日産自動車は2日、金型不要で自動車向けボディーパネルを成形できる技術を実用化したと発表した。ロボットが棒状の工具を押しつけて薄鋼板を変形させる「インクリメンタル成形」。多品種少量部品の生産に適しており、金型のプレス加工と比べ大幅なコスト低減が可能で、設備費用は10分の1という。同技術を使ったドレスアップ用部品や、旧型車の補修部品の商品化を目指す。将来は量産ラインでの活用を検討する。

 ロボットで鉄を対象に加工する3D(3次元)プリンター―。実用化したインクリメンタル成形を、坂本秀行日産副社長はこう表現する。

 部品の3Dデータを基に、まず1台のロボットに取り付けた棒状工具でワーク(加工対象物)を大まかに成形し、その後、向かい合わせに設置した2台のロボットで凹凸を加工。最後にもう一度、治具に固定したワークを1台のロボットで加工して仕上げる。自動車のボディーパネルを対象としたインクリメンタル成形の実用化事例は、まだないという。

 ボディーパネルはプレス加工で成形するのが一般的。大量生産で威力を発揮するが、数百枚程度の少ない加工数では金型を含め設備コストをカバーできない。

 一方、ユーザーのデザイン嗜好(しこう)が多様化しているほか、部品を交換して希少な旧型車に乗り続けたいとのニーズも増えている。低コストで多品種少量部品を加工する技術が求められており、日産はインクリメンタル成形に活路を見いだした。

 日産のインクリメンタル成形の費用(治具・加工データ作成)は数十万―100万円で、ロボットも500万円程度の汎用機ですむ。リードタイムも3日から4週間と、型設計などを含め約1年かかるプレス加工から大幅に短縮できる。

 実用化に向け、製品の表面品質と寸法精度の確保という課題があった。表面品質は棒状工具の接触面を「鏡面化ダイヤモンドコーティング」して低摩擦化することで解決。寸法精度はワークが元の形に戻ろうとする残留応力を考慮した上でツールパス(工具軌道)を生成するプログラミングの工夫でクリアした。対向する二つの工具の制御の最適化も図った。今後は高張力鋼板などに対応可能な素材を増やしていく方針。

 「5世代前の『スカイライン』の交換用パーツが欲しいといった需要が年100件規模である」(冨山隆アライアンスグローバルダイレクター)とし事業性は十分とみる。11月末までにインクリメンタル成形を使ったドレスアップ部品や補修部品の事業の方向性を決める方針。

 将来は量産ラインでの導入を視野に入れる。高級車など生産台数の少ない車種では「可能性はある」(吉村東彦常務執行役員)。成形スピード向上が課題だが、「ロボットメーカーとも協力して解決したい」(坂本副社長)と説明する。

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