安航空会社(LCC)も運休が相次ぐ。例えばティーウェイ航空は19日から佐賀―釜山線と同ソウル線を運休。「日韓問題の影響が大きい」(佐賀県空港課)。

 韓国による日本製品の不買運動も影響が出ている。アサヒ、キリン、サッポロなどビールメーカー各社は2000年頃から本格的に対韓輸出を始め、この数年は各社とも輸出量が右肩上がりで伸長。詳しい数字は明らかでないが7月以降は販売に急ブレーキがかかったのは確実。すでに韓国でのテレビCMなど販売促進を停止するなど、事態の好転を待つしか手がない状況だ。

 日本車販売にも影響を与え始めた。韓国輸入自動車協会(KAIDA)によると、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの3社が5ブランドを展開しており、7月の合計販売は前年同月比17%減の2674台に落ち込んだ。ホンダは「販売店に来る顧客数は減っている。ただ日本製品の買い控え運動の影響かは把握できていない。今後の動向を注視したい」(担当者)とする。

 他方、化学業界は短期的な影響を悲観していない様子。サムスン電子やLGグループなど半導体やディスプレー向け情報電子材料の重要な顧客が数多くいるが、「経済界は大人の関係だ」(化学大手幹部)と、企業間の関係悪化にはつながらないと見る。電機業界でも、日本勢が強い半導体や有機ELパネル製造装置で、多少の影響は出そうという程度に受け止めている。

 日韓対立が激化するほど打撃を受けるのは韓国経済だ。日本政府が韓国向け半導体材料の輸出管理を見直し、韓国半導体産業は競争力低下のリスクを抱える。半導体受注が減り国内景気が悪化すれば文在寅大統領の支持率低下は避けられない。

 韓国は国内総生産(GDP)の約4割が輸出、うち半導体関連が約2割を占める屋台骨だ。日本による輸出管理見直しで半導体材料の調達に手間取り、生産に影響が出れば米アップルなどが韓国メーカーからの半導体調達を減らしかねない。

 半導体市況悪化でサムスン電子は19年4―6月期決算の半導体部門営業利益が前年同期比71%減。だが文大統領は自国経済を自ら減速させるような状況を改めようとしない。

「対抗措置でもない」(経産相)
 世耕弘成経済産業相は27日の閣議後会見で、韓国を貿易管理上の優遇区分「グループA」から「グループB」に引き下げる政令改正について「日韓関係に影響を与えることは意図しておらず、ましてや(徴用工問題の)対抗措置でもない」と語った。

 韓国政府は、日本が一連の措置を撤回すれば軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の延長を再検討する考え。

 だが世耕経産相は「防衛当局間の軍事情報に関する政府間協定の取り扱いとは次元が異なる問題だ。両者を関連付ける韓国側の主張は理解できないし、受け入れられない」と語った。

 一方で事態を打開する方策についても言及した。

 「7月12日の説明会の趣旨を再整理していただければ、局長級の政策対話を開く用意はある」と話し、韓国側が歩み寄りやすいような道筋を示した。

【輸出管理上の優遇措置対象国】1分解説
【A.日本が手続き簡素化認めた国】

日本政府は、韓国を輸出管理上の優遇措置対象国から外す政令を28日に施行します。韓国が優遇国から外れるとどうなるのでしょうか。

【Q】輸出管理上の優遇措置対象国って何かな。

【A】日本政府により輸出手続きの簡素化を認められた国を指します。兵器の拡散防止に向けた四つの国際的な枠組みに全て参加するなど安全保障上の輸出管理体制が十分に整備されている国が指定されています。優遇国は「グループA」と呼ばれ、現在は米国や英国など27カ国が対象です。韓国は優遇国から外れた初めての例となります。

【Q】韓国が優遇国から外れたらどうなるの。

【A】現在の「グループA」から一つ下の「グループB」と呼ぶカテゴリーに移ります。グループBの国は兵器や先端材料などあらかじめ規制された品目に加え、それ以外の品目でも輸出案件ごとに経済産業省の個別許可が必要になる場合があります。

【Q】なぜ韓国は外れたのかな。

【A】経産省は韓国側と長期間、政策対話が行われていないことや企業による輸出管理がおろそかになる恐れのある短納期発注、二国間貿易の中で「不適切な事案」が判明したことを背景に挙げています。韓国側との信頼関係が崩れてしまったのが理由と言えます。

【Q】産業界やサプライチェーンへの影響は。

【A】今回の措置は輸出管理の国内における運用見直しで禁輸ではないので影響はないでしょう。日本政府は民間用途で安全に使われることが確認できれば順次輸出を認めています。実際優遇国ではない台湾などとも貿易は円滑に進んでいます。ただ韓国は日本への反発から日韓軍事情報包括協定(GSOMIA)の破棄を決め、日韓の対立は安全保障分野に波及しています。