政府は19日の未来投資会議(議長=安倍晋三首相)で、多発する高齢ドライバーによる重大事故を防ぐため、運転支援機能を搭載する車「サポカー」に限り運転できる新たな免許制度の創設を検討することを決めた。19年度内に方向性を打ち出す。

「サポカー」は衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)やペダル踏み間違え時急加速抑制装置などの搭載を想定。今後、免許制度の実現に必要な運転支援機能の範囲や性能評価のあり方などについて関係省庁が連携して議論し具体策を示す。

政府はすでに国産の新型乗用車を対象に21年11月から自動ブレーキの搭載を義務付けることにしている。歩行者への衝突を回避するなど国際基準と同等の性能を求め、メーカーに認定試験を課す。既存の車種やモデルは25年12月以降に販売する車に適用する。

すでに大型トラックやバスは14年以降、搭載が順次義務化されている。今回の対象は普通自動車や軽自動車、3.5トン以下の貨物車両。性能認定試験では■時速40キロメートルで走行中、前方の停止車両に衝突せず止まる■60キロメートルで走行中、前を20キロメートルで走る車にぶつからない■30キロメートルで走行中、時速5キロメートルで横断する歩行者にぶつからず停止する―ことなどを満たすよう求める。自動ブレーキは18年に販売された国内の新車の84.6%に取り付けられているが、性能にはばらつきがあり自動車各社は新たな基準への対応が必要になる。

事故防止効果は…

7月、長野・蓼科の聖光寺。トヨタ自動車グループが交通安全祈願のために建立したこの寺に、豊田章男トヨタ社長のほか、トヨタと関係の深いマツダやスズキ、SUBARU(スバル)の完成車メーカーや部品メーカーのトップらが集まった。事故犠牲者を法要し交通安全対策を話し合った。トヨタの吉田守孝副社長は、この「蓼科会議」について「高齢者の事故低減は喫緊の課題。他社とも協調して取り組みを急ぎたい」と説明した。

自動車メーカーは安全運転支援システムの開発を加速する。国土交通省が8月にまとめた乗用車メーカー8社の計画によると、最高水準の安全運転支援システムを新車に標準搭載する方針を各社が示した。

また既販車対策としては、後付けの踏み間違い時加速抑制装置について報告した。商品化済みのトヨタ、ダイハツは対象車種を年内に四つ増やし19車種に拡大。両社以外の6社も20年夏以降の商品化を見込む。同装置は、サードパーティー(第三者企業)の製品もあり、今後、普及が加速する見込み。

警察庁によると2019年上期(1―6月)の75歳以上のドライバーによる死亡事故は172件で、違反別では「運転操作不適」が25%にのぼった。それだけに後付け踏み間違い時加速抑制装置への期待は大きい。

ただ現時点では同装置によって防げる事故は限定的だ。一般的に時速10キロメートル以下など低速時と停車時に作動域を限定しているためで、中・高速域での走行時に誤ってアクセルを踏み込んでも働かない。通常の高速合流時や急坂を上る際にアクセルが効かないとかえってドライバーに危険をもたらすとの配慮からだ。

通常走行時の踏み間違いによる事故を防ぐには後付け装置の進化が必要だ。大きく二つのアプローチがある。一つは高速道路の合流などで通常時には反応せず、急加速が危険な時だけに作動する踏み間違い防止装置の開発。もう一つは、人や障害物を検知して作動する自動ブレーキで、後付けできる製品を開発するアプローチだ。

ただ、いずれも開発は簡単ではないとみられる。後付け自動ブレーキの場合、「大規模な改修や、検証作業が必要になるはず」と自動車メーカーの元技術者で現在は北海道大学に籍を置く渥美文治氏は指摘する。技術面のほかに社会受容性の課題もある。致命的でない誤作動なら許せるのか、追加コストをどの程度まで認めるのかなど論点は多い。

国産車で初めて87年にエアバッグを実用化したホンダだが、「当時は一般ユーザーはお金を払わないと思われていた」(業界関係者)という。それが今は、当たり前に搭載される安全機能の一つになった。後付け装置が高齢者の事故抑制に役立つのは間違いない。メーカーの技術開発に期待するとともに、高齢ドライバーを中心にその家族、自治体やメーカー関係者を巻き込んだ議論を活発化し、社会受容性を高めることが必要だ。

(取材・後藤信之)