村西とおる−。常識にとらわれない斬新な発想で一世を風靡した、アダルトビデオ(AV)監督だ。前科7犯。借金50億円。米国で懲役370年を求刑されたこともある。昭和最後のエロゴト師。恥知らず。人でなし−。その特異な存在を表現する異名は数知れない。2019年には、その生き様を描いた作品『全裸監督』が山田孝之さん主演で世界最大級の動画配信サービス「NETFLIX」で映像化、全世界に配信されたほか、北海道を舞台とする撮影現場を実録したドキュメンタリー映画『村西とおる 狂熱の日々』も公開された。再び脚光を浴びる“AVの帝王”が明かすその生き様を支える信念や、萎縮する日本社会やメディアへの濃厚で熱い想いとは・・・。

―監督、本日はよろしくお願いします。

お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません。今日はよろしくお願いします。ナイスですね〜。

―いきなり飛ばしますね(笑)。『全裸監督』の大ヒットや『狂熱の日々』の公開をきっかけに、再び注目を集めています。

ウチの女房なんか、「何が起きるか分からないから、もうやめてちょうだい。前科7犯が8犯になるかもしれないと思うと心配で仕方ない」と言うんですよ。だから私は、「お呼びがかかっているうちが華だよ。71歳っていったら、世間のみなさまはそりゃ年金生活でマイペースかもしれないが、一方では、こけつまろびつ、まろびつこけつしながらなんとか生きている人もいるかしれない。そういう人たちにとって、少しでもお力になれるなら、私の前科7犯の意味があるだろう」と言って聞かせるんですよ。


「どん底に落ちた時、一つだけ方法がある」

―71歳とは思えないエネルギーが満ちあふれていますよね。

私なんか本当は年金生活なんですよ。それでもこうして私のお尻の穴まで、ご開帳している。ただね、生き恥をさらしているんだけど、皆さんご承知のように、これから先の人生、40、50、60歳と続くと、人間だから残念なことに必ず失敗するもんですよ。そのときにどうしたらいいかというと、誰かの人生論を読んでも何の力にもならないんですよ。(ソフトバンクの)孫さんや(ユニクロの)柳井さんの成功みたいなものは、宝くじに当たったようなもんだ。我々はやっぱり希望を失ってしまって、にっちもさっちもいかない人生を日々生きてる。どん底に落ちて、「アヘアへ、アヘアヘ」と出したらいけない声を出しているときにどうしたらいいかと。それには一つだけ方法がある。

―何でしょうか。

例えば大海原にボートを漕ぎだしたら、嵐になって灯台がどこにあるか分からない、それでも必死に漕いでると力尽きてきて、もうやめようかなと思う時がくる。そのときにふっと隣を見るんですよ。すると私が、71歳のオヤジが板きれ1枚にしがみついて、必死こいて泳いでいるんですよ。それを見たら、「いやいや、俺のボートもボートだけど、あのオヤジは板きれ1枚だぞ。まだまだ俺の方がましだ。もうちょっと頑張ってみようか」となる(笑)。

―監督の生き様を見ることで、再び生きる力を得られるわけですね。

今はそういうことを訴えるような、感じさせる存在がいないんですよ。だから周囲を見渡して、すぐに「ダメだ」と諦めちゃう。社会の方も挑戦して1回失敗した人間を相手にしない。そういう社会だと挑戦しようとする人はいなくなりますよ。向こう傷を負わないように閉塞感の中で生きてるから、気がついたら中国のGDPは30倍くらいになったのに、我が国は2%位しか経済成長できていない。こんな国なら革命が起きてもおかしくないですよ。それでも日本人はなぜか幸せそうだ。だって右も左も一緒だから。

中国はちがうよ、自助努力だもん。人をだましても、たぶらかしても生き抜こうというようなバイタリティーにあふれている。10年も経たないうちに、あなたの奥さんやウチの女房なんかも、中国におさんどんで小間使いで行かなきゃならないような時代がすぐそこに来ている。日本人は向こう傷や挑戦を嫌うが、挑戦しないことがリスクだ。2度とない人生だ。そういう萎縮している日本人の皆さまには、私の、この大馬鹿野郎の、前科7犯、借金50億という存在がいるんです!


「死にたくなったら下を見ろ、俺がいる」

―人生の絶頂とどん底を経験した村西監督だからこそ言える言葉ですね。

この地球上にはいろんな人がいるだろうけど、私は実は死刑囚をうらやましいと思ったことがあるんですよ(笑)。アメリカで懲役370年を求刑された時です。4回死んでもまだ日本に帰れないかと思うと、腰がぬけましたよ。「本当かよ」と。10年や20年なら構わないけど、370年って・・・。米国の連邦裁判所の大法廷ですよ。立ち眩みしちゃいますよ。

なまじ、日本で捕まった経験があるもんだから、検察に起訴されると99%有罪になると思っているもんだから、おかしくなっちゃう。そういう経験をしながら今日を生きている人間でないと皆さんに語れない、ご提案できないことがある。記者のあなたも、私に知り合っただけで何百億円の価値、財産をもらったようなもんだよ。挑戦して失敗しときにも、「あれ、あのとき10年、20年前にあの71歳の村西が喚いてたな、叫んでたな。だから俺なんかまだ大丈夫だ」と思える(笑)。こういう存在が必要なの。

―「死にたくなったら下を見ろ、俺がいるぞ!」というわけですね。

自分のご尊顔を鏡で見てください。運に見放された顔してるでしょう?全員がそうですよ。あるのは努力しかないんだよ!人生には努力しかないという現実を直視しないといけない。私もメイクした自分の顔を見るのが嫌なんだよ。豚面したチビでデブのハゲ茶瓶なのに、公衆便所で自分の顔を見て、惚れ惚れとして、「よし!」と出て行くんだけど、おまえどこが「よし!」なんだよと(笑)。人間はそういう風に自分がかわいくてしようがないが、一度頓挫するとアクシデントに弱くてもろい。もはやこれまでと、すごく早く諦めてしまう。そういうときに、「まだまだだよ」という人が少なすぎる。それが、どっこいいるんだよ、俺なんだよ(笑)。

「人類が相まみえたことのない映像を撮る」

―『全裸監督』の配信や『「狂熱の日々』も上映されて話題です。監督は今なお挑戦を続けています。

もう、愚か者丸出しですよ。気は確かかと(笑)。僕はね、自分を客観視できないんですよ。非常に閉塞した日々を送っているから。ウチの会社に行って社長にお叱りを受けて、鞭でたたかれて、それでようやく解放されて家に帰ってくる。その行き帰りの日々なんです。

まあ、ともかく、(元日本兵の)横井庄一さんじゃないけど、急にジャングルの穴から引きずり出されたような感じですね。でも、道を歩くとね、「あ!監督ですか、一緒に写真撮ってください」と、180cmくらいのがたいのいい中学生ぐらいの息子を連れてる奥さんが声をかけてくれることもある。息子はびっくりして離れちゃうんだけど、「じゃあ一緒に軽く抱き合いましょうか」と写真を撮ると、中学生が唖然としますね。「どうなっちゃってんだ、父ちゃんに言ってやろう」とか思ってるんじゃないかな。そんな風にいまでも気づいて声をかけられることは多いですよ。自分のマンションにタクシーで帰ってきたときでも、運転手が「お客さんこのマンションにAV監督の村西とおるが住んでるんですよ」って言うんですよ。「この野郎!そんなことみんなに言ってるのか」と。運転手は俺のことよく分かってないくせに(笑)。


―ジャングルの穴から引きずり出された感じということですが、再び注目が集まっていこの機会に、やってみたいことは何でしょうか。

僕は、かつて人類が相まみえたことのない映像を提供することでしか生きてきていない。まあはっきり言えば、ノーベル賞なんかちょこざいだと。人類のノーベル賞は何やってんだと。どこ行ったんだと。僕のアイデアが特許だったら、ビルの20、30棟は建っていてもおかしくない。それなのに毎日資金繰りで僕は「アヘアヘ、アヘアヘ」言ってる。鉄板の上で裸踊りさせられるような日々を送ってる。それはまあいいですよ。でも世のため人のために、こんなならず者の薄らバカ、人でなしが生きてきたご恩を返せるとすれば、それはかつて人類が相まみえたことのない映像を撮ることです。村西とおるがいた時代に生きてて良かったと思ってもらえるように。そういうことだね。

―すでに映像は世の中にあふれかえっていますが、それでも人類が相まみえたことのない映像はあるのでしょうか。

それはまだあるよ。例えば、私と人気女優さんとか、政治家さんとだって分かんないよ。「2丁目に捨てるくずなし」という言葉もあるが、私も嫌いな女性は1人もいない。どんな女性でもウエルカムだ。ファンタスティック。ナイスですね。そういうことですよ。


「俺みたいな人間を知らなきゃいけない」

―監督は発明家でもありますよね。企業の経営者もいつもイノベーションを起こせないかと悪戦苦闘しています。監督はいろんなアイデアで業界に革新を生み出してきましたが、何かコツや信念があるのでしょうか。

やっぱり発明やアイデアは、「こんなモノを作って、考えて世に送り出そう」と思ってみても出てこないんだよ。もう追い詰められちゃって、ギリギリのところで苦し紛れに出てくる、先走り液みたいなもんですよ。やり続ける中から出てくる。希望だとか逆境を乗り越えてとか言ってみても、そのヒントなんか何もない。ただ一生懸命ボートを漕いで、漕いで、漕いで、漕いで。やり続ける中からしかかすかな灯台は見えてこないんだよ。

―『狂熱の日々』の中で制作している映画『北の国から 愛の旅路』の撮影でも、直前まで試行錯誤を繰りかえしているようでした。

『北の国から〜』は素晴らしい作品になってる。完成版のDVDを今度発売するんだけど、ものの見事に素晴らしい作品になってる。よくこういう作品作りあげたなと。ドキュメンタリーに出てくる様子だけ見てると、どうにもならない感じだけどね(笑)。 やり続けているウチに、ふっと違うモノができてくる。ここで死ぬわけに行かないと、荒波の中を板1枚にしがみついて必死こいて漕ぐ、これでいいんだよ。

武者小路実篤先生はこう言っている。「人間は最後の最後の最後の瞬間まで、ひょっとしたら助かるかもしれないと空想する力を与えられている」と。余命宣告なんて大きなお世話なんだよ。希望を失わずに何でもポジティブに考えることがDNAに刻まれているからこそ、疫病、貧困といった人類のあらゆる困難を乗り越えて来られたんですよ。いずれにしても俺みたいな人間を知らなきゃいけない。トルストイなんか読んだって、いくら武者小路実篤を読んだって、本1冊で分かるようなら人生を生きる意味は無い。肌で感じないといかん!

―ではますます、ご活躍されるのですね。『北の国から〜』も発売が楽しみです。

知り合いの印刷屋の親父が92歳で死んだの。この親父は元帝国陸軍の軍曹で、どれだけの戦いをしてきたか分からない。体に銃弾の跡が3つも4つもあるけど、非常にテンションの高い親父だった。何かあると、「よし、そこで待ってろ」と言って2階に上がって日本刀を取ってきて俺を切りつけるみたいな(笑)、テンションの高いおじさんだった。そのくせ、俺のウラ本時代に発売前のウラ本を横流しなんかして、ろくでもなかった(笑)。「親父何やってんだ、とんでもないことするな」と文句を言うと、「なんだ」とシラを切るから、「発売3日前に横浜で売ってるじゃないか」と詰め寄ったら、「おまえね、年寄りをいじめるもんじゃないよ」とか言うタフな親父だったけど、92歳である日突然死んじゃった。

死ぬ2日前まで会ってたけど、頭脳は明晰で、タフな親父だった。私はこの親父を知ることによって、「人間というのは92歳でも現役でこれだけ頑張れるのか」と、何百億円にも匹敵するような財産をもらった。今でもこの親父が頭の中にいて、私は92歳を自分のマックスにしようと思っている。


「受け入れなきゃいけないものは受け入れろ」

―監督は心臓の病気で生死の境をさまよったこともあるそうですね。

ガキのころから神経質で臆病だったけど、1週間以内に死ぬ、手術しても50%の確率だと言われると、おかしくなって、うろうろして落ち着かなくなって死を直視できなかった。結果的には手術を受けて助かったけど、そのときは、その瞬間に死んでもおかしくなかった。どきどき、ハラハラして死を受け入れられず、さまよった。そのときに、エピクロスというギリシャの哲学者に出会った。エピクロスは「人間に死はない。人間で自分の死に出会った者はいない。人間に死はない。だから、ありもしないことに怯えてはいけない」と書いていた。死におびえることがいかにナンセンスかということが分かって、気を取り直した。ポジティブに生きることの根源的な考え方だと思う。

エロチシズムの仕事をしてきて、りっしんべんの「性」は自分で見てきたけど、生き死にに対峙するとうろたえてしまった。そういう経験をして初めて、「気にしても煩わしく思ってもしようがないことについては、考えない」という図太さをもらった。留置場に入っているときに前科15犯で「正義」という自分の名前が大嫌いだって言う男に会ったことがあるんだけど、「受け入れなきゃいけないものは受け入れろ」ということですよ。

―受け入れるという意味では、50億円もの借金を完済しています。『狂熱の日々』の撮影時はそうしたギリギリの状況でしたよね。

そこはもう火だるま状態ですよ。当時は電話1本で、「監督、10億ですか」と10秒もかからないで借りられた。だからマンションやビルを買ったりした。バブル経済が弾けて資産価値が7分の1くらいになってしまうと、どうしても借金ができちゃう。なんとか脱しようと思っていて、合法的に自己破産してもよかった。ヤミ金は自己破産させないが、銀行はすぐ自己破産させようとする。裁判所から「なんで自己破産しないのか」と聞かれたこともある。

ただ、私は世間に出て仕事をしていたから、自己破産すると誰にも相手にしてもらえなくなる。それから、保証人になってくれた男がいて、その男の家族もいた。彼を巻き込むといけないと思って自己破産しなかった。私は自己破産を否定しているのではなくて、合法的にできる人はしてもいいと思う。でも私の場合は状況が許さなかった。できたら、よっこいしょして、雲隠れしたい心境はあった。でも、「しようがない」とやり続けて、それを返済したら、気がつくと「逆境に強い男」とか言われるようになった。

俺は逆境には強くないよ、本当は4億でも5億でも欲しかった。それでも、板きれ1枚にしがみついて泳いでいるうちに、なにかそういう信用ができて、世間が評価してくれた。今回の『全裸監督』もNETFLIXで全世界に配信される。1億5千万人くらい会員がいて、のべ7億−8億人が見られることになる。制作費全体も年間1兆4千億円と、民放キー局が4年で使うくらいある。プロモーション費を6000億円使うような巨大モンスターが日本にやってきて、なんとか日本市場を攻略するコンテンツを作れないかと探していた。ヤクザとか壁ドンとかではなくて、民族や宗教を超える、日本発のものがあるだろうと探していると、「日本にこういう恥さらしがいる」ということになった。NETFLIXのCEOも、「こういうタブーの世界を描かないと金を出して視聴してもらえない」となった。どうでもいい食レポなんか誰が見るんだよ!

―最近はテレビにも制約が増え、メディアとしての力が弱まっています。

異端こそ、キラーコンテンツであって、ワクワクドキドキするのに、メディアの業界が萎縮しちゃっている。なぜかというとネットの普及ですよ。ネットにはいろんな人が巣食っているが、クレームを言って自己欲求を満たそうとする病的な人もいる。これに振り回されちゃう。クレームといえば、私も先日、厚生労働省にエイズ啓発のイベントに出てほしいといわれたことがある。私も国にお叱りを受けたことはあっても、お国のために何かしたことはないから、「いいですよ、お伺いします」と引き受けたが、出演2日前に辞退して欲しいと言われた。「僕からエントリーしたんじゃないよ」と言って事情を聞くと、クレームがあったからだという。

ともかく、メディアは跳梁跋扈するクレーマーにびびっている。すくんでいる。心を揺るがすようなものには反対もあるはずだけど、そういうことに立ち向かえないサラリーマンになっている。そんなに御身が大事ならなぜメディアの仕事をするんだよ。このままだとテレビやラジオもみんななくなってしまうよ?五臓六腑が沸き立つようなものを提供するという気概がないんだよ。観客も含めて、なんでこんな映画を作ったのかわからないという、不思議な連合体になっている。映画館がくだらない暇つぶしの場所になった。昔は映画に行くというと、血湧き肉躍る思いだったが、今はそれがない。肉を切らせて骨を断つそういうパワーがないんだよ!


「『性』を貶める者は『生』を貶める者」

―タブーに切り込んで、血湧き肉躍るような作品をこれから出すなら、活動の場はネットになりますか。

そうだね。やはりネットの世界だね。こういうことは、中国の方がよっぽどパワフルなんですよ。中国でも『全裸監督』がDVDで発売されて爆発的な人気だ。1週間もたたないうちに中国から取材が来た。今度、日本の素晴らしいエロチシズムの世界を集約して中国で配信することになっている。2億−3億人が見てくれると思う。日本は中国にはかなわないが、唯一リスペクトされているのは、へそ下三寸のところだ。彼らは日本から学んでいる。

日本に来る中国の観光客も、ホテルに入って、60インチの大スクリーンでとにかくAVを見ているらしい。私が1977年に28万円かけてグアムに渡り、大島渚先生の『愛のコリーダ』(無修正版)を見に行ったようなものだ。中国に対抗できるのは、もはやAVしかないよ!ほかに何がある?へそ下三寸で後れを取ったらもう生きる道はないよ。皆さんにとってのプライドなんですよ。だから私のことを、置き引きとか、万引きとか、ポン引きより少しましくらいに思っていたらいけないよ!

―そんなこと思っていませんよ!

とにかく、「性」を貶める者は「生」を貶める者だ。もう一度自分たちの「性と生」を直視して、嵐の中で小舟を漕いでいる自分を大切にしないといけない。でもどうしたらいいのか、その方法を見失ってしまった人たちに力を与えられるのは何かというと、上の方をジェット機で飛んでいく孫さんやクルーザーで走り抜けていく柳井さんではない。こっちは小さな板きれ1枚なんです。こういう私の存在を知れば、人生の生き方は違ってくる。三食抜いても『狂熱の日々』は見に来ないといけない。多難な時代を迎える時代を生き抜くパワーを充電してもらいたい。AVと小馬鹿にせずに見に来れば、何百億円もの価値を得られる。

―最後に、これからやってみたいことはありますか。

この先、何がやって来るか分からないが、アンテナを張ってそれにしがみついていく。5年、10年先なんて関係ない。今をたくましく生き抜く。今日を生き抜く中からふとしたヒントを得られる。俺は生きるためなら何でもできる。エロチシズムをやりたくて生きてきたんじゃない。二度と貧乏したくないという思いに駆られるように生きてきたんだ。中小企業のお父さんも、資金繰りの毎日かもしれないが、それでこそ中小企業の親父だ。お得意様の機嫌を伺いながら生きていくような芸は中小企業の親父にしかできない。親父は資金繰りしてりゃいいんだよ。これは俺の仕事だと、よく認識しないといけない。

資金繰りから解き放たれたいとか、税務署とのやりとりから解き放たれたいとか考えるんじゃなくって、自分にしかできない資金繰りに骨身を惜しまないことがプライドだ。新しい商品開発とかいってるけど、なにか錯覚してるんだよ。資金繰りをやってるときにこそ、後光が差すんだよ!私のような人間の役割は、みんなに元気や情熱を届けることだからね。だって俺みたいな奇人変人、詐欺師、ペテン師はほかにいないからね!

村西とおる(むらにし・とおる)
【略歴】1948 年9月9日生まれ、福島県いわき市出身。福島県立勿来工業高校卒業後、バーテン、英会話辞典のセールスマン、テレビゲームのリース業を経て、アダルト業界へ。北大神田書店グループを設立し「裏本の帝王」となった後、AV業界へ参入し数々の作品を制作。”顔面シャワー”、”駅弁”の産みの親であり、「AVの帝王」と 呼ばれている。人生で計7回の逮捕歴、米国で懲役370年の求刑、総額50億円の借金、心臓病による余命一週間宣告など、多くの苦難を経験。2019年には、村西氏の半生をモデルとした『全裸監督』のNETFLIX配信や、ドキュメンタリー映画『村西とおる 狂熱の日々』の上映などで、注目を浴びている。