江戸時代後期に実測に基づく正確な日本全図を完成させた伊能忠敬が九州測量の起点とした北九州市。そこに本社を置くゼンリンが地図の楽しさを伝える博物館「ゼンリンミュージアム」を建設した。16―20世紀に作られた西洋製・日本製の日本地図が、歴史とともに堪能できる。「国内では珍しい、地図を専門に扱うミュージアム」(佐藤渉館長)として、地図の魅力の発信に取り組む。

展示は3章構成。1章は「世界の中の日本」。キリスト教の布教に伴う西洋人の来訪で日本が地図上に正確に描かれる過程を示す。2章は「伊能図の出現と近代日本」。伊能による日本で初めて実測に基づいて描かれた日本全図に触れる。3章は「名所図会・観光案内図・鳥瞰(ちょうかん)図の世界」。江戸時代に使われた名所案内書などを展示する。

目玉は1章にあるポルトガルの地図製作者、イグナシオ・モレイラの日本図だ。同図はモレイラが2年の日本滞在期間中に鹿児島から京都までの西日本を測量し、それ以外の地域は各地の大名などから情報を集めて描いた世界初の実態に近い日本図。同図を基にした銅版画(クリストフォロス・ブランクス作)は世界で1点しか見つかっておらず、同社は現物を所蔵する。保存環境を考慮し、現物を再現したレプリカを常設展示している。

世界で1点しか見つかっていないポルトガルの地図製作者のモレイラが描いた日本図の銅版画(ブランクス作)

古地図は一見、素人には何が描かれているのか分かりにくい。そこで「Z(ズィー)キュレーター」と呼ばれる説明員を常駐させ、歴史的背景や製作者の思いを分かりやすく解説する。説明員は5人おり、ミュージアム設立にあたり全社員の中から公募で選ばれた。いずれも「知識はもちろん古地図へ熱い思いを抱いたメンバー」(佐藤館長)だ。ミュージアムは「地図製作会社として地図文化を後世に継承する場」(同)と位置付けている。

当初は4月19日の「地図の日」にオープン予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で、当面の間、開館を見合わせている。

【メモ】
▽開館時間=10―17時(最終入館16時半)▽休館日=月曜日(祝日の場合は翌平日)▽入館料=1000円(消費税込み、保護者同伴の小学生以下は無料)▽最寄り駅=JR鹿児島本線「西小倉駅」徒歩5分、同「小倉駅」徒歩10分▽住所=北九州市小倉北区室町1の1の1▽電話番号=093・592・9082