火葬炉や工業炉を製造販売する宮本工業所(富山市、宮本芳樹社長、076・441・2201)は、11月に黒部工場(富山県黒部市)内に新営業拠点「MiBOX」を開設した。その目玉設備は火葬炉などの映像を実寸で投影する3Dプロジェクション。火葬炉とともに火葬場全体の様子も再現できる新設備は、来場者に葬儀の疑似体験を提供する。炉のメーカーが火葬炉だけでなく、火葬場までも紹介する新サービスを始めるのは、火葬が浸透していない海外客に火葬そのものの理解を広げ、市場開拓につなげる狙いがある。

3Dプロジェクションは幅8・5×高さ5メートルの大型スクリーンを3面に配して、同社の火葬炉を導入している実在の火葬場の映像を流す。棺が玄関ホールを通り、告別室で遺族と最後の別れをした後、炉に納められるまでの火葬の一連の流れを実物大で映し出し、実際に葬場に立ち会っているような感覚を味わえる。正面スクリーンの幕を開ければ、実機展示のスペースに直結し、火葬炉の実物も確認できる。

【橋渡し役】

火葬場の建設に関わる自治体関係者、設計事務所、コンサルティング会社などに対し、工事をしようとしている案件に近い火葬場をこの仕掛けで紹介し、興味を持った事例は現地で実物を見てもらう。いわば火葬場見学の橋渡し役がMiBOXというわけだ。

想定しているのは国内客だけではない。「日本の火葬場に興味を持っている海外のお客にも来ていただく」と宮本社長は話す。

火葬炉の国内市場は飽和状態で、今後はほぼ更新需要しか見込めない。一方、海外に目を向ければ、土葬が一般的でありながら、都市化の進展による土地不足に伴って、これから火葬が本格的に広まろうとしている国もある。そうした国々の葬儀関係者は、火葬が普及している日本の火葬場に対し「興味を持っている」(宮本社長)。

実際、同社には東アジアや東南アジアからの引き合いが近年増えていることから、宮本社長は「大きなビジネスチャンスと捉えている」と海外市場の伸びに期待をかける。特に中国では大気汚染関連の規制の厳格化に、中国の炉メーカーが追従しきれず、厳しい規制に対応してきた日本の火葬炉が注目されているという。

【無煙・無臭実現】

宮本工業所は無煙・無臭を実現した火葬炉のパイオニア。700カ所以上の納入実績があり、国内でトップシェアを誇る。また、炉を生産するだけでなく、火葬場について工事の元請けになったり、指定管理者制度やPFI(民間資金を活用した社会資本整備)によって運営も手がけたりと、建築から運営に至るまでの知見を有する。日本の火葬の現場を学ぶ相手としてはうってつけの存在だ。

国内市場が伸び悩む中、海外市場を攻略しようとする宮本工業所。そんな同社が始めた火葬場の疑似体験という新サービスは、火葬になじみが薄い国の葬儀関係者に向けて、日本式の火葬を伝えることで、火葬炉の市場を海外に拡大する役目を担っている。(取材=富山支局長・江刈内雅史)

火葬場を疑似体験できる3Dプロジェクション